デジタルネイティブの植物店であるザ・シル(The Sill)は、さらに規模を拡大し、今年中に黒字化を達成するため、クラウドファンディングという自社の出発点に立ち返り、9月にウィーファンダー(Wefunder)キャンペーンを実施している。
すでに当初のファンディング目標の5万ドル(約735万円)を超え、現在は数十万ドルの資金調達をめざしている。これまでに256人の投資家が参加し、D2C企業である同社のために12万7512ドル(約1870万円)を集めた。
ザ・シルはベンチャーの支援を受けた最新の消費者ブランドで、厳しいベンチャーキャピタル市場のなかでランウェイを広げるため、顧客やファンの支援に頼ってきた。ピッチブック(PitchBook)によると、2023年の第2四半期に新興企業が調達したベンチャーキャピタルの総額は398億ドル(約5兆8500億円)と、前年同期比で48%減少した。たとえは、クラウドファンディングプラットフォームのリパブリック(Republic)では、代替肉および代替シーフードの新興企業のアクア(Akua)や、高級キャンディーブランドのシュガーフィナ(Sugarfina)がクラウドファンディングキャンペーンを行っている。ザ・シルはキャンペーンのあいだに、顧客基盤を活用し、必要な資金を調達し、収益を拡大するために必要な現金を調達し、収益性を達成したいと考えている。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
観葉植物のD2Cブランドであるザ・シル(The Sill)は、さらに規模を拡大し、今年中に黒字化を達成するため、クラウドファンディングという自社の出発点に立ち返り、9月にウィーファンダー(Wefunder)キャンペーンを実施している。
すでに当初のファンディング目標の5万ドル(約735万円)を超え、現在は数十万ドルの資金調達をめざしている。これまでに256人の投資家が参加し、D2C企業である同社のために12万7512ドル(約1870万円)を集めた。
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ザ・シルはベンチャーの支援を受けた最新の消費者ブランドで、厳しいベンチャーキャピタル市場のなかでランウェイを広げるため、顧客やファンの支援に頼ってきた。ピッチブック(PitchBook)によると、2023年の第2四半期に新興企業が調達したベンチャーキャピタルの総額は398億ドル(約5兆8500億円)と、前年同期比で48%減少した。たとえは、クラウドファンディングプラットフォームのリパブリック(Republic)では、代替肉および代替シーフードの新興企業のアクア(Akua)や、高級キャンディーブランドのシュガーフィナ(Sugarfina)がクラウドファンディングキャンペーンを行っている。ザ・シルはキャンペーンのあいだに、顧客基盤を活用し、必要な資金を調達し、収益を拡大するために必要な現金を調達し、収益性を達成したいと考えている。
原点に立ち返る
ザ・シルの創設者でCEOを務めるイライザ・ブランク氏は、2012年にクラウドファンディングサイトのキックスターター(Kickstarter)で193人の支援者から集めた1万2000ドル(約176万円)で会社を創設したため、すでにクラウドファンディングを熟知している。「この目標に到達し、それを上回ったことが、私にとってこのコンセプトを検証するための最初の通過点だった」と同氏は米モダンリテールに語った。この10年間で同社は2000万ドル(約29億4000万円)以上を調達した。最後に公開されたラウンドは、2018年に行われた500万ドル(約7億3500万円)のシリーズAだった。ザ・シルのウィーファンダーにすぐに関心が集まったことから、黒字化に取り組む過程で、同社の顧客基盤に「再び活力が生まれた」とブランク氏は述べる。
ウィーファンダーは最初、少数の顧客に対して8月15日に開始され、9月初旬からから10月31日まで公式に行われる。同社によると、ザ・シルは限定キャンペーンを開始してから最初の3時間で5万ドル(約735万円)の目標を超えた。「このキャンペーンで50万ドル(約7350万円)は集められると思っている。短く、タイトなキャンペーンにしたい」とブランク氏は述べる。同社のウィーファンダーの上限は120万ドル(約1億7600万円)だ。ザ・シル自身のデジタルフォロワーや顧客にもキャンペーンを宣伝するが、新たに投資してくれる人々の関心も集めたいと同氏は語った。
ブランク氏は、NFLチームのグリーンベイパッカーズ(Green Bay Packers)や、人気番組「テッド・ラッソ(Ted Lasso)」の最新シーズンで描かれた欧州のサッカークラブなど、ファンがスポーツチームを所有するモデルから部分的にヒントを得て、顧客に対して会社の一部を保有するよう呼びかけた。
しかし、「これには明らかにマクロ環境が関係している」と同氏は付け加える。
「私は今年資金を調達しようとしなかった。同業者から、状況が非常に厳しいと聞いていたからだ」とブランク氏は語る。
コミュニティ構築の一助に
同社が10年前にD2C方式でブランドを立ち上げて以来、「目標も変化した」のだという。今日では、ベンチャーキャピタルを受けるような規模の早期段階にある新興企業には、期待されるものも異なっていると同氏は述べる。
特にザ・シルの場合、クラウドファンディングは、ワークショップや、オンラインでの植物のケアのためのリソースと同様に、コミュニティを作り上げる取り組みの延長でもあるとブランク氏は述べている。
ザ・シルは2016年に年間収益100万ドル(約1億4700万円)を超え、生涯収益は7000万ドル(約103億円)に達している。ウィーファンダーキャンペーンの一環として、過去数年間の収益を開示したが、純収益は2021年に1650万ドル(約24億3000万円)、2022年には1300万ドル(約19億1000万円)だった。また、2022年のEBITDA(利払い、税引き、減価償却前の利益)がマイナス490万ドル(約7億2000万円)だった。それに対し、今年の収益は昨年と横ばいの1300万ドル(約19億1000万円)、EBITDAは15万ドル(約2205万円)になると予測されている。
しかし、これは保証されたものではないとザ・シルは述べる。「我々は透明性を維持している。昨年利益を上げられなかったことにショックを受ける人がいないことを願っている」とクラウドファンディングの実行中に公開した指標について同氏は述べている。「しかし、保証はできないものの、今年は収支がプラスになると予想している」。
クラウドファンディングの熱狂を生み出しているもの
コンサルティング企業ブリッシュ(Bullish)のマネージングパートナーのマイケル・ドゥダ氏は、クラウドファンディングは「本質的に金利のない資金調達」であるため、小規模な新興企業にとって理にかなっていると語る。
「多くの起業家は、ベンチャーキャピタルの投資に向かないかもかしれないビジネスを抱えている」とドゥダ氏は説明する。「健全な成長とは何かを定義する基準や、投資家が本当に長期的投資に怖気づいていること、そして金利上昇や与信が厳しくなっていることにより、クラウドファンディングが不可欠になった」。
ウイスキーブランドのオーク&エデン(Oak & Eden)も、クラウドファンディングキャンペーンを進めている。これまでの5年間で、エンジェル投資家、友人、家族からの資金調達で15万ドル(約2200万円)を集めてきた。
オーク&エデンの共同創設者で最高ブランド責任者を務めるブラッド・ナサリー氏は、クラウドファンディングキャンペーンには、より多くの資金を集められるほかに、コミュニティからのより積極的な関与が得られるという利点があると語る。
「ウィーファンダーで最小100ドル(約1万4700円)の投資が行えるようになったことで、コミュニティがより熱心に参加してくれるようになった」とナサリー氏は説明する。このコミュニティ支援のラウンドでは、顧客が自分のウイスキーを同ブランドと作ることもできる。このキャンペーンは9月初旬に開始され、目標の123万5000ドル(約1億8200万円)のうち5万9720万ドル(約878万円)を集めた。「キャンペーンがはじまってからまだ1週間だが、追い風が吹いていることをすでに感じている」と同氏は述べた。
顧客がオーナーになる
多くの新興企業がクラウドファンディングキャンペーンを行うなかで、キャンペーンが成功するため重要なのは「会社が最高のストーリーを語り、到達可能なキャンペーンの目標を設定すること」だとドゥダ氏は述べている。
これらの要素は、将来的にベンチャーキャピタリストから資金を調達するためにも重要だ。「ベンチャーキャピタリストから見て、会社が調達した金額が目標に届かなければ、または目標の110%に届かないことでも、99.9%の確率で将来の投資を検討しないだろう」とドゥダ氏は述べている。
全体として、ザ・シルの新しいクラウドファンディングキャンペーンに基づき、成長の助けとしてベンチャーキャピタルに頼り続けるのではなく、自己充足的なビジネスへと転換するために何が必要かを考えるようになったとブランク氏は述べる。「そして、当社を支えるためにもっともふさわしいのは、当社を愛してくれている顧客だ。顧客がオーナーになれば、ビジネスをさらに永続させる助けになるのは間違いない」と同氏は述べている。
[原文:The Sill launches a new crowdfunding campaign to extend runway]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via The Sill