マイノリティ向けメディアも、キーワードブロックの餌食に:「いまは行動を起こすとき」

パブリッシャーやメディアネットワーク、ブランドセーフティ企業によると、業界にとって永続的な悩みの種であるキーワードブロッキングは、黒人やマイノリティをオーディエンスに持つパブリッシャーにかなり大きな打撃を与えているようだ。

間違ったキーワードブロッキングによって、米国のパブリッシャーは2019年に28億ドル(約3000億円)の損失を被った。メジャー報道機関の幹部たちは、膨れ上がったうえに全面的なキーワードブロックリストのせいで広告収入の10~30%を失っているという。だが、LGBTQ+向けサイト、ピンクニュース(PinkNews)では、ブランドにブロックされた安全な記事の数は、「同性」や「レズビアン」のような言葉が広く普及し存在感を示すようになった結果、73%に増加したことが、リアルタイムのブランドセーフティビジネスを提供するチェク(Cheq)の調査からわかっている。

「全面ブロックは手抜きだ」

マイノリティに焦点を絞ったパブリッシャーがこの状況を打破し、失った売上を取り戻し、ブランドへのリーチを広げる手助けをするために、キーワードブロッキングツールのマンティス(Mantis)を開発したリーチ(Reach)は、多様性にフォーカスするメディアネットワークのブランド・アドバンス(Brand Advance)と手を組むことにした。

「ブランドは、自社広告が表示される場所を選べるべきだが、全面的なブロックについて、ブランドが明確に支持を表明しているわけではない。それは単なる手抜きだ」と、ブランド・アドバンスの最高経営責任者(CEO)、クリストファー・ケンナ氏は話す。ブランド・アドバンスのネットワークを通した広告支出は、2020年3月半ば以降に400%増加していると、ケンナ氏は付け加えた。

2020年5月にミネソタ州ミネアポリスで黒人のジョージ・フロイド氏が警官に殺され、米国内だけでなく世界中で大規模な抗議行動が行われるようになってからの数週間に、広告主がブロックリストに掲載するキーワードを増やしたかどうか、ケンナ氏もリーチもはっきりと言及はできない。だが、微妙なニュアンスのレイヤーを追加したり、リストを精査したりすることなく、ブランド・アドバンス経由の支出が増加したことは、必然的により多くのコンテンツがブロックされる状態につながるだろう。

英国のあるニュースパブリッシャーは、ここ数週間でブロックリストのキーワードの増加はなかったとしつつ、「各ブランドはブロックリストを見直し、差別的でないかを検討する必要がある」と話す。「『ブラック』や『LGBTQ』『イスラム』などの言葉は、ブロックリストの対象となるべきものではないが、そうなっていることが多く、5年前からずっとリストに載っている。ポルノサイトでの広告表示を恐れて『レズビアン』のような言葉を気にするブランドは、おそらくは、社会のそうしたセクションを悪者扱いするより、リストをいま一度チェックすべきだろう」とこのパブリッシャーは指摘する。

厳しい状況の少数派メディア

新型コロナウイルスの感染が拡大し景気後退が差し迫ってくる前でさえ、マイノリティコミュニティ向けの小規模パブリッシャーはすでに厳しい状況に置かれ、ほとんどの広告支出の増加がFacebookやGoogleに向いていたエコシステムのなかでデジタル売上を生み出そうと苦闘している。米国では、「エボニィ(Ebony)」とその姉妹誌の「ジェット(Jet)」が、2019年4月に破産申請をして閉鎖した。「ゲイ・タイムズ(Gay Times)」は4度目のイテレーションを行っている。「ゲイ・スター・ニュース(Gay Star News)」は2019年7月、アイコニック・ラボ(Iconic Labs)に買収され、閉鎖を免れた。

新型コロナウイルスの流行以来、「アティテュード(Attitude)」、「ゲイ・タイムズ」、「ディーバ(Diva)」「ボイス(The Voice)」「エッセンス(Essence)」「モスリム・バイブ(The Muslim Vibe)」のような、かつては英国拠点の代表的ないくつかのタイトルのブランド・アドバンスのネットワークを通じてのマーケティングの成長は、ブランドや政府機関がターゲットとする最前線にいるエッセンシャルワーカー(社会生活を支えるうえで必要不可欠な労働者)によるものだ、とケンナ氏は語る。

「以前は間違った概念があり、人々は(マイノリティグループから)技術力の低い労働者を連想していたが、いまではバスの運転手や清掃作業員が重要な労働の担い手だ」と、ケンナ氏はいう。「ブランドはこうした集団に以前よりリーチするようになったか? 答えはイエスだ。すべてのブランドがこの集団を支援していて、ここにリーチしようとしているので、広告もいまや、これらの重要な労働者をターゲットにしている」。

ターゲットとその購買力の関係

そこには多額の金が存在している。世界的に見ると、LGBTQ+コミュニティには3兆7000億ドル(約396兆円)の消費力がある。英国の黒人消費者コミュニティの消費力は3000億ポンド(約39兆9000億円)だ。障がい者を少なくとも1人含む家庭の総消費力は、英国では年間2490億ポンド(約33兆1200億円)と試算されている。

一般的には、特定の集団をターゲットに支出される広告予算が、その集団の購買力と結びつくことは滅多にない。ブランドは若年層を狙いにするが、英国内の全消費支出の47%は50歳以上の人々によるものだ。だが、この層に向けた広告予算は全体のわずか4%しかない。

今後の疑問は、新型コロナウイルス流行の最悪の状態が終わったあとも、この多様性のあるコミュニティをターゲットにすることへの関心が高いまま維持されるかどうかだ。

リーチでマンティス担当ゼネラルマネージャーを務めるベン・フェロング氏は、「戦いになるだろう。ブランドやエージェンシーのメディア購入へのアプローチの仕方には高レベルの惰性が存在する」と言い、これはブランドの悪意ではなく、怠惰か無知によることが多いと付け加える。

実際の行動とのギャップ

にもかかわらず、ブランドやエージェンシーが実行すると言っていることと、実際の行動とのギャップは広がりつつある。だが、ブランド・アドバンスはエージェンシーを通じて各種ツールを紹介している――オムニコム・メディア・グループ(Omnicom Media Group)はブランド・アドバンス経由でマンティスを利用している――が、ブランドは説明責任を果たさなければならないという世論の高まりはある。

ケンナ氏は次のように語る。「ブランドは、ソーシャルに関して小さなブラックボックスを求めており、ナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)、ロレアル(L’Oréal)がトランスジェンダーのモデル、マンロー・バーグドルフ氏と和解したかどうかには関係なく、長期的にはこの姿勢を保つと彼らはいう。いまは口で言うだけでなく行動で証明するときだ。我々はあらゆるツールを用意しているが、(マイノリティコミュニティに向けて)支出を回さない言い訳として何が言えるだろうか? 我々はどんな瞬間も戦うことになるだろう」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)