TikTokといえば、かつてはインフルエンサー専用も同然だったが、いま、向上を続けるそのライブストリーミング機能にビューティブランド勢が次々と注目している。TikTokによれば、E.l.fとトゥー・フェイスド(Too Faced)などは、すでにライブストリーミング機能の利用をはじめている。
TikTokといえば、かつてはインフルエンサー専用も同然だったが、いま、向上を続けるそのライブストリーミング機能にビューティブランド勢が次々と注目している。
TikTokによれば、E.l.fとトゥー・フェイスド(Too Faced)、ミルク・メイクアップ(Milk Makeup)はすでにライブストリーミング機能の利用をはじめている。同機能はTikTokに当初から備わっていたが、今回の新型コロナ禍中に注目度が一気に高まった。
TikTokライブの使われ方
ビューティブランドの利用法は、ユーザーとのQ&Aセッションや新製品の販促、チュートリアル動画の公開が主となっている。TikTokマーケティングにとりわけ積極的なビューティブランド、E.l.f.は2種のライブ配信を行ない、いずれでも「E.l.f.チャレンジ」を合い言葉に、インフルエンサーがあえて難しい条件下でメイク術を教える、ユーモラスな動画を投稿している。
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たとえば、人気インフルエンサー、トリニティ・モリセット氏は調理用のオーブンミットをはめ、スプーンを使ってメイクを披露した。5月29日にアップされたばかりの動画では、同じく人気インフルエンサーのヤニナ・オヤーゾ氏が両手をビニールで包んだ状態でメイク姿を見せた。E.l.f.の広報によれば、同社は今後、さらにTikTokライブストリーミングを活用していくという。
コロナ禍による店舗の一時閉鎖以来、ライブストリーミングはインスタグラムで人気を急速に高めているが 、TikTokでの利用は、まださほど広まっていない。そこで、TikTokは今回のパンデミック発生直後から、自社アプリ上にライブストリーミング機能の宣伝をアップするとともに、セレブやインフルエンサーを擁するコンテンツを週ベースで公開してきた。
ビューティブランド以外でも、最近では米衛星/ケーブルチャンネルのディスカヴァリー(Discovery)、米通信大手ベライゾン(Verizon)、アメリカンフットボールリーグNFLなどがTikTokを利用している。これらブランドはTikTokとオフィシャルパートナーシップを結び、同アプリのトレンド(英語圏だと「Discover」)ページのバナーで自社のライブストリームを宣伝した。
ただ、ジョージ・フロイド氏の件に端を発する抗議運動の勃発以来、ブランドによるTikTokの利用数は大幅に減少している。そんななか、TikTokは俳優のアサンテ・ブラック氏、イーサン・ヘリース氏、リード・シャノン氏が立ち上げた組織スピーク・アップ(Speak Up)が配信するライブストリームとパートナーシップを結ぶなど、反人種差別の動きにも積極的な姿勢を見せている。
成功の鍵はインフルエンサー
ライブ配信するブランドに対しては、コンテンツパートナーシップチームから指導や助言を提供していると、TikTokの広報は語る。では、成功の鍵を握るのは?――答えは、インフルエンサーだ。
「TikTokを利用するクリエイターの多くは、インスタグラムを使わないか、使うとしても頻度は低い。つまり、彼らはTikTokを通じてオーディエンスにリーチしたいと考えている。TikTokでは一般に、ファンはクリエイターと親密な関係を築く」と、E.l.f.の広報は語る。
TikTokライブストリームの視聴数を支えているのは、お気に入りのインフルエンサーに入れ込むファンの情熱だと、ショート動画専門エージェンシー、アップラブ(Uplab)の創設者/グロース部門ディレクター、ファビアン・オーウェンハンド氏は指摘する。氏によれば、熱烈なファンは好きなインフルエンサーが配信する長尺ライブストリームならば、24時間連続でも喜んでアクセスを続けるという。実際、アップラブがアムステルダムで営む「TikTokハウス」に属する、ジップ・ザラ氏(フォロワー数15万弱)をはじめとするインフルエンサーらの配信において、そうした現象が見られたという。この「ハウス」では現在、所属インフルエンサーが日々ライブ配信を行なっていると、氏は語る。
TikTokライブストリ-ミングの使用は現在、フォロワー数の一定基準を満たしたユーザーに限られている。TikTokはその人数を明らかにしなかったが、オーウェンハンド氏によれば、1000~5000人のあいだで上下しているという。
ライブではコマースに焦点を
「ますます多くのユーザーがさまざまな目的で(TikTokのライブストリームを)利用するようになっている。ただ、機能性についてはまだ発展途上だ」と、オーウェンハンド氏は指摘する。実際、中国版TikTokのドウイン(Douyin:抖音)では、ショッピングリンクがライブストリーミングに直接埋め込まれている。一方、TikTokにはいまのところ、ライブストリーマーに贈るバーチャルな「ギフト」を買う機能しかないが、裏を返せば、これはTikTokが今後eコマースのオプションを増やしていく可能性を示唆している、と見ることもできる。
いずれにせよ、アプリ内で商品を直接購入できなくとも、ブランド勢はTikTokライブストリーミングにおいて「コマースにフォーカスする」べきだと、オーウェンハンド氏は断言する。事実、インフルエンサーはビルトインショッピング機能がないにもかかわらず、オンライン購入できるプラットフォーム上ではなく、あえてライブストリーミングを利用して商品の販売をはじめている。
「ライブストリーミングはコンバージョンの大きな鍵を握っている。事実、我々もいくつか新商品の発売に際し、ライブストリームを使わずにプロモーションをかけたことがあるが、効果はきわめて低く、ライブストリームを使った場合には遠く及ばなかった」と、氏は語る。
LIZ FLORA(原文 / 訳:SI Japan)