ソーシャルメディア上で大勢のフォロワーを抱えるインフルエンサーを起用し、特定ブランドの売り込みを依頼する「インフルエンサーマーケティング」。その効果には少なからぬ疑問が投げかけられているにもかかわらず、依然としてマーケターには人気だ。米国における現況を5つのグラフとともに説明する。
ソーシャルメディア上で大勢のフォロワーを抱えるインフルエンサーを起用し、特定ブランドの売り込みを依頼する「インフルエンサーマーケティング」。その効果には少なからぬ疑問が投げかけられているにもかかわらず、依然としてマーケターには人気だ。
数社が実施した調査によると、対象企業の過半数が今年、インフルエンサーマーケティングを実施している。しかも、2017年には、さらに拡大させる見込みだという。広告主の要望に応える形で、同分野のテックベンダーも登場。このマーケティング戦略において、アサインの簡便化や効果測定などをサポートしている。
だが、これほど注目を集めているにもかかわらず、2016年にインフルエンサーマーケティング分野へ新たに投入された資金は少ない。本記事では、米国におけるインフルエンサーマーケティングの現況を5つのグラフとともに説明する。
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大半のマーケターは実施済み
ユーザー生成コンテンツ(UGC)マーケティング企業のシュート(Chute)が調査したマーケター200人強のうち、現在66%がインフルエンサーマーケティングを実施した経験があるという。その目的として、マーケターの80%は、「新規オーディエンスへのリーチ」と回答。また、逆に「ニッチなオーディエンスへのリーチ」と答えたマーケターも70%存在する。
「しばしばインフルエンサーには、子育てや旅行など、得意とする分野やトピックがある。したがって、マーケターは彼らとコラボすることで、こうした特定分野の話題に関心をもつオーディエンスにリーチできる」と、シュートでコンテンツ部門シニアマネージャーを務めるモニカ・ワトソン氏は語る。「たとえば我々が見てきたところでは、高級車ブランドは、インスタグラムでファッションに興味を示すオーディエンスに大人気だ」。
ブランドがインフルエンサーを起用する動機としては、ほかに、ソーシャルプラットフォームの絶えず変化する「アルゴリズムの影響を最小限に抑えるため」や、「新製品にからめて早期にバズを生み出すため」などがある。
インフルエンサーマーケティング企業、リンキア(Linqia)による別の調査では、対象のマーケター170人が今年、インフルエンサーマーケティングを活用したキャンペーン1件につき、通常2万5000~5万ドル(約300万〜600万円)を投じたことを示している。そのうちの48%が来年、インフルエンサーマーケティングに割り当てる予算を増額する予定であり、この数字はプログラム1件あたり、5万~10万ドル(約600万〜1200万円)になるという。
人気1位はインスタグラム
先述のシュートの調査によると、各ブランドが注力するプラットフォームはそれぞれ異なる。だが、企業がインフルエンサーとコラボする際の定番プラットフォームはインスタグラムだ。2番手以降は、Twitter、Facebook、YouTubeの順となる。
こうした人気の理由は、まず巨大なユーザーベースを構築していること。さらに、マーケターがROI(投資利益率)を見極めるのに必要な測定基準を、より多く提供していることが挙げられる。たとえば、Snapchat(スナップチャット)と比べてインスタグラムは、ブランドにより配慮していると、ワトソン氏は説明した。
「また、ほかのプラットフォームと同じ方法で、Snapchatではオーディエンスを築くことが難しい」と、ワトソン氏は付け加える。「Snapchatには、フォローすべきクリエイターを発見するための現実的な手段がない。だから多くの場合、Snapchatで人気のインフルエンサーたちは、インスタグラムやYouTubeなど、ほかのプラットフォームにも多くのフォロワーを抱えていることがある」。
効果測定は売上ではない
指標に関して、シュートの統計データによると、マーケターの70%以上が、インフルエンサーとの提携の成果を直接的な売上高で測定していない。その代わり、エンゲージメント(インスタグラムのいいね!やコメント数、Snapchatのスクリーンショット数など)やリーチ、視聴回数などに基づいて測定しているという。
これはもちろん、直接的な売上がマーケターにとって重要ではないということを意味するわけではない。だが、消費者がインフルエンサーのアフィリエイトコードやリンクを経由して購入するケースをのぞき、売上の追跡は困難だろうと、ワトソン氏は説明する。
「加えて、多くのブランドがインフルエンサーマーケティングを長期的な視野でとらえている」と、ワトソン氏。「高級品や旅行を扱うブランドなら、こうした提携は往々にして、認知度の向上やブランドロイヤリティの構築を目的としている」。
報酬モデルはさまざま
インフルエンサーが報酬を受け取る方法についての業界基準はない。リンキアの調査では、対象のマーケター170人のうち、57%が投稿や動画の数に基づいて「ソーシャルスター」に支払いを行ったことがあり、43%がエンゲージ単価を、40%がクリック単価をそれぞれ試したことがあると回答。また38%が、無料の製品やサービスで報酬を支払ったことがあるという。
これに対して、シュートが調査したソーシャルスター123人のうち、49%が金銭による支払いを受けており、47%が無料の製品やサービスで報酬を得ている。
ベンダー投資はまだ少ない
インフルエンサーマーケティングが人気を博している反面、この分野におけるベンダーへの出資という意味では、2016年はパッとしない。調査会社ライトハウス3(Lighthouse 3)によると、今年、資金提供を新たに受けたことを公表しているアメリカのベンダーは、タップインフルエンス(TapInfluence)とインフルエンシャル(Influential)の2社だけだという。
インフルエンサーマーケティングはつまるところ、本質的に人間関係のうえに成り立つものであり、プログラマティックなどの高度な技術を必要としない。そのため、ベンチャーキャピタル(VC)の説得には困難が伴うこともある。ライトハウス3のCEOを務めるミア・ダンド氏も、VCによる今年の資金提供は昨年に比べると全体的に少なく、インフルエンサー技術の領域は、目下のところ「組織化されていない混乱状態」にあると考えている。
「喧伝と事実を区別するのは難しく、そのせいで、VCは手堅い資金提供の機会を見つけにくくなっている」と、ダンド氏は語った。
Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)