「ほとんど信頼がない」:アドテクのキックバックにマーケターの不信感が強まる

広告エージェンシーへのキックバックという習慣を暴露する痛烈なレポートを全米広告主協会(ANA)が発表してから2年が経つが、業界の情報筋によると、選ぶアドテクが利害関係の影響を受けているのではないかという、広告主たちのエージェンシーパートナーへの疑いはますます深まっている。

米DIGIDAYが話を聞いた現職と元職のマーケターとメディアバイヤー14人によると、バイサイドが公に非難して2年が経ったいまも、エージェンシーがメディアオーナーからひそかに受け取る謝礼は蔓延しているという。また、アドテクとのあいだでも同じことが起きていることが疑われている。ブランドは詮索を強めているが、見えにくい分野であることから、エージェンシーはキックバックやリベートを受け取り続けられているのだという。

こうした行為は合法かもしれないが、意見は分かれる。マーケターの懸念は、エージェンシーが余分に稼ぐことではない。それが知らないところで行われていることだ。英国では、リベートが多いメディアオーナーをエージェンシーが好むことを広告主たちが黙認してきたが、米国では、そうした取引が「蔓延している」というANAのレポートが広告主たちの怒りに火をつけた。こうした暴露以降、英米両国の広告主たちは、このような行為の取り締まりを強め、別の方法で稼ぐ動機付けをエージェンシーに与えている。

見返りの取り決めと、よくわからない料金

アドテクの場合、幹部らによると、エージェンシーへのキックバックはメディアオーナーからのものと同様に単純なもの、つまり現金の受け渡しのようなものばかりではない。アドテク幹部2人が、ビジネスを失うことを懸念して匿名を条件に語ってくれたところによると、メディアエージェンシーが、100万ドル(約1.3億円)のコンサルティングサービスを条件に、1000万ドル(約13億円)の契約をアドテクベンダーにもたらすというのが常套手段だという。実際にはコンサルティングサービスは行われないが、100万ドルはエージェンシーに記録される。この幹部2人によると、アドテクベンダーは、ブランドセーフティやビューアビリティといったサービスの優先的なパートナーになるため、エージェンシーにキックバックを渡すこともある。また、メディアプランに加えるアドテクをエージェンシーが一部所有していて、エージェンシーが設けを得るということもある。そうすることで、潜在的なバイヤーに対するビジネスの価値を膨らませることが可能なのだ。

広告主たちがもうひとつ懸念しているのは、自分たちのお金がどのように使われているのか全体像が掴めず、公平な取引になっているのかわかりにくい点だ。

「予算の30~40%がさまざまな料金に回されていくプランを見たことがある」と、ある広告主の元マーケターは語る。「目につくわけではなかったが、隠されているわけでもなかった。だから、お金がどんな理由でどこに行くのか本当のところをすべて知っている人も少し混じっていたのかもしれない。だが、ほとんどの人は問題にしなかっただけなのではないか」。

消費財を扱うある世界的な広告主のシニアマーケターは、メディアプランでエージェンシーに支払っているアドテク管理の料金には、隠されているものがあったと不満を漏らした。この広告主は、お金がどこに行っているのかを把握するより、自社でアドテクを管理するほうが簡単だとの判断に至った。

「アドテクの推薦でエージェンシーが手数料を得ているとわかっているわけではない」と、このシニアマーケターは語る。「しかし、ブランドに再販売する際にアドテクの実際の費用に利益を上乗せしていることはよく知っている。大手広告主の大半はこれを大きな問題だと考えており、また、エグゼキューションはエージェンシーに残っているとはいえ、直接の契約でプログラマティックのセットアップをこれほど多く目にする主な理由だと見ていると思う」。

エージェンシーによるアドテク企業の株の保有

エージェンシーネットワークがアドテク企業株の所有を増やしているのは有名な話だ。たとえば2018年にAT&Tがアップネクサス(AppNexus)を買収したが、WPPによる最新の業績報告によると、WPPはこれで1億6900万ポンド(約249億円)を手にした。WPPが株式の15%を保有していたことによる投資収益だ。パートナーシップは発表されてはいたが、すべての広告主が知っていたわけではない。ある情報筋によると、WPPやアップネクサスから株のことを明らかにされると、一部の広告主は支払いを拒否したという。

アップネクサスであった仲介に詳しいある情報筋によると、アップネクサスのアドテクをクライアントと使う義務をWPPが契約で負ったことはない。しかし、「クライアントはこの2社の関係をとてもよく承知していて、ブランドが(WPPの)出資を受けてアップネクサスとは仕事をしたくないと言ったことも数回あった」という。

親会社のWPPが株を保有した時期にアップネクサスの主要顧客のひとつだったグループMは、声明で次のように述べている。「メディアプランで取り組む企業の株をWPPがもっているものについては、クライアントに透明にしている。ザクシス(Xaxis)がアップネクサスを独占的に使ったということはなく、GoogleのDBM、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)、また最近では適切ならAmazon Advertising Platformなど、ほかのデマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)とも仕事をしている。アップネクサスは、ザクシスのAI機能であるCOPILOTの立ち上げなど、市場初を成し遂げる力になってきた、優先的なテクノロジーパートナーではある。アップネクサスは評価の高いDSPであり、クライアントが広く利用を続けているのは、もたらされる価値が理由だ」。

料金と株の持分について精査する

広告主は現在、エージェンシーの中立性が信用できない部分への警戒を強めている

精通したマーケターほど、メディアプランにあるベンダーとエージェンシーの利害関係を前もって知りたいと主張するようになってきている。たとえば日産は、そうしたベンダーとのあらゆる関係を全面的に監査する権利を主張するまでになっている。

「アドテクのベンダーやモバイルエージェンシーがリベートを売り込んでくることがある」と語るのは、フライト予約アプリ、ホッパー(Hopper)でユーザー獲得の責任者を務めるサイモン・ディリクレ氏だ。「しかし、率直なところ、フラウドの状況全般、インベントリー(在庫)の本当の所有者やアクセス権の所在が複雑なことなどから、この分野はほとんど信頼がなく、料金を割引すると言われても無視するほどだ。実際に安いかどうかは、実は知る必要もない。パフォーマンス全体に表れてくるものだから」。

言われているエージェンシーのこうした行為が根強い理由のひとつは、マーケターが十分なデューディリジェンスを実施していないことにある。一部の広告主は、パブリッシャーからひそかに得ている報酬を相殺するためにエージェンシーが使っている戦術にいまだに気がついていない。持株グループが近いベンダーを好むことは広く知られているのに、検証の段階を省略する広告主もいる。

あるアドテク企業のシニア幹部は、「英国、米国、アジアに展開する大手ネットワークのひとつに幾度となく販売を試みたが、我々の製品は買わないように組織化されていた」と語る。「我々は最高に売れているわけではないが、ほかの大きな持株グループ2社とは取引があるし、ブランドのと直接取引も増えているので、技術や企画が理由で我々と仕事をしようとしないということはあり得ない。ほかのアドテク企業と仕事をすることで稼ぎが増えるのに違いないと疑っている」と、この幹部は語った。

こうしたテクノロジー上で取引されるメディアの量は増える一方であり、広告主は状況を早急に把握する必要がある。

価格比較サイトConfused.comの元パフォーマンスマーケティング責任者で、現在はコンサルタントのジョン・ブロートン氏は、「エージェンシーを非難するのはひとつの方法だが、結局のところ、広告主の予算が使われる先について最終的に責任を負うのは広告主自身だ」と語る。「残念なことに、理解していないものは管理できない。広告主コミュニティは現在、アドテク市場に関する知識の水準が十分ではない」と同氏は語った。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)