Facebookと広告主の微妙な関係、ボイコットで明らかに:「人間中心の方法を彼らは持ちあわせていない」

Facebookと大手広告主の関係が深刻な悪循環に陥っている。Facebookが無関心な態度を取り続けていることが広告主の不満を高め、広告主からの不満がFacebookをますます頑なな態度にしているのだ。そして、今起こっている膠着状態が、この悪循環を再び加速させている。

現在、900社を超える広告主が、少なくとも7月末までFacebookでの広告購入を見合わせている。ソーシャルネットワークのFacebookにヘイトスピーチへの対応を促すためだ。だがFacebookは、ボイコット運動が続いても構わないと思っているらしく、ヘイトコンテンツに関するポリシーを大幅に変更しようとはしていない。

実際、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は、ボイコットに参加している広告主がすぐに戻ってくるとの見通しを従業員に示したとインフォメーション(The Information)は報じている。1カ月にわたるボイコットを支持する数百の広告主のうち、Facebook広告を永久に利用しないと表明した広告主がほとんどいないことを考えれば、ザッカーバーグ氏の発言は一理ある。ザ・ノース・フェイス(The North Face)は、Facebook広告を1カ月間ボイコットし、その間に自社の方針を再検討すると発表した。コカ・コーラ(Coca-Cola)も、すべてのソーシャルネットワークで広告キャンペーンを停止する期間を、まずは30日間と設定している。

広告主とFacebookの複雑な関係

多くの広告主による期間限定のボイコット運動は、ヘイススピーチに対する彼らの対処の仕方を示しているというより、彼らとFacebookの複雑な関係を示しているといえる。今回のボイコット運動が一時的なものである限り、Facebookの収益に及ぶ損害も一時的だ。したがって、このボイコットの狙いは、Facebookにダメージを与えることではなく、Facebookの意思決定に影響を与えようとすることにある。しかもこの第2四半期は、経済の低迷によってすでに広告費が削減されているため、ボイコット運動に参加する企業が払う犠牲も比較的少ない。

「今回ボイコット運動がしばらく続いているのは、Facebookをはじめとするテクノロジープラットフォームが我々の懸念を深刻に受け止めていないことが原因だ」と、ある消費財メーカーのメディア担当責任者は匿名で語った。「彼らはいくらでも業界と話し合いの場を設けることができるが、何も変化が起こらなければ、広告主にとって非常に苛立たしい状況が生まれることになる」。

Facebookを利用する広告主にとって、悩みの種は彼らの広告費がヘイトスピーチの資金源になってしまうことだ。また、キャンペーンのデータを適切に検証できないことや、ニュースフィードでの動画広告の効果に疑問があることにも悩まされている。

無視できないFacebookの魅力

このように、Facebookにはさまざまな問題がつきまとっているが、Facebookから提供されるリーチの大きさを無視することは広告主にとって難しい。Facebookの第1四半期の月間アクティブユーザー数は1億人ほど増え、26億人という記録的な数に達している。

「Facebookは、特に大手の広告主に対して、メディアを簡単に購入できるよう計らっていた」と、ある大手広告主の元メディア担当責任者で、Facebookとさまざまな取引を行った経験がある人物は話す。「我々はこのような共同ビジネスプランの契約を結んでいたが、これには長期的なメディアコミットメントが含まれていただけでなく、リリース予定の新製品に関するインサイトも得るチャンスも含まれていた。具体的には、サンフランシスコに飛んで主要な幹部と面談することができたのだ」。

とはいえ、Facebookの広告主が不満を理由に行動を起こした例はいくつかある。2018年には、アディダス(Adidas)がニュースフィードの動画広告の購入を停止した。広告が視聴されていないという懸念が拭えなかったからだ。

広告主たちが本当に望むもの

だがいまのところ、こうした行動が起こされることはまれで、長続きすることはなく、数百の広告主が一斉にFacebookをボイコットするほどの大きなうねりになることはなかった。しかも、もし広告主が結託してボイコットを行えば、法律違反となる可能性さえある。複数の広告主が協議のうえで、あるいは業界団体を通じてFacebookをボイコットすることに同意すれば、その行為はカルテルとみなされ、違法なやり方で利益の拡大と市場の支配を試みたと判断される可能性があるのだ。そのため、ジョージ・フロイド氏が殺害された事件を受けて、Facebook広告への支出を停止する「ストップ・ヘイト・フォー・プロフィット(Stop Hate for Profit)」キャンペーンが開始されたとき、広告主らはこの大規模な運動を旗印にすれば、Facebookにヘイトスピーチへの対応を再検討させられるかもしれないと考えた。

広告主とFacebookの関係がここまでうまくいかなくなった原因を理解するには、その状況がどのように始まったのかを知ることが重要だ。最初に広告主がFacebookに惹かれたのは、ブランデッドコンテンツを多くのファンに無料で見せることができたからだ。もちろん、最終的に、広告主は獲得したリーチに応じた金額を支払わなければならなくなった。

大手広告主は、ソーシャルメディアの巨人であるFacebookと直接取引できるようになったため、有料化を受け入れるのは比較的簡単だった。この取引は年間契約のような形態だったが、一定金額の支払いを義務付けられることはなかった。それどころか、Facebookの広告フォーマットを最大限に活用するための専門知識や、リリース予定の新製品に関する情報を得ることができた。しかし、Facebookがモバイルや動画など、新しい広告製品を次々と生み出すにつれて、不満を募らせる広告主が増えていった。そして、広告主らはFacebookに変革を求めたが、本当に望むものが得られることはなかった。

耳を傾けようとしないFacebook

Facebookは2018年、Facebookとインスタグラムの両方で広告インプレッションを正しく報告しているとして、メディア・レーティング・カウンシル(Media Rating Council)の認定を受けた。しかし5月、同社のプラットフォーム上で購入されたディスプレイ広告と動画広告の効果に関するレポートに欠陥があるとして、承認を取り消される可能性があると警告された。どうやらFacebookは、広告主が反抗すればするほど抵抗を示すようだ。このパワーダイナミクスは、Facebookがこの数週間に広告主の上級幹部と行った会議でも見られている。

あるエージェンシーの上級幹部は、先日行われたFacebookとのビデオ会議で、質問をしようと準備をしていた。この会議は、Facebookが複数のメディアエージェンシーの上級幹部を招待し、「グローバルパートナー円卓会議」と銘打って開催したものだ。会議の目的は、ジョージ・フロイド氏が殺害された事件を受けてボイコット運動に参加する広告主が増えるなか、Facebookによるコンテンツ管理について広告主と話し合うことだった。

しかし、先の幹部はほどなく、これが円卓会議ではないことに気づいた。会議の時間の大半が、Facebookのグローバルマーケティングソリューション担当バイスプレジデントであるキャロライン・エバーソン氏、インテグリティ(誠実さ)担当バイスプレジデントのガイ・ローゼン氏、それに公共政策担当ディレクターのニール・ポッツ氏の話に費やされたのだ。彼らは、Facebookのツールによって、ユーザーから報告される前に削除されたヘイトスピーチの割合が3年前の23%から89%に増えたという主張を繰り返した。これは驚くべき改善ではあるが、先の幹部にとっては、Facebook上でヘイトスピーチに遭遇した人への影響を覆い隠すための話のように思えた。

「この会議は、Facebookが広告主にどう対応するのかを実によく示すものとなった。非常にビジネスライクだが、それでも我々は彼らと協力する必要がある」と、このエージェンシー幹部は匿名を条件に語った。

テクノロジー企業に欠けているもの

あらゆる点から考えて、広告主は人種問題への意識の高まりを無視するのではなく、きわめて重視している姿勢を他社に先駆けて示したほうがいい。だが、ボイコット運動によってFacebookがコンテンツの管理方法を大幅に変更する見込みは薄い。そのため、この運動に参加しただけで、広告主の発言と行動が一致することになるかどうかは疑問だ。

「このような会議に参加していると、テクノロジー企業と話をしているのだということを実感させられる。なぜなら、このような社会的問題に対処する人間中心の方法を彼らが持ちあわせていないからだ」と、6月23日に開かれた会議に出席したマーケターのひとりは述べている。この会議では、Facebookの上級幹部が、ユニリーバ(Unilever)、ネスレ(Nestlé)、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev)などのマーケターを含むクライアントカウンシルと会談した。

ザッカーバーグ氏は、COOのシェリル・サンドバーグ氏やエバーソン氏とともに、コンテンツ管理プロセスを見直す姿勢を会議の参加者に見せようとしたが、マーケターらはFacebookのプラットフォームで変化が起こることはほとんどないと考えている。

「彼らは、ポリシーや製品、インテグリティチームについての話はするが、そのような取り組みが社会に与える影響や与えることのできない影響については決して語ろうとしなかった」と、このマーケターは述べている。

[原文:They don’t have a people-centric way:’ Facebook ad boycott is reigniting its dysfunctional relationship with advertisers

SEB JOSEPH(翻訳:ガリレオ、編集:長田真)