若い消費者をターゲットにしたブルネロ・クチネリの新しいカプセル・コレクションは、静かなラグジュアリーブランドの未来を垣間見せている。 カナダの高級百貨店ホルト・レンフルー(Holt Renfrew)で11月1日に発表され […]
若い消費者をターゲットにしたブルネロ・クチネリの新しいカプセル・コレクションは、静かなラグジュアリーブランドの未来を垣間見せている。
カナダの高級百貨店ホルト・レンフルー(Holt Renfrew)で11月1日に発表された11アイテムからなるウィメンズファッションコレクションは、創業者ブルネロ・クチネリ氏の娘カロリーナ・クチネリ氏とホルト・レンフルーのファッションディレクター、ジョセフ・タン氏による共同制作である。タン氏はクチネリのアイテムをコンバース(Converse)のスニーカーやリーバイス(Levi’s)のジーンズと組み合わせたカロリーナ・クチネリ氏のパーソナルスタイルにインスパイアされ、ホルト・レンフルーの2023年秋のキャンペーン展開中に今回のアイデアをブランドに持ちかけた。2020年以降、カロリーナ・クチネリ氏は父親とともにブルネロ・クチネリの共同クリエイティブディレクター兼共同プレジデントを務めており、妹のカミッラ・クチネリ氏はウィメンズのデザインを共同指揮している。
「未来の顧客のための入り口」となるコレクション
「このキャンペーンでは、『ファッションの未来とは何か?』を問いたかった」とタン氏は語る。「ホルト・レンフルーと同じようにブルネロ・クチネリも伝統に根ざしているが、つねに前を向き、10年後、20年後の顧客のことを考えている。そこで、我々は『クチネリの未来とは何か?』という問いからスタートした」。
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その結果、カロリーナ・クチネリ氏とタン氏が、数年後に「ホルト・レンフルーにおけるクチネリの顧客がどのようになるかという方向性を示すリーダー」となることを可能にするコラボレーションにつながったという。カロリーナ・クチネリ氏とタン氏はともに30代前半である。
シアリングのバイカージャケット、リブ編みのタンクトップ、ニットビーニーなど、800ドル(約12万円)から1万5000ドル(約225万円)のアイテムは、カロリーナ・クチネリ氏のワードローブがベースになっている。コレクションを宣伝するホルト・レンフルーの動画でも強調されているように、彼女にはエッジが効いている。あるシーンで彼女は、背中に「私の中の反抗的な少女は決して死なない(The rebel girl in me will never die)」 と描かれた、何年も前のブルネロ・クチネリのモーターサイクルジャケットを披露している。
クチネリはクロップド丈のテーラードアイテムで知られているが、タン氏は今回のコラボレーションでブランドが新しいシルエットを取り入れるよう挑んだという。 タン氏によると、その結果生まれたものには「ゆったりと地面に着くような」「流れるような」白のトラウザーと、「ゆるいルース」フィットのライトウォッシュデニムのパンツなどがあり、「それらはヴィンテージのリーバイスにインスパイアされているが、クチネリを象徴する洗練された生地で作られている」。また、Z世代のデニムの好みも反映している。
ブルネロ・クチネリは、最近では静かなラグジュアリーのトレンドの代名詞となりつつあるが、タン氏は、プリントや定番のモニリの装飾によってブランドが認識されていることが多いと指摘した。今回のカプセルは「未来の顧客のための入り口」となり、それゆえにタイムレスでどこまでも多様性が広がるよう意図しているため、タン氏とカロリーナ・クチネリ氏は、たとえばブランドロゴをコートの襟の下に隠すなど、ブランドのシグネチャーをさらに目立たなくするよう努めている。ブルネロ・クチネリの幹部からは、この記事についてのコメントはもらえなかった。
若年層を狙い認識を変化させる
カロリーナ・クチネリ氏が由緒あるファミリービジネスの2代目であることも、ホルト・レンフルーにとって理想的なコラボレーターとなった。ホルト・レンフルーは、マーケティングとマーチャンダイジングの両方において、ストーリーテリングを優先している。品揃えでは同社の価値観を反映した特別な製品であることを証明する「差別化ポイント」に焦点を当てている、とタン氏は言う。その価値観とは、自己表現をエンパワメントすること、前向きな変化に火をつけること、サステナビリティを支持することなどである。
そのため、ホルト・レンフルーは、2019年にデジタルマーケティングを優先する目的で中断した紙の雑誌を11月頭に再び発行した。ブルネロ・クチネリ×ホルト・レンフルーコレクションの見開き4ページに加え、B-Corpのラグジュアリーブランドであるアナザートゥモロー(Another Tomorrow)の記事も掲載されている。同誌のローンチパーティは、トロントのイーストエンドにある、地元のDJがよく出演する会場で開催された。
「認識を変えることを意図している」とタン氏。「ホルト・レンフルーが行った変化にまだ気づいていないかもしれない、クリエイティブで好奇心旺盛な若い顧客層をターゲットにしている」。
タン氏は、ホルト・レンフルーのコアで忠実な顧客は高齢化していると指摘した。その一方で、そうした顧客層の子供たちは経済的に自立し、「新しいワードローブ、新しい考え方、新しい買い物の仕方」を定義しつつある。
185年の歴史あるホルト・レンフルーは、そのような顧客に対応するため、店舗にカフェやその他のスペースを設置し、「友人と集まって過ごす」ことをすすめている。トロントのブロアストリートの店舗には、来店したクリエイターのためのコンテンツスタジオまで設けている。
1986年以来、ホルト・レンフルーはウェストン家によって個人所有されており、2021年まではセルフリッジ・グループ(Selfridges Group)も所有していた。一方、ブルネロ・クチネリは今年初めて10億ドル(約1500億円)の大台を突破する勢いだ。7月には2023年の売上予測を上方修正し、前年比19%増を見込んでいる。
[原文:The future of Brunello Cucinelli is biker jackets, tank tops and Gen Z-approved denimd]
JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)