新型コロナウィルスのワクチン接種が進み、消費者が通常の生活を取り戻すにつれ、今後のイベントは対面式とバーチャルのハイブリッドに変化していく可能性が高い。
新型コロナウィルスのワクチン接種が進み、消費者が通常の生活を取り戻すにつれ、今後のイベントは対面式とバーチャルのハイブリッドに変化していく可能性が高い。
パンデミックの影響で対面式のイベントは様変わりし、「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」や「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」といった業界最大級のイベントは、バーチャルへと舞台を移した。顔を合わせてのネットワーキングや会話は、Zoomを使ったパネルディスカッションやチャット機能に置き換えられた。一方、バーチャルリアリティを使って、参加者に対し、動画配信用のリンク以上のものを提供しようとする企業も登場している。
パンデミックの影響で、2020年の授賞式が中止となったカンヌライオンズも、2021年は完全デジタルイベントのカンヌライオンズ・ライブ(Cannes Lions Live)として帰ってくるようだ。詳細はまだ発表されていないが、2021年の夏は、業界最大級の同イベントにおなじみの、リゾート気分やパーティーでの交流も、様変わりするかもしれない。
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ハイブリット化が進む
「純粋な対面式のイベントは、しばらく開催されることはないだろう」と、ソフトウェア企業のレッドハット(Red Hat)やイグナイト(Egnyte)を顧客にもつイベントマーケティング企業、バンザイ(Banzai)のCEO、ジョー・デイビー氏は述べる。「今後のカンファレンスは、オンライン、オフライン、オンデマンドの要素を併せ持つようになる」。
またデイビー氏は、2021年末まで、業界では小規模な対面式イベントと、バーチャルイベントに重点が置かれた大規模イベントが増加するだろう述べる。「ただ、そのいずれも、対面とバーチャル、両方の要素を持ち合わせだものになる」。
一方でデイビー氏は、パンデミックがまだ終息していない以上、多人数の対面式イベントには安全面で多くの懸念があるが、人々は周囲との直接的なつながりを求めていると強調する。バーチャルイベントはアクセスしやすく、より多くの参加者にアプローチできるが、「人間関係の構築やつながりを再現するのは限界がある」という。「バーチャルイベントを運営するマーケターたちは、オーディエンスが本当に支持したくなるような(バーチャル)体験を、どう作り出すかを考えなければならない」。
サンダンス映画祭の成功事例
今年のサンダンス映画祭は、デジタル体験を手がける企業、アクティブ・セオリー(Active Theory)の支援のもと、バーチャルで開催された。
このときアクティブ・セオリーは、「ドリームウェーブ(Dreamwave)」という自社技術を用いた。これにより参加者は、対面イベントのようにアバターを使って会場を動き回ることができた。また同社は、交流に役立つチャット機能も用意。今年のサンダンス映画祭は、例年とは大きく異なるとはいえ、成功例のひとつとしてみなされている。実際、インディーワイヤー(IndieWire)は、同イベントが、バーチャル映画祭はうまくいくという可能性を証明したと伝えている。
アクティブ・セオリーの共同創設者、ニック・マウントフォード氏によると、バーチャルイベントをカスタマイズする方法を求めるマーケターが増えたことで、同社のドリームウェーブ製品への関心も高まっているという。「この12カ月間、あちこちからの依頼を断っている」と同氏。「問い合わせが多すぎて、手に負えない状態だ」。
それでもパンデミックが終息すれば、対面式のイベントは復活するが、ただしそこにハイブリッド体験が加わる可能性は高いと、マウントフォード氏。その際は、アクティブ・セオリーのような企業が、カスタマイズ可能なソリューションを提供することになるというのが、同氏の見立てだ。
またマウントフォード氏は、「バーチャルイベントとフィジカルイベントのオーディエンスが、同じ人物とは限らない」とマウントフォード氏はいう。「どちらも、ブランドにとって貴重な顧客に変わりはない」と述べる。
直接的な繋がりの重要性
エージェンシーのホーソーン・アドバタイジング(Hawthorne Advertising)のCEO、ジェシカ・ホーソーン・カストロ氏も、ハイブリッドモデルは理にかなっていると話す。最近は、オンラインとオフラインのマーケティングを柔軟に試すことが可能になっており、企業は好きなときにコンテンツを配信できる。より多くの参加者を引きつけることが可能だと、同氏は強調する。
「パンデミックの影響で、イベントはそのフォーマットから、招待客リストまで変化した。しかし、我々が人との直接的なつながりを求める気持ちは変わらない」とホーソーン・カストロ氏はメールで述べた。「人々が集う場所は変化し、我々もクリエイティブになる必要があるかもしれない。しかし、最終的に優先されるのは、直接的なつながりだろう」。
KIMEKO MCCOY(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:村上莞)