米国の最大手百貨店は、消費者が支出を控えるなか、依然として買い物客の心を動かすのに苦労している。
メイシーズ(Macy’s)は2022年の第2四半期に2億7500万ドル(約402億円)の利益をあげたが、今年の第2四半期には2200万ドル(約32億1000万円)の純損失を記録した。一方、コールズ(Kohl’s)の2023年第2四半期の利益は60%減の5800万ドル(約84億7000万円)になり、ノードストローム(Nordstrom’s)の第2四半期の純売上が8.3%低下した。メイシーズとコールズは、クレジットカード事業の減益も報告している。国勢調査(Census)のデータでは、2023年1~7月の百貨店売上高は、全体で見ると前年同期比1.5%減だった。
百貨店は、ここ数四半期にわたってインフレに警鐘を鳴らしており、価格高騰が、アパレルや、玩具、ゲームなどの商品への購買意欲を減退させているという。たとえば8月25日の決算発表において、メイシーズのCEO兼チェアマンを務めるジェフ・ジェネット氏は、顧客が「簡単にコンバージョンしない」といい、自由裁量カテゴリーの支出を「過剰なほど控えている」と述べた。
しかし、事例によっては、パンデミック以前よりも悲惨な状況になっていることもある。たとえばノードストロームの第2四半期の純売上は、2019年の同時期と比べて3.1%減少した。メイシーズは7.5%、コールズに至っては17%と、その数値はさらに高い。また、インフレはまだ激しいものの、昨夏の水準よりは低下している。労働統計局(Bureau of Labor Statistics)によると、6月の年間インフレ率は3%に鈍化し、2021年3月以来12カ月の上昇率としてはもっとも低かった。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
米国の最大手百貨店は、消費者が支出を控えるなか、依然として買い物客の心を動かすのに苦労している。
メイシーズ(Macy’s)は2022年の第2四半期に2億7500万ドル(約402億円)の利益をあげたが、今年の第2四半期には2200万ドル(約32億1000万円)の純損失を記録した。一方、コールズ(Kohl’s)の2023年第2四半期の利益は60%減の5800万ドル(約84億7000万円)になり、ノードストローム(Nordstrom’s)の第2四半期の純売上が8.3%低下した。メイシーズとコールズは、クレジットカード事業の減益も報告している。国勢調査(Census)のデータでは、2023年1~7月の百貨店売上高は、全体で見ると前年同期比1.5%減だった。
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百貨店は、ここ数四半期にわたってインフレに警鐘を鳴らしており、価格高騰が、アパレルや、玩具、ゲームなどの商品への購買意欲を減退させているという。たとえば8月25日の決算発表において、メイシーズのCEO兼チェアマンを務めるジェフ・ジェネット氏は、顧客が「簡単にコンバージョンしない」といい、自由裁量カテゴリーの支出を「過剰なほど控えている」と述べた。
しかし、事例によっては、パンデミック以前よりも悲惨な状況になっていることもある。たとえばノードストロームの第2四半期の純売上は、2019年の同時期と比べて3.1%減少した。メイシーズは7.5%、コールズに至っては17%と、その数値はさらに高い。また、インフレはまだ激しいものの、昨夏の水準よりは低下している。労働統計局(Bureau of Labor Statistics)によると、6月の年間インフレ率は3%に鈍化し、2021年3月以来12カ月の上昇率としてはもっとも低かった。
マーチャンダイジングの課題
百貨店への関心が低下している背景には何があるのだろうか。小売関係者によると、品揃え、価格戦略、価値パフォーマンスなど、いくつかの要因が関与していると語る。
過去数カ月間、百貨店では一部のカテゴリーが、ほかのカテゴリーよりも順調だった。たとえばジェネット氏によると、前の四半期には、美容品、ウィメンズのコンテンポラリーファッション、およびデザイナーズ・アパレル&シューズが、メイシーズでもっとも良い業績を挙げたカテゴリーであったが、一方、ハンドバッグや、メンズ、およびドレスは「困難な状況だった」と述べる。ノードストロームのアクティブウェアの売上は「昨年よりわずかに増加した」一方、ノードストロームラック(Nordstrom Rack)のウィメンズアパレルは「平均を下回った」と、プレジデントを務めるピート・ノードストローム氏は8月24日の決算発表で述べた。
このような業績の違いの一部は消費者の嗜好と関係しているが、商品の陳列方法も関係していると、グローバルデータリテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクターを務めるニール・サンダース氏は強調している。たとえばコールズに関するメモで、ほとんどの店舗は「まだ商品で混雑しすぎており、買い物しにくく、消費者が買いたくなるような十分な魅力がない」と同氏は記している。
サンダース氏はメイシーズについても別のメモで「商品の選択に注意深さが足りず、店舗での陳列方法もまったく雑然としている」と述べており、「そのため顧客は購入の意思を削がれ、一部はそのうち来店さえしなくなる。これは結局、店舗の生産性を弱めることになる。最終的にはこれによって、店舗を改善するための投資が非常に難しくなる」と付け加えている。
「もっと優れたビジネスモデルがある」
百貨店各社は、商品の展示場所や展示方法を改善するため労力を注いでいると語る。たとえばコールズは、ギフト、衝動買い、装飾品、ペットの商品を増やし、ギフト用商品を店舗の前面に移すと、CEOのトム・キングスベリー氏は8月23日の決算発表で述べた。2024年にCEOに就任する同社のプレジデントのトニー・スプリング氏は、メイシーズはラグジュアリーへの需要が強いことを受け、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)の店舗を改装し、「ラグジュアリーなブランドや商品により多く集中させる」と述べた。
しかし、こうした商品はすべて、そもそも売れ行きが好調である必要があると指摘するのは、小売アナリストでポッドキャストの司会者、さらに、『卓越した小売(Remarkable Retail)』の著者でもあるスティーブ・デニス氏だ。百貨店は、ターゲット(Target)やディックススポーティンググッズ(Dick’s Sporting Goods)と比べて、「自社商品をどのように差別化するかが問題になる。カーキパンツ、ゴルフシャツ、カーゴハーフパンツなどは多くの場所で買える。このような価格帯の商品になると、差別化のポイントはどこなのかを知ることがとても難しくなる」と同氏は述べている。
買い物客は大手ブランド品の割引を求めて百貨店に集まるかもしれない。しかし、実は多くの百貨店は、プロモーションやセールを行う方法を変えているところだ。たとえばコールズは第2四半期にプロモーションを減らしはじめ、オンライン限定の割引を取り止め、よりターゲットを絞り込んだ割引や在庫クリアランスセールに切り替えようとしている。メイシーズも同様に、「季節的な在庫クリアランスセールの期間を数週間減らした」とジェネット氏は述べている。
この価格戦略の切り替えは、実際にビジネスを悪化させる可能性がある。たとえばコールズでは、「バリュー戦略の簡素化のためにオンライン限定のプロモーションを廃止したことで、予想通り売上に影響が出た」とCFOのジム・ティム氏は述べた。百貨店がお買い得商品を減らすならば、買い物客はAmazonのようなマーケットプレイスなど、ほかの場所で割引を探すようになる。
「百貨店が市場シェアを失ったのは、もっと優れたビジネスモデルがあるからだ。価格を下げることはできるが、コールズ、メイシーズ、ジェイシーペニー(JCPenney)がこのような問題を抱えているのは、売上を増やすことだけを考えて極端な割引を行った結果、自縄自縛に陥ったことが理由のひとつだ」と、デニス氏は述べる。
「ビジネスモデルとして衰退しつつある」
メイシーズは、成長を促進して収益を取り返すため、プライベートブランドに賭けている。8月には、初のプライベートブランドとしてオンサーティーフォース(On 34th)をリリースし、2025年の末までに、さらに3つのブランドを立ち上げる計画だ。コールズはこのカテゴリーでまだ良い実績がなく、前の四半期でも、ナショナルブランドが依然としてプライベートブランドより「良い業績を挙げている」と、キングスベリー氏は語った。しかし、コールズはアパートメントナイン(Apartment 9)やエルシー・ローレン・コンラッド(LC Lauren Conrad)などのプライベートブランドが堅調に推移している。ノードストロームのプレジデントによると、顧客はアニバーサリーセール(Anniversary Sale)で、プライベートブランドに「肯定的な」反応を示したという。
全体的に、百貨店は数十年にわたってオンライン小売企業や専門小売業者に負けてきたと、デニス氏は述べる。実際に、アルタビューティー(Ulta Beauty)は、今やメイシーズ、コールズ、ノードストローム、ディラーズ(Dillard’s)のすべてを合わせたよりも時価総額が大きい。IBISワールド(IBISWorld)によると、2018年から2023年にかけて、百貨店業界の市場規模は年間平均で4.1%減少している。
百貨店は歴史的に、小売のトレンドについていくのに苦労してきた。パンデミック以前から、シアーズ(Sears)やバーニーズ(Barneys)などの小売企業は、顧客の共感を得られず破産を宣言している。コロナ禍の最中に百貨店のデジタル売上は伸びたが、従来の手法と異なるマーケットプレイスや新しい店舗形態を打ち出したことで、混乱を招いた。これらの百貨店は現在、D2C店舗、オンライン小売企業、大手企業との競争に直面し続けている。
解決策は、「残念ながら、これらの百貨店が現時点で何をすべきかは明確でない。この問題に取り組むのがあまりにも遅すぎたためだ。なぜ人々がTJマックス(TJ Maxx)や、アルタ、ターゲット、Amazonで買い物をしはじめたのか? そのビジネスを取り戻すために何をすべきなのか? 百貨店はビジネスモデルとして衰退しつつあるカテゴリーなので、市場シェアを大きく回復させなければ、ゆっくりと忘れ去られていくだけだ」と、デニス氏は述べている。
[原文:‘There are superior business models’: Why department stores are losing sales]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)