消費者は必ずしもファッションブランドのNFT参入に賛同していない。2022年1月、D2Cアンダーウェアブランドのミーアンディーズ(MeUndies)はボアード・エイプ・ヨット・クラブ(Bored Ape Yacht Club)に参加した。Twitterではこの告知の投稿に対し、多くの批判がコメントされた。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
NFTに参入している何十もの多くのファッションブランドの発表だけから判断すれば、消費者はそうしたデジタル製品を強く求めていると思う人もいるかもしれない。
しかし、誰もがこのコンセプトに賛同しているわけではない。1月27日、D2Cアンダーウェアブランドのミーアンディーズ(MeUndies)がボアード・エイプ・ヨット・クラブ(Bored Ape Yacht Club)に参加したとTwitterに投稿した。ボアード・エイプは同じ猿の画像のバリエーションを中心とするNFTコレクションとコミュニティだ。ジミー・ファロン氏やパリス・ヒルトン氏などのセレブリティもボアード・エイプのNFTを所有している。その投稿にはミーアンディーズのNFTである、ブランドのロゴが入った帽子をかぶって満面の笑みを浮かべる猿の画像が添付されている。同社はTwitterのプロフィール画像もこの猿の画像に変更した。
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We couldn’t keep this primate—sorry, private. #BAYC #apefollowape @BoredApeYC pic.twitter.com/2OueChlQap
— MeUndies (@MeUndies) January 27, 2022
NFT参入に対する激しい批判
しかしミーアンディーズに寄せられた反応は好意的なものではなかった。数時間のうちに、このツイートには1000件以上の反応があり、263ほどリツイートされた。そうした反応の大半は、NFTに参入した決断を強く批判するものだった。反NFTのミームや、ミーアンディーズはもう買わないと誓う投稿もあり、数千の「いいね!」がついている。
「地球に優しい素材を使用していることを自慢している会社が、見せかけの金を作り出すのに無駄なエネルギーを使うというムカつく行為をしている詐欺に加担するとは、なんとも皮肉だね」と、ある人はコメントしている。「大いに失望した。これは支持できないし、サブスクもキャンセルする :/」というコメントもあった。
このツイートの下にあるトップリプライは、ミーアンディーズのサブスクリプションをキャンセルする方法についての詳細な説明である。それに対して、元のツイートよりも4000以上も多い、7000以上の「いいね!」がついている。
An easy walk through on how to cancel your subscription to MeUndies 💕
1. Go to account, manage pair then end membership
2. Scroll all the way down, fill required sections- tell them you want nothing to do with NFTs!
3. Final page, type CONFIRM & press cancel //again// pic.twitter.com/JwSnWmycLn— MadHatterPlushArtist 💚 (@AliceUndrground) January 27, 2022
ファンからの猛反発を受けてNFT参入を中止する企業も
業界を問わず、NFTは物議をかもしている話題である。その環境への影響については気候変動活動家から批判されており、経済構造についてはアナリストからピラミッドスキーム(ねずみ講)と比較されている。
ゲーム界では、たびたび反発にあっている。Team17(チーム17)やGSCゲームワールド(GSC Game World)など、複数のゲーム会社が、ファンからの反発を受けてNFTの計画を中止した。ソーシャルプラットフォームのアートステーション(Artstation)やディスコード(Discord)も、ユーザーからの厳しい反応を受けてNFT計画を中止している。また、『DUNE/デューン 砂の惑星(英題:Dune)』の公開にあわせたプロモーションとしてNFTを計画していた映画制作プロダクションのレジェンダリー(Legendary)でも、同様に計画を取りやめている。これらの企業が自分たちのコミュニティから受けた否定的な反応は、NFTが環境に与える影響、NFTにおけるアート作品の盗用のまん延、NFTのエコシステムの略奪的な経済基盤が中心となっている。
ミーアンディーズは、このツイートが投稿されて以来、そのNFTについては沈黙を守っている。同社は、Twitterのプロフィール画像をNFTの画像から同社のロゴに戻し、最初のツイート後にこの計画を擁護したリプライをしていたが、それも削除した。ミーアンディーズは、NFTの投稿以降はTwitterになにも投稿しておらず、この記事に関してもコメントを求めたが返答はもらえなかった。
NFTとサステナビリティの問題
ミーアンディーズのNFTの発表に否定的な反応を投稿したひとりであるフリーランスのジャーナリスト、アリス・クラーク氏は、反対した理由は道徳的な信条に基づくものだという。
Eurgh. Guess Me Undies is dead to me now. I wholeheartedly recommend @tomboyx as an alternative, because screw that NFT nonsense. https://t.co/gN2nl3I8zA
— Alice Clarke (@Alicedkc) January 30, 2022
「現在の形のNFTは、あまりにも明白なペテンであり、環境に非常に大きなダメージを与えているため、それに投資する人を真剣に受け止めるのはむずかしい」と、彼女はGlossyに語った。「私はミーアンディーズが環境に関してなんらかの高い技術を持っていると理解していたので、今回の件は同社が『投資』についてリサーチしていないか、あるいはねずみ講やマルチ商法を引き合いに出されるような一時的なブームのために環境に対する道徳的な方針を放棄しようと思っているかのいずれかだ。どちらにしてもいいことではない」。
NFTと関わりながらサステナビリティを宣伝しているブランドは、ミーアンディーズだけではない。グッチ(Gucci)は、NFTを取り入れたもっとも有名なラグジュアリーブランドのひとつであり、親会社のケリング(Kering)はサステナビリティをビジネスモデルの柱としている。一方ナイキ(Nike)は、2025年までに排出量をゼロにすることを目指すキャンペーン「ムーブ・トゥ・ゼロ(Move to Zero)」を開始したわずか1年後に、デジタルファッション企業のRTFKTを買収している。
NFTに参入しないことを確約するブランドも
だが、あるブランドの損失は別のブランドのチャンスでもある。ミーアンディーズの投稿へのコメントのなかには、ライバルのアンダーウェアブランド、トムボーイX(TomboyX)に変える、というものが複数あった。トムボーイXのソーシャルアカウントは、間髪を入れずそうした数件のコメントにポジティブに反応し、同ブランドは今後もNFTに関わるつもりはないと確約した。
トムボーイXのCEOレスリー・ガラード氏は、暗号通貨とNFTが環境に与える影響はブランドのサステナビリティの目標に反していると述べた。
「ブランドは『自分たちはどんなビジネスをしているのか?』を自問すべきであり、それを通してすべての決断を下していくことに集中しつづけるべきだ」とガラード氏は語り、NFTは彼女の目標から外れていると付け加えた。「私たちのブランドの柱はFOMO(フォーモ:自分だけが取り残されてしまうことへの不安、Fear of Missing Out)ではない。サステナビリティだ。暗号は資源を大量に消費するが、私たちは自分たちが及ぼす影響やフットプリントを削減しようとしている」。
とはいえガラード氏は、同ブランドのNFT反対に関するメッセージを発信するという考えについては、直接聞かれた場合を除いて、積極的にやろうとは思っていないと話す。今回はチームのソーシャルメディアアカウントがミーアンディーズの投稿に対するコメントで定期的にタグ付けされていたため、返答する必要性を感じただけだと彼女は述べた。
「ブランドは何かを支持すべきだ」とガラード氏は言う。「そしてその何かを支持することは、必然的に何かに反対の姿勢を示すということでもある。だが私は、隠れたところで行うような雑談に巻き込まれるよりも、自分たちが地球のためによいことをやっているということに関する前向きなメッセージを共有したい」。
[原文:Huge disappointment’: Inside the customer backlash to MeUndies’ NFT announcement]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)