eスポーツのオーディエンス測定法、懸念する広告主たち:「言い訳はもう通用しない」

eスポーツ業界が急成長してきていることは広く認知されている。しかし、広告バイヤーたちにとっては、ほかのスポーツエンターテイメントと比較して、eスポーツの人気をどう理解すれば良いかは、トリッキーな問題だ。ユニークビュー数や合計視聴分数といったメトリックスがあることで、eスポーツがいかに成長しているか説得力を持って語ることができているものの、これらのメトリックスだけでは、全体像は見えてこないことがしばしばある。

スポーツTVの視聴者数は、ニールセン(Nielsen)のようなサードパーティが標準化されたメトリックスを使って測定する。しかし、eスポーツの視聴データは、トーナメント主催側やゲームデベロッパー企業、チーム、もしくはストリーミングプラットフォーム自身によって測定されている。本稿の取材に応じてくれたeスポーツ関係者の証言では、こういった当事者たちによる数字は不正確ではないものの、メトリックスの活用のされ方には誤解を生むものがある、とのことだ。

「これまでの歴史を見ても、eスポーツ業界の企業のいくつかは、視聴回数や時間といった大きくなりがちな自分をよく見せる視聴関連メトリックスを報告する傾向がある」と、アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)の戦略・アナリティクス部門リーダーのカスラ・ジャフルーディ氏は言う。「残念なことにこういったメトリックスを使うことで誤った比較や、期待が生まれてしまい、究極的にはオーディエンスの価値を過剰に膨らましてしまう」。

もはや言い訳できない

たとえば、視聴時間メトリックスは従来のスポーツ業界と比較するためにeスポーツのメトリックスとしてしばしば使われる。ストリーミングプラットフォームからのデータのニューズー(Newzoo)の分析によると、今年夏に開催されたフォートナイトワールドカップ(Fortnite World Cup)の選抜ステージは、公式Twitch(ツイッチ)、YouTubeチャンネル上で週70万時間の視聴時間を集めた。そのうち65%がTwitch上だ。単独で使われると視聴時間メトリックスは、大きな数字以上の意味を持たなくなる。

「合計視聴時間であれユニークビュー数であれ、こういった虚栄のメトリックスは、簡単にオーディエンスの価値が曖昧になるよう操作することができるにも関わらず大きな関心が向けられている。たとえばビュー数はeスポーツ企業によって大きな視聴者数を主張するために活用されるが、このメトリックスも、自動で再生されるビデオが埋め込まれているサイトを経由して数字が過剰に膨らますことができる」と匿名を条件に取材に応じてくれたeスポーツエグゼクティブは言う。

広告取引はしばしば、こういったメトリックスに基づいてブローカーされる。

「eスポーツに対する熱狂のようなものは、ここしばらくずっと存在してきたが、広告主からの投資となると、遅れが起きている」とメディアコム(MediaCom)のスポーツ・エンターテイメント分野のワールドワイドVPであるミーシャ・シャー氏は語る。「eスポーツ業界がメインストリームのブランドの広告予算をさらに獲得したいと本気で考えているのであれば、バイヤーがお金を払っているリーチの価値に、もっと自信が持てるよう、さらなる対策を行う必要がある。発展途上の業界だから、という言い訳はもはや通じない」。

「数字の意味を知りたい」

視聴者数の数字が信頼できないことを理由に、eスポーツから距離を置いているメインストリームの広告主たちは増えている。ゲーミングビジネスについて報じるKotaku(コタク)による最近のレポートでは、視聴データを巡る不明瞭さを悪用して、承認されていない数字や潜在的に過剰に報告された数字を広告主に対して使っているeスポーツがあることが分かった。

eスポーツのストリーミングプラットフォームとしてもっとも人気があるTwitchは、eスポーツにおけるオーディオ測定が統一されていないことの恩恵を受ける大手プレイヤーのひとつとなっている。Twitchのストリーマーたちは1000ビューごとに、CPMモデルに基づいて報酬を受け取っている。その結果、毎秒どれだけの視聴者がストリーミングを見ているかを示す同時視聴メトリックスが、広告主のストリーマー選別の重要な基準のひとつとなっている。しかし、プラットフォームはそれぞれが独自の方法で同時視聴をカウントしている。そのためメディアバイヤー側がこれらの数字を合わせて全体像を理解しようとしても、うまく使うことは難しいのだ。

「ブランドのなかには、自分たちが参加する業界をしっかりと理解してから参加したいと考えるため、eスポーツへの投資をためらっているところもある。提示される大きな数字が不正確なのでは、と心配しているのではなく、こういった数字が何を意味しているのかを知りたいと彼らは考えているのだ」と、ニールセンのeスポーツ部門マネージングディレクターであるニコール・パイク氏は言う。

AMAというメトリックス

どちらにしても、Twitchの広告ビジネスはゲーミング業界の外に存在する、より大きな広告主たちからの支出を必要とする段階にまで成長した。先日Twitchはサイトの再ローンチが行われた。これは、ただ他人がゲームをプレイしているのを見る場所ではなく、一般的なライブストリーミングのプラットフォームとしてポジショニングをするものだった。これによってより大きな広告支出を得ようとしているわけだ。より大きな広告支出を求めようとTwitchが取り組むにつれて、視聴データの測定アプローチも進化しつつある。彼らはAMA(分ごとの平均視聴者数)を標準的なメディア・メトリックスとして活用する初期ステージをはじめた。これは従来のスポーツ視聴とよりダイレクトに比較することができる。

アクティビジョン・ブリザード(Activision-Blizzard)、eスポーツチームのFナティック(Fnatic)、ゲーミングネットワークのESL、そしてオーガナイザーのライオットゲームズ(Riot Games)など、いくつかのeスポーツ参加団体はレポートパートナーとしてニールセンを起用している。彼らの多くはAMAを適用している。ニールセンはテレビでの視聴率と同等のメトリックスとしてAMAを確立したいと考えている。イベント全体における視聴分数の合計をイベント生放送の尺で割ることで、一分ごとの平均視聴者数を出すのがAMAだ。

「マーケティングが進化するにつれて、エンゲージメントやコンテンツ消費の測定法についても吟味する必要がある。そうしてeスポーツという文脈においてブランドの存在を確立するのだ。より深い、豊かな形の測定が出てくることは、非常に面白いことだし、ブランドたちにとっても価値があるだろう」と、VLY&Rのコネクションズ部門グループディレクターであるバート・ヴィッカーズ氏は語った。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)