アドフラウド(広告詐欺)やYouTubeの広告ボイコット騒動など、今年になってプログラマティック広告についての悪いニュースがたくさん出回るようになった。にもかかわらず、より多くのパブリッシャーやマーケターがオープンエクスチェンジからPMPへと移行を進めるなかで、プログラマティックは拡大し続けると思われる。
アドフラウド(広告詐欺)やYouTubeの広告ボイコット騒動、ルビコンプロジェクト(Rubicon Project)対ガーディアン(Guardian)の訴訟など、今年になってプログラマティック広告についての悪いニュースがたくさん出回るようになった。にもかかわらず、ブランドセーフティを管理しアドフラウドを最小限にとどめるために、より多くのパブリッシャーやマーケターがオープンエクスチェンジからプライベートマーケットプレイスへと移行を進めるなかで、プログラマティックは拡大し続けると思われる。
今回は、eマーケター(eMarketer)やマグナ・グローバル(Magna Global)、フォレスター・リサーチ(Forrester Research)のデータを基に、プログラマティック広告の大きなトレンドを解説する。
主なポイント
- 先ごろのYouTubeの失態のようなブランドセーフティ問題はあるが、プログラマティック広告は増え続けるだろう。
- オープンエクスチェンジが衰退する一方で、プライベートマーケットプレイス(以下、PMP)の利用が増えている。たとえば、ESPNのプログラマティックバイイングの約95%はPMPを通じて管理されている。
- プログラマティックなチャンネルのなかでもっとも成長しているのはモバイルだ。
- プログラマティックTVは、TV広告全体の支出から見ると割合は少ないが、ローカルケーブルTVでは支出の12%を占めている。
- プログラマティックな屋外広告は、人気を集めつつあるが、まだ初期の段階だ。
- BtoCマーケターの多くは、アドフラウドのせいでプログラマティックの効果についてはわからないと思っている。
主な数字
- 330億ドル(約3兆7000億円):プログラマティックなディスプレイ広告の支出が2017年は330億ドル(約3兆7000億円)に達し、2019年には460億ドル(約5兆2000億円)にも増加する。eマーケターの概算。
- 240億ドル(約2兆7000億円):米国では、プログラマティックなディスプレイ広告の支出総額326億ドル(約3兆6600億円)の74%以上がPMPのようなプライベート環境で使われている。eマーケター調べ。
- 6億ドル(約673億円):アドレサブルTV(プログラマティックTVをターゲット化したもの)で2017年に使われるお金の額。2016年は4億5000万ドル(約505億円)だった。マグナ・グローバル調べ。
- 85%:米国では、モバイルディスプレイ広告10個のうち8個はプログラマティックに購入されている。この割合は2019年には85%にまで増加するだろう。eマーケター調べ。
- 2%:デジタル屋外広告費20億ドル(約2245億円)のうち、プログラマティックの割合は、いまのところわずかなものだ。マグナ・グローバル調べ。
- 109億ドル(約1兆2238億円):2016年~2021年にかけて、低品質なディスプレイ広告に浪費される費用。フォレスター・リサーチの概算。
エージェンシーの見方
2017年4月、自社の広告が不適切なコンテンツと一緒に表示されたことを理由に、チェース銀行(Chase Bank)など広告費を気前よく使う大手企業の多くが、YouTubeから広告を引き上げるという出来事があった(ネスレ[Nestlé]、ベライゾン[Verizon]、ゼネラル・モーターズ[General Motors]のように、その後、戻ってきたブランドもいくつかある)。エージェンシー、RPAのデジタルマーケティング担当ディレクター、ニコラ・ペリーゴ氏によると、同氏のチームはこの危機の際にクライアントと連絡を取り、騒動の本当の影響について話し合ったが、反応はさまざまだったという。さらなる管理機能が発表されるまで、このプラットフォームでの広告掲載は中止したいというクライアントもいれば、すぐに機能が強化されることはわかっているので、そのまま掲載を続けることを選択したクライアントもいた。どちらにしても、YouTubeの広告スキャンダルは、プログラマティックバイイングに一層の透明性をもたらすきっかけになるだろうとペリーゴ氏はいう。
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「この巨大(テクノロジー)企業はいままで、『ウォールドガーデン(閉ざされた庭)』の内部をサードパーティーが計測するのを拒んできたが、今回の出来事で、そうしたやり方が自分たちにとっての最善の利益にはならないかもしれず、売上に大きな影響を及ぼしうるということが明らかになった」とペリーゴ氏は述べた。
PMPに対して、ホワイトリストを利用したオープンエクスチェンジの方がアプローチとしては優れているとペリーゴ氏は考えている。同氏のチームでPMPとホワイトリストを比較するテストを行ったところ、後者の方が安上がりで、PMPに関する大きな課題である規模の問題を広告業者が回避できることがあることもわかった。
エージェンシー、ノーブル・ピープル(Noble People)のパフォーマンス担当ディレクター、ポール・バルカン氏も同じ考えで、PMPはいわれているほど優れたものではなく、ホワイトリストの方がコスト効率が良いという。バルカン氏は「ホワイトリストによるアプローチでPMPと同じ目標を、ずっと安価に達成できる」と述べた。
アナリストの見方
広告主は、短期的にはブランドセーフティに対する懸念からYouTubeのようなプラットフォームに広告を出さなくなるかもしれないが、長い目で見れば、購入に関連するデータを活用したいのか、あるいは単にプロセスを自動化して効率を上げたいだけなのかに関係なく、プログラマティックへの支出を続けるだろうと、eマーケターの主席アナリストであるローレン・フィッシャー氏はいう。
同氏は次のように述べている。「プログラマティックは、ブランドのメディアバイイング戦略の大きな要素になった。ブランドはいま、一部のプラットフォームから撤退しているが、プライベートマーケットプレイスのようなほかの場所で、プログラマティックに投資を続けている。オープンエクスチェンジだけがプログラマティックではなく、プライベートバイイングやFacebookからのソーシャルメディアバイイングもプログラマティックだということを覚えておく必要がある」。
フィッシャー氏はさらに、ターナー(Turner)やNBCユニバーサル(NBCUniversal)のような大手メディア企業は大々的に宣伝しているが、プログラマティックTVはまだ初期段階にあると考えている。「リニアTV(従来のTV)はデジタル広告には向いていない。だから、市場がアドレサブルTV(プログラマティックTVのこと)にシフトするにはもう少し時間がかかるだろう」と、フィッシャー氏は述べた。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)
Image from 米DIGIDAY