先日、バルマンとバービーがコラボーレーションしてあるコレクションを発表したが、これにはNFT3点と複数の物理的製品が含まれていた。ラグジュアリーファッションブランドがメタバースで手がけた玩具は、コレクターズアイテムの未来を示しているのだろうか。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
先日、バルマン(Balmain)とバービー(Barbie)がコラボーレーションしてあるコレクションを発表したが、これにはNFT3点と複数の物理的製品が含まれていた。バービーの親会社であるマテル(Mattel)は、これまでにグッチ(Gucci)と協働して、(ミニカーの)ホットウィール(Hot Wheels)の物理的な限定版セットを発表したことがある。ラグジュアリーファッションブランドがメタバースで手がけた玩具は、コレクターズアイテムの未来を示しているのだろうか。
玩具メーカーとコラボしてきたファッション業界
ファッション関連玩具の人気は今に始まったものではない。たとえば、日本のブランド、メディコム(Medicom)が2001年にローンチしたコレクターズアイテムのベアブリック(Bearbrick)玩具は、2014年に10人のデザイナーとコラボした。その顔ぶれは、ケンゾー(Kenzo)、ランバン(Lanvin)、カルヴェン(Carven)、アンダーカバー(Undercover)、マルニ(Marni)、ラフ・シモンズ(Raf Simons)、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、トムブラウン(ThomBrowne)、ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)。このコレクターズアイテムは、現在、ストックX(Stock X)のようなプラットフォームで購入できるが、2500ドル(約28万円)にもなっている。ブランドがNFT空間に慣れてくるにつれて、物理的なコレクター分野と、メタバース用に制作された1度限りのデジタルアートワークとの類似点も見えてきている。
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「文化をつなげることは、マテルの戦略の重要な構成要素だ。バービーはファッションとポップカルチャーにおいて世界的に認識されているアイコンであり、ブランドとアートとコレクター収集価値の間の興味深い接点になっている」と述べているのは、マテルの社長兼最高経営責任者、リチャード・ディクソン氏だ。「バービーとバルマンのコラボレーションを通じて、我々はどちらのブランドにもある革新的なレガシーの力を活用して、両ブランドが提供するアートやファッションや文化をファン全員にユニークな方法で体験してもらいたい」。
マテル x バルマンのコレクションの詳細
バルマンは、1月前半、バービーサイズの物理的なバルマンの服とアクセサリーの限定コレクション、レディースのプレタポルテとアクセサリー50点から成るコレクション、バービーとケンのオリジナルNFT3点について発表。NFTは、1月第2週に、プレミアムNFTマーケットプレイスのミント(Mint)NFTで販売された。コレクター向けプラットフォームであるマテルクリエーションズ(Mattel Creations)の玩具は、ベアブリックがコラボデザイナーの作品を展示したのと同様に、外部アーティストが作品を展示できる空白の壁のように機能している。
レトロ感あふれるプレタポルテコレクションは、バルマンのブランドアイデンティティを反映し、バービーのクラシックなデザインが取り入れられている。90年代のパッケージからのバービーのロゴとパントンの「バービーピンク」カラーを使って、バルマンのシグネチャーであるマリニエールとラビリンスの模様がバルマンのオーバーサイズケープ、バッグやキモノスーツに用いられている。50点から成るバービー&バルマンのプレタポルテ・アクセサリーラインは、バルマンの店舗、balmain.com、マテルクリエーションズのオンラインストア、ダラスのノースパークモール内のニーマン・マーカス(Neiman Marcus)のポップアップストアで1月13日から購入できるようになっている。
バルマンのクリエイティブディレクター、オリヴィエ・ルスタン氏はプレスリリースでこう述べている。「このコレクションは恣意的な性別の制限を拒んで、ほぼ100%ユニセックス。現代のバービーは、我々を抑えつけるものはもうなにもないことを明らかにしている」。バービー人形のレガシー面を考えると、今回のコラボレーションが1度限りで終わるものではなく、歴史を持つ玩具はデジタル領域へと推し進められることだろう。
NFT空間におけるパイオニア、マテルが示す可能性
マテルは、デジタルコレクターズアイテムに対する機会を明らかに理解している。「このような実績あるパートナーシップを通じて、玩具はファッションブランドにとってほかのファッションアクセサリーと同様に重要なものとなり、まったく新しい未来のオーディエンスとビジネスを刺激するだろう」と、ディクソン氏は信じている。マテルは、昨年以来さまざまなブランドと提携してNFTコレクション3点をローンチしている、この分野のパイオニアである。
ホットウィールNFTガレージシリーズからのオリジナルNFT3点から成る、マテルの最初のNFTコレクションは、2021年6月に発表された。その次には、ゲイリー・ヴェイナチャック氏が制作したヴィーフレンズ(VeeFriends)とウノ(Uno)カードとのNFTコラボレーションがあった。ほかの玩具メーカーがまだNFT空間に進出していないのは意外である。マテルは、自社製品の商業的成功と、拡大しつつあるNFT制作者と購入者のコミュニティとの間のつながりを確立した最初の企業だ。
ディクソン氏は続ける。「コレクター空間はイノベーションに対して準備が整っていると我々は考えており、ファッションと玩具を組み合わせたものはまったく新しいビジネスになるだろう。パンデミックによって、年齢にかかわらず人には『遊ぶ』必要性があることが示されたし、それがなくなることはないだろう。マテルの複数のブランドへの情熱は年齢には関係ない。その点が、大人のファンのために楽しくて刷新した方法で当社ブランドを提供するための助走路を与えてくれる」。ラグジュアリーファッションブランドがNFT分野にトライするとき、玩具のコレクターズアイテムは、複数の業界のレガシーブランドが参加して新しい関心と注目を得るための一手段になる可能性がある。
ホットウィールNFTコレクションとバルマン&バービーNFTコレクションは、どちらもプルーフ・オブ・ステーク・ブロックチェーンシステムでオークションにかけられたため、エネルギー消費量は少なかった。バルマン&バービーコレクションは、かつてクリプトキティ(Crypto Kitties)とNBA NFTをホストしたフロウ(Flow)を使用。持続可能性にフォーカスしてきたファッション業界の中には、エネルギー集約型で知られるNFTへの進出を躊躇している企業もある。業界リーダーらがNFTやブロックチェーンプロジェクトのプルーフ・オブ・ステークのメカニズムにもっと注目するようになれば、ブランドはNFT空間への関与をためらわなくなるだろう。
[原文:The future of fashion collectibles, following the Balmain x Barbie NFT]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)