米国における TikTok の国内利用禁止騒動にもかかわらず、人気インフルエンサーのアディソン・レイ・イースターリング氏は、新しい美容ブランド、アイテムビューティー(Item Beauty)をローンチした。このようなTikTokインフルエンサーブランドは現在、急速に増えている。
米国におけるTikTokの国内利用禁止騒動にもかかわらず、人気インフルエンサーのアディソン・レイ・イースターリング氏は、新しい美容ブランド、アイテムビューティー(Item Beauty)をローンチした。このようなTikTokインフルエンサーブランドは現在、急速に増えている。
同ブランドのローンチは、ビューティー系のサブスクリプションサービス、イプシー(Ipsy)の姉妹会社である投資会社、メイドバイコレクティブ(Madeby Collective)が協力している。アイテムビューティーはZ世代をターゲットとしており、7月末にイースターリング氏が自身のSNSアカウントで告知をした後、8月3日に正式ローンチされた。同ブランドはまず、6種類の化粧品を発売。8月11日から自社D2Cサイトでの独占販売を実施し、9月からはイプシーのサブスクリプションプログラム、グラムバッグ(Glam Bag)でも特集される予定だ。
イースターリング氏は、ブランドの顔としての役割を担うだけでなく、共同創業者および最高イノベーション責任者にも就任している。立ち上げに協力していたメイドバイコレクティブは、「ニーズが満たされていないコミュニティのためのブランド開発」をコンセプトとしている。同社のゼネラルマネージャー兼シニアバイスプレジデントのジェニファー・ゴッセリン氏は「イースターリング氏は当社のコンセプトに深いレベルで共鳴している」と語った。メイドバイコレクティブが立ち上げに協力したブランドは、2019年11月のビーガン向けメイクブラシブランド、コンプレックス・カルチャー・ビューティー(Complex Culture Beauty)に続いてこれで2つ目。両ブランドの研究開発には、イプシーが2500万人のコミュニティメンバーから得たデータが活用されているという。
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前例がない成長ぶり
イースターリング氏をはじめ、モーフ2(Morphe 2)を立ち上げたダメリオ姉妹のように、TikTokのビューティー系インフルエンサーは、ビューティー系YouTuberよりも、ブランドの立ち上げをはやくから実施するケースが多い。たとえば、2013年から動画を投稿してきたパトリック・スター氏は、先月ブランドの立ち上げを行ったのに対し、同じく先月ブランドをローンチしたジャッキー・アイナ氏は2009年からYouTubeで活動している。また、カリスマ美容YouTuberとして知られるフーダ・カタン氏をはじめ、美容ブランドを立ち上げるインフルエンサーは、それまで何年間も動画の投稿を行ってきた。
インフルエンサーマーケティングプラットフォーム、インフルエンシャル(Influential)でCEOを務めるライアン・ディーター氏は「昨今見られるインフルエンサーの成長ぶりは、前例がないほどだ」と語る。「バズれば数週間で一気に1000万人、2000万人のフォロワーを獲得することすらある」。
ゴッセリン氏によれば、インフルエンサーの美容ブランドのローンチが続く一因は、「美容カテゴリ自体が伸びている」ためだという。「美容業界はここ5年から7年のあいだに急激に伸びた。これは各ブランドのローンチと時期を同じくしている。さらに、これまでより若い層が美容やスキンケア商品を利用するようになっている」。
イースターリング氏が自身のTikTokアカウント、@addisonreを開いたのは2019年7月。いまやフォロワーは5400万人を超え、一時はTikTokで2番目に大きなアカウントになるまでに成長した。同氏はわずか数ヵ月で、セレブ並みの知名度を一気に獲得したのだ。イースターリング氏は最近、230万人のフォロワーを持つ新たな友人、コートニー・カーダシアン氏とともに何本か動画をアップロードし、同氏のTikTokでの成功を後押ししている。
なお、アイテムビューティーの立ち上げに関わった、メイドバイコレクティブCEOのゴッセリン氏は、TikTokの米国における利用禁止騒動について「それほど心配していない」と述べている。「イースターリング氏は、もちろんTikTokで大きな影響力を有しているが、インスタグラムでも多数のフォロワーを抱えている。彼女はTikTokだけに収まる存在ではない」。イースターリング氏のフォロワー数は、TikTokに次いでインスタグラムが多く、2480万人となっている。マイクロソフトによるTikTok買収の可能性について、ゴッセリン氏は「もしマイクロソフトがTikTokを買収したら、彼らはユーザーにとってさらに楽しい体験を増幅させ、その道を突き進むだろう」と語る。
Z世代が求めているのは「自己表現」
TikTokにおけるアイテムビューティーのマーケティングは、有料広告ではなくイースターリング氏のアカウントで、オーガニックなエンゲージメントを獲得することを主戦略としている。TikTokにおけるコマースは、将来的に大きなポテンシャルを秘めているというのがゴッセリン氏の考えだ。「将来に向け、TikTokでさまざまな収益化の方法を検討している。TikTokサイドも同様のことを考えているだろう」。
さらに同ブランドは、名前は明かさなかったものの、リテールパートナーとの話し合いも進めているという。D2Cブランドを運営することは、データ収集の側面で意義があるとゴッセリン氏は指摘する。「製品や地域ごとの相対的な傾向を深く理解し、より強固な小売販売システムを構築できる」。
アイテムビューティは、植物性のみのクリーンでナチュラル、かつ皮膚科医のテストを通過した成分を使っており、自己受容(self-acceptance)のメッセージなども打ち出している。これは、サブスクリプションサービス、イプシーのデータを通じて、Z世代にアピールする要素を追求した結果だという。たとえば、同ブランドのマスカラ、「ラッシュスナック」は「まつげにおやつをあげよう(Hangry lashes? We’ve got a snack for that)」をキャッチフレーズとしている。これもZ世代を意識した言葉だ。
ゴッセリン氏は19歳のイースターリング氏が持つ「飾らないルックス、そして生まれ持ったものを変えようとするのではなく、より良く活かそうとする姿勢がZ世代のオーディエンスにウケている。彼女は、Z世代が持つこうした価値観を体現するような存在だ」と語る。
Z世代が求めているのは「結局のところ自己表現なのだ」と、ゴッセリン氏は分析する。「この世代はさまざまな美の基準を試そうとする。そして自己受容のための基準を求めている」。
[原文:TikTok star Addison Rae’s Item Beauty joins Gen-Z influencer brand wave]
LIZ FLORA(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)