SupershipとMomentumは10月10日、『アドベリフィケーション』に関するマーケターの意識調査の結果について発表した。それによると、なんと日本国内上場企業のマーケターの7~8割は、「アドフラウド」や「ブランドセーフティ」といったキーワードについて、用語も意味も知らないという。
日本のマーケターは、このままで良いのだろうか。
アドプラットフォーム事業者Supership(スーパーシップ)とアドベリフィケーション企業Momentum(モメンタム)は10月10日、「アドベリフィケーション」をテーマとしたメディアラウンドテーブルを開催。この会見において両社は、Supershipと電通が共同で展開する「電通PMP」でブランドセーフティソリューションツール「Black Swan(ブラックスワン)」およびアドフラウド対策ツール「Black Heron(ブラックヘロン)」の無償提供を発表した。
同時にSupershipとMomentumは、両社で実施した『アドベリフィケーション』に関するマーケターの意識調査の結果についても報告。それによると、なんと日本国内上場企業のマーケターの7~8割は、「アドフラウド」や「ブランドセーフティ」といったキーワードについて、用語も意味も知らないという。
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意識の低さが浮き彫りに
SupershipとMomentumが共同で、10月2~3日に実施した本調査。対象者は、日本国内上場企業のマーケター100人となる。世界的にインターネット広告の信頼性が問われるいま、こうした調査結果は「ガラパゴス化」しがちな国の良くない特性を浮き彫りにしているようだ。
また、同調査では、「問題を知っていながら対策を取ってこなかった」というマーケターが挙げた理由も提示。主に社内意識の低さ(「社内で問題になったことがなかった」35.7%、「社内の理解が得られない」7.1%)や、リソース不足(「担当するメンバーなどのリソースがない」35.7%、「予算がない」21.4%)が妨げになっているという。つまり、たとえマーケターが取り組みの必要を感じていたとしても、社内とのあいだに大きな温度差があり、導入に踏み切ることが難しい状況にあるのだ。
「アドフラウド」「ブランドセーフティ」「ビューアビリティ」「アドベリフィケーション」といった用語は、決してここ数カ月間ではじめて登場したわけではない。世界的にそうした課題・トピックについての注目は、むしろ高まるばかりだ。しかし、日本国内における広告主の現状は、かようなものなのである。
奇しくも同時期にDIGIDAYでは、米ピクサレート社による、日本のアドフラウド率は81%という衝撃の調査結果を紹介したばかりだ。この記事に対して、81%という大きすぎる数字に対する疑いの声は確かに多い。その一方、「数字はともかくとして、日本がぶっちぎり多いのは残念ながら事実」という声も少なからず散見できた。
世界全体に広がる被害
悪意のあるプログラムなどで広告インプレッションを不正に増加させ、広告費をだまし取る行為「アドフラウド」の被害は、世界全体で拡大の一途をたどっている。調査会社フォレスター・リサーチ(Forrester Research)によると、2016年の被害額は推定74億ドル(約8300億円)。アドルークス(Adloox)は、広告業界が対策を打たない場合、2017年は164億ドル(約1兆8000億円)に達するという。さらに世界広告主連盟(World Federation of Advertisers)のレポートでは、2025年時点で500億ドル(5兆6000万円)を超えるとまで予想されている。
これに加えて、広告がアダルトサイトなどの不適切な場所に表示されていないかチェックすることで、「ブランドセーフティ」(ブランドイメージの安全性)を確保する必要性も叫ばれている。3月、英ガーディアン(The Guardian)の広告がテロや差別主義を煽るYouTube動画コンテンツに表示された事件が引き金となり、多数の広告主がイメージ毀損を恐れてYouTubeへの広告出稿を次々に停止した。
もちろん、優良メディアのみが参画するプライベートマーケットプレイス(PMP)では、アドフラウドやブランドイメージ毀損に見舞われる確率は、オープンマーケットに比べてずっと低いと考えられる。たとえばグループ・エム(GroupM)のレポートによると、イタリアではプログラマティック広告枠購入の90%がPMPで行われており、このためアドフラウドの割合は1%にとどまっているという。
Written by 原口昇平
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