メレディスとキャンベルは数年前から広告で提携しているが、今回の提携では新たなテクノロジーを開発した。特定のページにアクセスしたユーザーの意図に関するメレディスのコンテキストデータの分類データベースを使用するためだ。そのため、今回のキャンペーンでは、大まかな場所以外の個人データが必要になることはなかった。
新型コロナウイルスの危機が広がり始めた3月に、トイレットペーパーや衛生用品の買いだめが起こったことは誰もが覚えているだろう。だが、この時期、食料品の買い物や消費における人々の習慣にも変化が起こっていた。
レストランが閉鎖され、ほとんどの食事を自宅で作らざるを得ないことに気づいた人々が、食料品を求めて店舗に殺到したのだ。また、eコマースでも食料品の人気がこれまで想像できなかったほど高まった。
この変化に気づいたのが、キャンベル・スープ・カンパニー(Campbell Soup Company)だ。同社でグローバルメディアおよびマーケティングサービス担当バイスプレジデントを務めるマルシー・ライブル氏は、10月末開催された全米広告主協会(ANA)の年次会合「ANAマスターズ・オブ・マーケティング・カンファレンス(ANA Masters of Marketing Conference)」でメディア大手メレディス・コーポレーション(Meredith Corp.)のイノベーション担当シニアバイスプレジデント、コルビン・デ・ルベルティス氏と対談した際、自身のチームにキャンベルのマーケティング戦略を再考するよう求めたと述べている。
Advertisement
「購買行動は劇的に変わった。3月にはたくさんの人々が食料品を買いだめしていたが、4月から5月になると人々に疲れが出てきた」と、ライブル氏はいう。
「万能な戦略など存在しない」
こうした変化をくまなく追跡した結果、同氏のチームは、広告で実用的な情報や問題の解消に役立つ情報を提供するだけでなく、安らぎを与える必要もあることに気づいたという。もっとも、食料品の買い物を増やせる余裕がある人もいれば、食べ物に関する話題をできる限り避けようとする人もいるなど、米国の消費者が抱えている問題はさまざまだった。
また、地域や天候よって人々が求める食料品の種類にも違いがあり、安らぎを感じられる食べ物よりも健康的な食べ物を求める人たちもいた。
「これは人間にとって厄介な状況だ。考えられるすべての変数やシグナルの組み合わせをアナリストが弾き出すことはほぼ不可能だからだ」と、メレディスのルベルティス氏は話す。そこで同氏のチームは、人工知能(AI)ときわめてコンテキスト性の高いデータを利用したソリューションを開発し、キャンベルのブランドをフィーチャーしたディスプレイ広告が絶えず最適化されるようにした。
「万能な戦略など存在しない」と、キャンベルのライブル氏はいう。同社は、メレディスのようなメディアパートナーからさまざまなレシピや食べ物の好みに関する人々のコンテクスチュアルデータを入手することで、広告キャンペーンの適合性を維持することができた。
メレディスとキャンベルの新戦略
メレディスとキャンベルは数年前から広告で提携しているが、今回の提携では新たなテクノロジーを開発した。特定のページにアクセスしたユーザーの意図に関するメレディスのコンテキストデータの分類データベースを使用するためだ。そのため、今回のキャンペーンでは、大まかな場所以外の個人データが必要になることはなかった。
「パンデミックが始まると、広告主は少しでも購入客に近づく方法や、彼らのファーストパーティデータを集める方法を模索するようになった」と、アーノルド+ハバス・メディア・ボストン(Arnold + Havas Media Boston)で最高戦略責任者を務めるブレ・ロゼッティ氏はいう。「こうした取り組みは以前から重要だが、人々が新たな習慣を作り出したり、新しいブランドを試したりしているときには、その重要性がますます高くなる。自前の販売チャネルを持っている小売業者は、顧客体験、インベントリー(在庫)、価格戦略を管理するうえで有利な立場にある」と、ロゼッティ氏は語った。
今回の提携によって生まれたクリエイティブは、300×250ピクセルのシンプルなデジタルディスプレイ広告で、特定の地域の人々に人気があるレシピを表示するものと、調理に適したキャンベル製品をカルーセル形式で表示するものの2種類が用意された。また、後者にはeコマース機能も組み込まれていた。メレディスは自社のブランドポートフォリオ全体で、これらの広告を5月から3カ月にわたって掲載した。
「消費者がほかのブランドやもっとお買い得な商品を検討しようとする前に、あるいはふだん支持しているブランドの商品を検討対象から外そうとする前に、自社の商品をカートに入れてもらわなければならない。そのためにAIを活用することは、成長しているカテゴリでシェアを奪い取る手法として実に興味深い」と、エージェンシーのエッセンス(Essence)でメディアプランニング担当シニアバイスプレジデントを務めるアマリ・ポコック氏はいう。
CTRが全体的に基準値の4倍に
今回の広告は、あらゆる行動変数をAIで追跡した結果に基づいて、絶えず新しいレシピや製品に更新され、全体としてメレディスのディスプレイ広告の基準値より4倍高いCTR(クリックスルーレート)を達成した。5月の一時期には、CTRが基準値の17.2倍に達したこともあるという。
メレディスのルベルティス氏によれば、インプレッションの大半は都市部のオーディエンスからもたらされたが、郊外ではeコマース広告のCTRが都市部のほぼ3倍だった。これはおそらく、郊外のほうが料理をテイクアウトしたり注文したりする傾向が高いことが理由だと、ルベルティス氏は推測している。
キャンベルのライブル氏によれば、同社は数カ月前からマーケティングへの投資を続けているが、ほかの多くのブランドは、新型コロナウイルスによる景気後退で不透明感が続いていることを理由に、キャンペーンの停止や中断に踏み切った可能性があるという。メディアとの提携は、今もキャンベルにとってマーケティング戦略の重要な一部を成しているのだ。
「我々が(最近)行った取り組みに、過去の取り組みと大きく違う点はないと思っている。ただし、今回は消費者がいる場所にリーチするために、テクノロジーとデータを利用して動的にプログラムを構築するという(これまでとは異なる)方法を採用した」と、キャンベルのライブル氏は語った。
KAYLEIGH BARBER(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:長田真)