「いまは売りたいときではない」:マスターカードのCMO、危機における広告のあり方を語る

多くの広告主がそうしているように、マスターカード(Mastercard)も、金額こそ明かさないものの、広告支出を削減している。だが、マスターカードの最高マーケティング責任者(CMO)で最高コミュニケーション責任者でもあるラジャ・ラジャマナー氏は、これはコストカットというより、現在の感覚に合わせた一時的な動きと見ている。

「我々がまず行ったことは、哲学的な視点から(我々の広告を)見直しはじめることだった。ものを売りたいときがある。だが、いまはものを売りたいときではない。奉仕するときだ」と、ラジャマナー氏はこう語る。「消費者は企業が無神経に広告を出し続けることを望んではいない。恐怖や不安に満ちた危機を経験している。商品を売ろうとするために広告を出すべきはない。人々のために問題、弱点を解決しようとしているのであれば、実行しよう。問題解決をしようとしないのであれば、コミュニティのために何かしよう」。

ラジャマナー氏は、マスターカードがいかにして言葉を行動に移すか、そしていつになれば広告への支出を戻すつもりかについて、DIGIDAYに語ってくれた。読みやすさを考慮して、インタビュー内容には若干の編集を加えてある。

──いま、広告はどんな役割を果たしているか?

我々には、いま人々を助けることができる一連の製品があり、コミュニケーションやマーケティングキャンペーンの軸足をそちらに移しはじめている。たとえば、(米国とは異なり)オンラインショッピングを信用していない国々がある。そこで我々は、オンラインで安全に買い物をし、弱点を解決する方法を人々に教えるキャンペーンを実施している。(コミュニティを支援するために)我々は医療関係者のために何かすると約束した。その例のひとつとして、我々は欧州でウーバーイーツ(UberEats)とともにキャンペーンを展開し、医療関係者のために14万食を提供してきた。そういうことに我々は取り組んでいる。

──マスターカードのマーケティングの多くは「体験」を中心にしたものだが、どのように適応しているのか?

我々の核心は「プライスレス」なもの、そして「プライスレス」なものを人生に持ち込んで一生に一度の体験をもたらすことだ。これらの体験の大部分は直接的なものだった。(この状況下で)我々はデジタルに移行しており、自宅での暮らしがどうなるかを我々は想像し直さなければならなかった。いまは、自宅にいながら有名シェフの料理レッスンを受けたり、有名なアスリートとビデオチャットしたりできる。我々は速やかに軸足を移し、適切な行動をとらなければならなかった。

──広告支出を減らしているのか?

我々は企業として、支出をしっかりと管理しているつもりだ。そこにはマーケティングや広告の支出も含まれている。我々は(広告費を)いくら減らしたかを公に共有することはしないが、確かに、支出を絞っている。 同時に、状況が見えなくなっていないことも確認している。世界的に、メッセージや戦略、戦術が変化している。そうした変化には金が必要だ。我々はマーケティングの予算を持っているが、しかし広告に関しては、いまはある程度控えている。

──控えているのはどのような部分で?

大きく変わったのはスポンサーシップだ。(ライブイベントやスポーツが)中止されているので、費用が発生するスポンサーシップの機会は失われた。我々は2013年、マスターカードのマーケティングアプローチの軸足を体験を主としたものに変え、(予算の)多くを伝統的な広告から体験的なマーケティングへと大々的に移行した。そのシフトの一環として、我々はかなり大がかりなスポンサーシップを開始した。イベントが中止されたいま、使われなくなった資金が我々の手元に残る。しかし、eスポーツのようにまだ続いているイベントはある。先週末にはリーグ・オブ・レジェンズ(League of Legends)の生放送があった(そして我々はまだそのスポンサーをしている)。

──資金の行き先は?

現状に敏感に反応でき、より適切かつ関連性のある方法に常に見える機会に目を向けている。我々は、「プライスレス」を理由に掲げたことをたくさんしてきた。我々は、デジタル体験だけでなく、小規模ビジネスのコミュニティを支援し、そうしたビジネスで買い物をするよう促している。

──広告支出が戻るのはいつになると思うか?

経済活動が再開されるとき、沈黙のブランドではいられない。それぞれの地域で何が起こっているかを見る必要があり、マーケットが開かれはじめる瞬間、マーケターはすぐに、マーケティング予算を再び使いはじめるだろう。マーケティングの支出はおそらく、第3四半期には戻りはじめるだろう。しかしどのくらいのスピードか、あるいはいくらくらい戻って来るかは、我々がどの程度まで新型コロナウイルスと景気後退を押さえ込むことができるかによる。

──新型コロナウイルスや経済についての悪いニュースをブロックリストに載せたか?

その種のものは(文脈の問題はあるが)何もブロックしていない。ウーバーイーツプログラムのように医療関係者の利益のために何かをしている場合、我々は何かを売るための広告は出さない。だが、もし読者が新型コロナウイルス関連の何かを見ていて、そのニュースとともにマスターカードがウーバーイーツとともに欧州で医療関係者のために行っていることの広告が表示されるなら、それは読者らが見ているものと必ずしも矛盾しない。新型コロナウイルスに関連して起きていることが良くないことであるのは明白だが、テロリズムやポルノ(への言及)と同じくくりで処理されるべきではない。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)