「スキンフルエンサー」のスーパースターたちが台頭してきたことで、TikTokはいまやYouTubeを押しのけ、Z世代の美容情報の重要なソースになっている。スキンケアインフルエンサーたちは、熱心なフォロワーを獲得し、ブランドの売上を左右する力を手にしているという。
「スキンフルエンサー(skinfluencers:スキンケアとインフルエンサーを足した造語)」のスーパースターたちが台頭してきたことで、TikTokはいまやYouTubeを押しのけ、Z世代の美容情報の重要なソースになっている。
皮膚科医、エステティシャン、スキンケア愛好家が渾然一体となったTikTokのスキンケアインフルエンサーたちは、熱心なフォロワーを獲得し、ブランドの売上を左右する力を手にしている。TikTokのハッシュタグ「#skincare」の再生回数は109億回にのぼり、ティーンエージャーの悩みの種である「#acne(ニキビ)」は22億回も視聴された。
ハワイ在住のスキンケアインフルエンサーであるハイラム・ヤーブロウ氏は、5カ月足らずのあいだに500万人のフォロワーを獲得し、TikTokスキンフルエンサーの、事実上の支配者にのし上がった。同氏はとりわけ、ファンやほかのTikTokインフルエンサーのスキンケア方法をレビューする「デュエット」スタイルの動画で知られ、ディクシー・ダメリオ氏の毛穴クリーナーを使ったスキンケア方法など、一部の配信は容赦なく批判する。スキンケアブランドのTikTok動画に対するコメントでは、製品にヤーブロウ氏のお墨付きがあるかどうかを知りたいユーザーが、しばしば同氏の名前をタグ付けする。ハッシュタグ「#skincarebyhyram」は、ヤーブロウ氏にデュエット動画を作ってほしい人々が、自己流の方法を投稿するときに使われており、TikTok上で9億3000万回以上も再生された。
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ブランドにとって大幅な売上増
「自分の動画を、エンターテインメントと情報をミックスした有益なものにしたい」と、ヤーブロウ氏はいう。同氏がTikTokに投稿しはじめたのは今年の3月だが、それ以前から、ヤーブロウ氏のYouTubeチャンネルには約100万人が登録していた。現在のチャンネル登録者数は288万人で、ここでもほかのTikTokインフルエンサーのスキンケア方法をレビューする動画を投稿しているが、同氏のTikTokフォロワー数は、すでにYouTubeを大きく上回っている。「TikTokはとても短く、一瞬だ。TikTokでは、私の個性のなかのユーモアにあふれた楽しい部分を見せることができ、それが自分にとって重要だと感じている」。
ヤーブロウ氏の推薦は、ブランドにとって大幅な売上増を意味する。ピースアウト・スキンケア(Peace Out Skincare)の毛穴パックの売上は、ヤーブロウ氏がインフルエンサーのカエリン・ホワイト氏との有名なデュエット動画で製品を使ったあと、24時間で4倍に増加した。ヤーブロウ氏のお気に入りのブランドであるセラヴィ(CeraVe)は、同氏が度々ブランドを絶賛したことで、正式にヤーブロウ氏と仕事をするようになった。
「信頼のおける情報発信によって、ヤーブロウ氏は非常に強力なフォロワー層を築いた。彼は本物のスキンケア専門家で、スキンケアの知識をファンやフォロワーと共有することに時間を割いている」と、セラヴィでマーケティング担当バイスプレジデントを務めるデリック・ブッカー氏は語る。
しかし、どんなブランドでもヤーブロウ氏と一緒に仕事ができるわけではない。ヤーブロウ氏は1日に30~50件のブランドからの依頼をさばいているという。同氏はとりわけ、高級ブランドとの仕事には慎重で、価格の高さに反発の声をあげている。
「私の目的はスキンケアの基本を教えることで、消費者にスキンケア製品を少しでも賢く選べるようになって欲しいと思っている。世の中には間違った情報があふれていて、しかも業界は、できるだけたくさんのスキンケア商品を買ってもらうため、それらに目をつぶっている」と、ヤーブロウ氏はいう。

ヤーブロウ氏の実際の投稿
嫌いなものも発信する
TikTokのスキンケアインフルエンサーはたいていZ世代やミレニアル世代で、自分に合ったものを勧め、遠慮なく製品の批評をすることでフォロワーを増やしてきた。ニキ・ロマノ氏のTikTokアカウント @winningskinは、同氏が効果があると思う製品とそうでない製品に関する率直な意見を発信することで、3万5000人のフォロワーを集めた。ロマノ氏は5月10日に投稿しはじめたばかりだが、フォロワーを指数関数的に伸ばすカギは、きっかけになるたったひとつの動画をバイラルさせることだと話す。
「私がコストコで買うものと買わないもの」と題する同氏の動画は110万回再生された。セラヴィ(CeraVe)とボウシャ(Boscia)はイエス、ニュートロジーナ(Neutrogena)はノーだという(いずれもスキンケアブランド)。
「スキンケアの世界だけでなく、一般に世間の人は容赦ない」と、ロマノ氏はTikTokで発言した。「人々は文字通り好きなことをいい、何でも欲しいものについて動画をつくる。人々はあなたが好きなものだけでなく、嫌いなものも知りたがる」。
たとえば、Viという名前のインフルエンサーは、自身のアカウント @whatsonvisfaceで、不要だと思う製品を皮肉とウィットに富んだ口調で批判する動画を投稿し、約30万人のフォロワーを獲得した。ヒスイでできたフェイスローラーについての同氏の意見はこうだ。「正直いって、楽しいのは自分がハイになっていて、(ローラーを)冷蔵しておいたときだけ。そうでないなら、やたらと時間がかかるし、こんな面倒には耐えられない」。また、先日事業終了が発表された音波洗顔器のクラリソニック(Clarisonic)については、代わりに「指を使えばいい」と述べ、敏感肌の人は使わないようアドバイスしている。

Viの実際の投稿
「インスタグラムは合わなかった」
TikTokでは、スキンケアインフルエンサーの成長が著しい。ヤング・ユー氏のアカウント @yayayayoungは、3月上旬の開始以降、69万8000人以上のフォロワーを獲得した。以前はインスタグラム(Instagram)でアクティブに活動していたが「本物の影響力を持つには至らなかった」と、同氏はいう。
「インスタグラムはとてもフォトジェニックだ。高級で洗練され上品だが、私には合わなかった」と、ユー氏はいう。TikTokでもっとも人気のある同氏の動画のひとつは、フェイスマスク代わりに顔にシラチャーソースを塗るジョーク動画で、「まったく誰にもおすすめできない」と述べている。
「私は、ほかの人が嫌がるようなことも積極的にやるつもりだ。レチノイドを1日2回、1週間連続で顔に塗りつづけて、顔がどうなるかを確かめてもかまわない」と、ユー氏はいう。ほかに人気のある同氏の投稿としては、Kビューティー(韓国コスメ)を使った10段階ルーティンを説明したものなどがある。

ユー氏の実際の投稿
スキンケアのプロも参入
一方、スキンケアのプロたちもTikTokに参入し、自称専門家たちがシェアする根拠の薄い情報に対抗しようとしている。皮膚科医のダスティン・ポルテラ氏は、約50万人のTikTokフォロワー向けに動画をつくり、医師ではない人々による製品の謳い文句の化けの皮をはいでいる。たとえば最近の動画では、「日焼け止めは癌の原因になる。損傷を受けた細胞が光の刺激によって自殺するのが妨げられ、これが癌に変わるのだ」という、あるユーザーの主張に反論している。同時にポーテラ氏は、TikTokのプロフィール欄に、このアカウントの主張は「医学的助言ではない」と周到に書き添えている。
ヤーブロウ氏も、自身のアドバイスを医学的なものとは考えないでほしいと訴えた。同氏によれば、ユーザーはヤーブロウ氏のコンテンツを「親友と行く買い物」のようにみなしているという。
「私はエステティシャンや、皮膚科医の資格をもっているわけではない。この点は動画でもはっきり述べている。また、私はエステティシャンや皮膚科医として助言しているわけではないし、自分は彼らより知識があるというつもりもない」。
[原文:TikTok’s skinfluencers emerge as Gen Z’s go-to source]
LIZ FLORA(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:Kan Murakami)