2021年を通して、データプライバシーに関して増え続ける変更などによってパフォーマンスマーケターは四方八方から包囲網が狭まるのを感じていた。こうした変化により、中小ブランドの多くがフルファネルマーケティング戦略を見直し、マーケティングのタッチポイントを拡大することを迫られた。
手早く簡単にデジタル顧客が獲得できた栄光の日々も、もう長くは続かないようだ。
2021年を通して、パフォーマンスマーケターは四方八方から包囲網が狭まるのを感じていた。データプライバシーに関して増え続ける変更、ますます混み合うデジタルマーケットプレイス、パンデミックによってもたらされた新たなショッピング習慣の時代。
こうした変化によって、中小ブランドの多くがフルファネルマーケティング戦略を見直し、ブランド構築とダイレクトレスポンスマーケティングとのあいだで今まで以上に連携の取れたバランスを図ること、つまりソーシャルメディアやペイドサーチなどのパフォーマンスマーケティング戦術に加え、OOHやストリーミング動画など、マーケティングのタッチポイントを拡大することを迫られた。
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フルサービスエージェンシーのランドリーサービス(Laundry Service)の最高マーケティング責任者マイク・ミクホ氏は次のように語る。「ある時点まで来ると、新規獲得は飽和状態になる。簡単に獲得できる顧客がいつまでもあるわけではない。新規獲得重視のマーケティングからフルファネルマーケティングに移行しているのは、簡単に獲得できる顧客をすべて獲得してしまい、ここからはファネルを広げ、もっと多くの人を自社ブランドに取り込んでいかなければならないからだ」。
フルファネルを狙うブランドたち
最近このような戦術を採用しはじめたブランドには、特にソーシャルメディアの強化を図るクレアーズ(Claire’s)、エディブル・アレンジメント(Edible Arrangements)、シャッターフライ(Shutterfly)や、OOHなどのメディアに予算を向け始めたローイングマシンのハイドロー(Hydrow)などがある。
ティーンエージャーを対象とする小売業を展開するクレアーズは、同ブランド史上「最大かつもっとも統合的なイニシアティブ」と呼ぶ「ビー・ザ・モースト(Be the Most)」キャンペーンを最近開始した。キャンペーンはeコマースや店頭での展開、ニューヨーク市と同ブランドの地元シカゴでのOOH、さらにはフールー(Hulu)、TikTok、ツイッチ(Twitch)、スナップ(Snap)なども含む、強力なメディアプランに支えられている。
50年の歴史を持つクレアーズのこのキャンペーンは、Z世代とその親を狙ったものだ。同社では、メタバースやゲームなど、新しいカテゴリーへの進出も検討している。
クレアーズの最高マーケティング責任者、クリスティン・パトリック氏は「当社はお客様がいる場所で存在感を示さなければならない。お客様が利用する新しいプラットフォームは、それが仮想世界であれTikTokであれ、すべて把握するようにしている」と話し、「社会の動きがとても早く、彼らが最新のカルチャーにぴったり寄り添っているので、私たちもそこにいなければならない」と加えた。
だが、ブランドを育てていくには…
パンデミックによって次々と変わる状況は、広告主の予算緊縮を招いたが、特に自由裁量で使える金額が減ったことで、手早く簡単に結果の出るデジタル顧客獲得のチャネルに向かうマーケターが増えた。同時に、ロックダウン措置やマスク義務化でより多くの人がオンラインで時間を過ごし、買い物をするようになった。
広告代理店フィッツコ(Fitzco)のメディア責任者クレア・ラッセル氏は「コロナ禍のなかで、全体的にマーケターがパフォーマンスメディアに大きくシフトしていく傾向が見られ、そのなかでも特にペイドサーチが目立っていた」という。その魅力が、購入意向が高い一方でリスクが低いことにあるとし、「今まさに購入を検討している人たちに働きかけたいと誰もが思っていた」と話す。
ラッセル氏はさらに、パンデミック開始当初はそれでもよかったが、ブランドを育てていくにはブランド認知度とストーリーテリングのためのチャネルが重要、と付け加える。パフォーマンスマーケターにとっては、クリエイティブとターゲティング・測定を結びつけ、プログラマティックバイイングができる、CTVとOTTが有望だろう、と続けた。
初歩的な手法という見方もある
だからといって、フルファネルマーケティングが特別に革命的だということはない。初歩的なマーケティング手法だという広告主もいる。
業界ウォッチャーにとっては、振り子の揺り戻しのようにも見える。デジタルブームの頃、マーケターはデジタル顧客獲得のチャネルに重点を置いた。今度はその振り子が逆に振れ、テレビなど、ストーリーテリングができるチャネルに予算が行く可能性がある、と広告代理店ロージーラブス(Rosie Labs)CEOのデビッド・ソン氏は語る。
ソン氏は「フルファネルとは、自社ブランドとの接点がありえるすべての場所で、顧客の前に文字通り姿を現すということだ」といい、次のように続けた。「成功を極めているブランドは、常にフルファネルに取り組んできた企業だ。それはつまり、ブランディングとダイレクトレスポンスをひとつに合わせてやってきた、ということだと思う」。
KIMEKO MCCOY(翻訳:SI Japan、編集: 猿渡さとみ)