2021年の初頭、スタートアップの炭酸飲料ブランドであるポッピー(Poppi)は、同社にとって最初のTikTok上のバイラルを経験していた。オーガニックに投稿された動画の1本が、2600万以上の再生回数を生み出し、同社の売上を伸ばしたのだ。1年後、ポッピーはTikTokへの取り組みをさらに強化している。
2021年の初頭、スタートアップの炭酸飲料ブランドであるポッピー(Poppi)は、同社にとって最初のTikTok上のバイラルを経験していた。オーガニックに投稿されたTikTok動画の1本が、2600万以上の再生回数を生み出し、同社の売上を伸ばしたのだ。
テキサスに拠点を置く同社だが当時、TikTokはマーケティング戦略の一部ですらなかった。しかし、このバイラルが生まれて1年後、ポッピーはTikTokへの取り組みをさらに強化している。予算を確保し、TikTokのインフルエンサーたちと協力して、持続可能な広告およびマーケティングチャネルとしている。
同社の共同ファウンダーで最高ブランド責任者のアリソン・エルスワース氏は、「我々は(TikTokで)成功する秘訣を探っているが、今のところ非常に上手くいっている」と述べ、同社のSMS(ショートメッセージ)とeメール登録のほとんどがTikTok経由であることを指摘した。これらのメッセージ・eメール登録は、マーケティング連絡やセールスのお知らせを受け取るためのものであり、エルスワース氏によると、同社は1日に推定1000件のeメールとSMSの登録を記録しており、TikTokでの人気と「発見力」が高まっていることもあって、登録者数は20万人以上へと成長しているという。
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ポッピーのチームにはコミュニティマネージャーがおり、インスタグラム上のソーシャルコピーやTikTokの社内制作を監督し、1日に数回程度ブランドアカウントに投稿している。インフルエンサーたちとのコラボレーションに加えて、エルスワース氏自身も、同社のドリンクが腸の健康を改善することに関する解説ビデオや、各フレーバーの味に関する説明ビデオを投稿。ほかにも「ジャーク(Jerk)」ダンスのように、同アプリのトレンドに由来する動画を投稿することもある。
主要なブランド認知チャネルに
エルスワース氏によるとTikTokは、同社にとって主要なブランド認知チャネルとなっている。
パンデミックの始まった頃に創業された同社の最初のバイラルビデオは、エルスワース氏がポッピーの成り立ちを語るという内容だった。この動画がバイラルになる前は、TikTokにはメディア予算を割いておらず、オーガニックな投稿だけをするという選択をしていた。現在も1日に何度もオーガニックに投稿し、15万人以上のフォロワーにコンテンツを提供している。しかし現在、マーケティング予算のうち推定20%が同アプリに費やされている。そのTikTokにおけるマーケティング活動の大半は、同アプリでのフォロワー数が3200万人を超えるノア・ベックや、フォロワー数が2100万人を超えるブライス・ホールなどのインフルエンサーたちとのコラボレーションであると、エルスワース氏は語った。
ポッピーの広告予算の残りは、Amazon、プログラマティック広告、YouTube、インスタグラム広告に分けられる。エルスワース氏によると、年内にはストリーミング動画広告も追加される予定だという。
「以前はTikTokのための極秘計画(的な)予算があり、テストして様子を見ていた」と彼女は言った。「そして広告費の大部分はインスタグラムだった。今ではそれが反転した」。現在、同社の広告費のうちYouTubeとインスタグラムに使われているのは推定30%にも満たない。エルスワース氏によると、Facebook広告はもはや定期的には使用していないという。
万能の解決策となるわけではない
とは言ってもTikTokがマーケティングにおける万能の解決策となるということではない。実際、広告主たちは長いあいだ、バイラルになることは戦略ではないと言ってきた。エルスワース氏自身も、TikTokに依存しすぎることに懐疑的で、同アプリを活用しようとする広告主が増えるにつれ、この現象がいつまで続くのか疑問視している。
エージェンシーであるダガー(Dagger)の主任コンテンツ・ストラテジストである、リア・ステーンバーグ氏は、TikTokが文化の推進者になったことで、より多くの広告主が、同アプリが抱える、急増する若いオーディエンスの目に留まるために、この分野に飛び込んでいるのは事実だという。しかし、「ひとつの波に永遠に乗ることはできない」とステーンバーグ氏は言う。
「多くのブランドにとって、TikTokを利用することは文化的な関連性をキープするために必要である一方、ブランドのオーディエンス全体にリーチするには足りないだろう」と彼女は言った。「長期的な関連性を維持するためには、ブランドは多様化し、ソーシャルメディア戦略で成功しているひとつのコンテンツやひとつのプラットフォームを超えて成長する必要がある」。
「全方向からのマーケティングを」
エルスワース氏は、コンバージョン、eメール、SMSの登録が一貫して継続している限り、TikTokの波に乗り、マーケティング予算の上限を新しく設定する計画はないと語った。
「TikTokは小規模ブランドのあり方を変えている。全力で取り組み、継続する。これが(小規模ビジネスにとっての)未来であることは、約束できる」とエルスワースは言う。「しかし、それに囚われてしまってはいけない。同時に全方向からのマーケティングをしなければならない。すべてが連動して機能するのだから」。
KIMEKO MCCOY(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU