8月第3週、米DIGIDAYの姉妹メディア、「グロッシー(Glossy)」は、ニューヨークでインフルエンサーマーケティングのイベントを開催した。このイベントにはインフルエンサー、ファッションおよび美容業界の役員、エージェンシーがパネリストとして招待され、インフルエンサーマーケティングのこれからについて議論した。
8月第3週、米DIGIDAYの姉妹メディア、「グロッシー(Glossy)」は、ニューヨークでインフルエンサーマーケティングのイベントを開催した。このイベントにはインフルエンサー、ファッションおよび美容業界の役員、エージェンシーがパネリストとして招待され、インフルエンサーマーケティングという比較的新しい業界における、これからの戦略について議論した。
ブランド各社とインフルエンサー。両者の関係はまさに愛憎入り混じったものとなっている。インスタグラム上のインフルエンサーは、ブランド各社にとってトラフィックやコンバージョン、ブランド知名度を向上させてくれる存在だ。一方でそうした試みが成功するかはインフルエンサーと良い関係が築けるかに大きくかかっている。インフルエンサーがブランドの製品に興味を持ってくれなければ、それだけ#sponcon(スポンサードコンテンツ)が失敗する可能性も高まってしまう。
それでもインフルエンサーマーケティングの業界は拡大の一途をたどり続けている。それゆえ、マーケティング担当者にとっては、インフルエンサー市場での成功は重大な関心事だ。一部のセッションは、記録には残すが、発言者が特定可能な内容は伏せる「チャタムハウスルール」で行われた。そのなかで飛び出した、インフルエンサーの課題についての興味深い発言をいくつか紹介する。
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コンバージョンを高めるために起用
「幸運にも私は直販ブランドに勤めているので、ROI(投資利益率)を調べることができる。これがもし卸売ブランドだったら、エンゲージメントをカウントしたうえで、ブランドアフィニティー(ブランドとの密接な関係性)やオーディエンスとのやりとりが増加しているかを見定めるのに苦労していただろう」。
「インフルエンサーエージェンシーは、大量のコンバージョンにつながる人を探し出してくれる。たとえば閲覧数の多いブログからは多くのコンバージョンを得ることができる。インスタグラムのストーリー機能でスワイプさせれば、多くの閲覧数を稼ぐことが可能だ」。
マイクロインフルエンサーvs.セレブ
「我々の会社はフォロワー数10人から2万人に至るまで、さまざまなマイクロインフルエンサーで実験をしてきた。私たちのターゲットはミレニアル世代よりもっとうえの世代だ。重要なのは、彼らが私たちのブランドについて語ることができるインフルエンサーかを判断すること。どのような人で、当社の製品についてどんな風に語るのかを見定めている。そうした試行錯誤を繰り返してたどりついた答えは、私たちのブランドにふさわしい人は、マイクロインフルエンサーでも良い結果をもたらしてくれるということ。ただし、そのようなマイクロインフルエンサーを探し出すのは容易ではない」。
「フォロワー数の多いインフルエンサーと仕事をする際に難しいのは、彼らが『何に興味があり、何を優先事項としているか』を把握することだ。フォロワー数が多いインフルエンサーは常に巧みな仕掛けを使い分けている。当社が提供した試供品を、Poshmark(アメリカのフリマアプリ)で同じ名前のアカウント名で売り出していたインフルエンサーもいた。このようなブランド構築を貶める行為が平然と行われるのを見ると、インフルエンサーによっては、ブランドのことをいかにどうでも良い存在に感じているかを思い知らされる」。
「インフルエンサー、大小のコンテンツクリエイター、消費者アドボケート。呼び方はさまざまだが、種類分けして、自社にとってコンバージョン率の高いインフルエンサーだけを絞り込むということはできない。どの種類のインフルエンサーがほかより優れていると語ることもできない。つまり私たちが学んだのは、やり方はひとつではない、ということだ」。
「我々は若いインフルエンサーと業務提携している。なかには大学生も多く、彼らは『卒業後は企業で働くつもりだ』と答える。そこで、インフルエンサーをインターンシップ生として雇い、働きながら当社のブランドについて発信してもらっている。彼らの幅広いネットワークを活かしてフォロワーを確保しつつ、製品やサービスを体験させることが可能だ」。
「当社はいままで2番手、3番手のマイクロインフルエンサーと提携していた。だが一転して現在は、ケンダル・ジェンナーとのコラボレーションを進めている。戦略的ではあるものの、これは大きな投資だ。当社のブランドのターゲットは比較的年齢層が高い。だが今後は、ターゲットをより若い世代に移していきたいと考えている」。
「我々のターゲットは大学生だ。彼らは日常的に大量の雑多な情報にさらされており、その結果インフルエンサーマーケティングにおけるコンバージョンはロングテールの様相を呈している。彼らはインスタグラムでインフルエンサーを目にし、YouTubeで製品を調査している。こうした溝を埋めるためには多大な努力が必要で、コンバージョンを増やすという観点からすればインフルエンサーマーケティングより、ほかに効率的な手法も考えられる。Facebookで配信する広告がその一例だ。しかし、マーケティング全体から見るとインフルエンサーマーケティングにも、やはり意義があると言わざるを得ない。重要なのは実際のコンバージョンを把握し、全体のバランスをとりながら進めることだ」。
インスタグラム以外の手法
「我々のターゲットは大学生より若い世代だ。彼らの声を聞くと、YouTubeがメインとなっている。彼らにとってYouTubeが検索チャネルの役割を果たしている。彼らは製品の開封動画を見て、製品の品質や自分に合っているかを調査している。YouTuberとの提携にはよりコストがかかる。だが、より売上につながるコンテンツは、やはりYouTubeだ」。
「なぜ誰もPinterest(ピンタレスト)の話をしないのだろう。誰も彼もがインスタグラムを話題にする。たしかにPinterestはインスタグラムほど華やかではないかもしれないが、Pinterestでイベントの計画をたてて、実際にお金をかけて行動する人は大勢いる」。
「Pinterestのインフルエンサーキャンペーンに、どうしても投資したいとは考えない。だがPinterest上の宣伝のピン(投稿)にはFacebookやインスタグラムにはない良さがある。キャンペーンが終わってもすぐにはなくならず、その後も1、2カ月は見てもらえる点だ」。
最終目標
「インフルエンサーに大金を払ったが、彼がしたのは会社を見学して、写真を数枚撮っただけ。結局ひどい無駄遣いとなった。重要なのは、インフルエンサーとの仕事で何を得たいかを把握することだ。その頃は彼らと仕事をはじめたばかりで、彼らが何をしてくれて、我々が彼らから何を得られるのか理解していなかった」。
「インフルエンサーのなかには、コンテンツを作るのが非常にうまい人がいる。彼らの力でコンテンツを作ることで、時間や労力の節約になる。彼らは貴重な存在だ。ほかにもオーディエンスに強い影響力を持っていて、オーディエンスの製品購入に直接つなげられるインフルエンサーもいる。また、いくつものプラットフォームで活躍するインフルエンサーもいる。私たちにとって一番難しいのは、彼らを見極めること。そのために、我々ブランドに何が必要なのか、正確に理解しておく必要がある」。
Hilary Milnes(原文 / 訳:SI Japan)
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