いまや融合する「 ラグジュアリー 」と「ストリート」:ハイスノバイエティが読み解く、高級ファッションの最新事情

2005年創刊のハイスノバイエティ(Highsnobiety)はストリートファッションを専門に扱うオンラインメディアで、「メインストリーム」とは一線を画する「斬新さとクールさ」を消費者たちに訴求してきた。いまやこれらふたつのカテゴリーは同じひとつのものだと共同創刊者のジェフ・カルヴァーホ氏は指摘する。スケートボードとパンクロックのコミュニティから生まれるストリートウェアと文化的影響がいまや高級ファッションメーカーと融合しているというのである。

人気の高い高級ブランドはすでにストリートウェアから多くの影響を受けているが、この領域の老舗企業のなかには、このふたつを自然に融合させて次世代の消費者にアピールする方法をいまだ模索中のものも少なくない。

今年に入ってからハイスノバイエティはボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)と共同調査をおこなっており、その結果、2026年までにミレニアル世代とZ世代が高級品市場の60%以上を占めるようになり、この人々のおかげで高級品の売上高もいまより約5000億ドル(約53兆円)増えることが示された。

米DIGIDAYが毎週掲載する「ザ・ニューノーマル(The New Normal)」シリーズの最新話で、カルヴァーホ氏は老舗の高級ブランドが一部の人しか手が届かないというエクスクルーシブ性よりも、誰もが手を伸ばせるアクセシビリティを謳うなら、マーケティングや事業運営の体制をそれなりに変革する必要があると論じている。

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「話題性も熱狂もけっこうだが、長期的に大きな変化は生まない」

カルヴァーホ氏によると、ハイスノバイエティが取材したり協力したりする高級ブランドの多くはいわゆるドロップモデルという手法で限定商品を短期的に展開し、多くの話題と熱狂を作り出す以外に消費者にリーチする方法はないと考えている。

「全面的には同意しかねる意見だ」とカルヴァーホ氏は言う。「話題性も熱狂もほんの一瞬だが、私たちがやろうとしているのはムーブメントの形成だ。ブランドは一発屋でない。私たちがリーチする消費者層としっかり対話する必要がある」。

ドロップモデルはもともとシーズンごとに消費者を店舗に呼び戻すための仕組みだった。だが現在、カルヴァーホ氏が言うには、単発の施策として使われることが多くなり、新しい消費者にブランドを紹介する目的で使われることもあるにせよ、たいていは目先の収入を稼ぎ出す手段になっているという。いまブランドに必要なのは消費者に自分たちの商品を買い続けてもらうためのより一貫した方法を模索することだとカルヴァーホ氏は語った。

同氏の言葉を借りるなら、「ドロップ(モデル)は精力的にフォローアップしなければ、それほど効果的ではない」。

「Z世代の買い物客にも均等な機会を」

カルヴァーホ氏によると、ハイスノバイエティが実施した直近の調査を見るかぎり、若い世代の買い物客は前の世代のように高級品ならではの近寄りがたさやエクスクルーシブ感を求めていない。彼らが求めるのはむしろアクセシビリティ、つまり近づきやすさだ。そしてほとんどの場合、若いオーディエンスの支持を得ることに成功しているデザイナーブランドは、もはや一見客に扉を閉ざすようなことはしない。

「誰もが手を伸ばせるからと言って、誰もが商品を購入できるだけの資力を持っているわけではない。誰にでも扉は開かれているということだ」と、カルヴァーホ氏は説明する。「そして将来、この16歳とか17歳の若者が自分たちのブランドでお金を使う顧客になってくれることを願うばかりだ」。

当面、若い買い物客たちの入店を許し、商品を着たり持ったりしながらのSNS向けの写真撮影を許すなら、それは少なくとも金のかからないマーケティングにはなるだろう。

なぜグッチは成功しているのか?

カルヴァーホ氏によると、高級ファッションブランドのグッチ(Gucci)はここ数年、中・上流階級の白人女性という従来の顧客層だけでなく、もっと若く多様な消費者からも支持を集めている。おかげで顧客の平均年齢はわずか2年で10歳以上の若返りを遂げたという。

この新しいオーディエンスに食い込むための当初の戦略は、普通に着られてしかもブランド自慢ができるステートメントピース、たとえば「グッチのベルト」とか「グッチのローファー」のような商品を財布に優しい価格で打ち出すことだった。

だがカルヴァーホ氏の話によると、最近はグッチのトップデザイナーのひとりであるアレッサンドロ・ミケーレ氏がストリートウェアやスケートボードといった自身のルーツに立ち返り、そこからグッチが若い世代にアピールするためのインスピレーションを得ているという。

「ハイエンドのファッションブランドに必要なのは、若い世代を相手に、彼らのルールに従って語りかけることのできる人材を組織のなかに養うことだ」とカルヴァーホ氏は語った。

スニーカーと生活雑貨

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ハイスノバイエティの調査では、この5カ月かそこらの間に、消費者の買い物傾向が必需品ではない商品から家具や生活雑貨へとシフトしていることも分かった。誰もが身の回りに目を向けて、自分たち自身がドレスアップするよりも、自分たちの住まいをドレスアップするほうがよほど理に適うと考えるようになった結果だろう。

「スニーカーや服をほしがるのと同じ感覚で、家具や生活雑貨をほしがる」とカルヴァーホ氏は語る。「いまやコーヒーテーブルが欲しいものリストにのる時世だ」。

新しい高級品

ほかのほとんどの業界と同様に、高級品市場もコロナ禍による不況の煽りを受けている。だがカルヴァーホ氏によると、ほかの業界とは異なり老舗の高級ブランドはこの一時期をしのぐのに十分な多額の現金を持っている。不況のさなかで、生き残りのために過剰に積極的な手を打つ必要はない。

だが不況が過ぎ去れば、新しい消費者が現れる。そのとき彼ら高級ブランドが若い消費者にどうコミュニケートするかはその将来的な成功にとって極めて重要であると、カルヴァーホ氏は指摘する。

なぜなら、若い買い物客は伝統にも年月にも頓着しないからだ。たとえば、オフホワイト(Off-White)とフィアオブゴッド(Fear of God)は誕生から10年足らずのD2Cブランドだが、どちらもすでにデジタルネイティブな若いショッパーたちから絶大な支持を集めている。

「高級品が新たな定義を得たことで、新興のブランドもこの市場に参入し、踏みとどまることができるようになった」とカルヴァーホ氏は言う。古参のブランドは変革を迫られている。さもなくば、若いブランドに取って代わられるだろう。

ハイスノバイエティのジェフ・カルヴァーホ氏が登壇した、「ザ・ニュー・ノーマル」の動画は下記リンク先にて閲覧できる。

[原文:‘The new definition of luxury’: Highsnobiety unpacks how the landscape of high-end fashion has tilted toward accessibility

KAYLEIGH BARBER(翻訳:英じゅんこ、編集:分島 翔平)