JCペニー(JCPenney)はコロナウイルス以前の段階ですでに、売り上げを伸ばすことに苦戦していた。店舗を再オープンするにあたり厳しい道のりがもともと目の前に広がっていたわけだ。しかし、ここに来て新しい悩みの種が放り込まれた。
JCペニー(JCPenney)はコロナウイルス以前の段階ですでに、売り上げを伸ばすことに苦戦していた。店舗を再オープンするにあたり厳しい道のりがもともと目の前に広がっていたわけだ。しかし、ここに来て新しい悩みの種が放り込まれた。
JCペニー店舗内にはセフォラ(Sephora)によるブティーク店舗が展開されていたが、そのブティック店舗の閉鎖の一時的差し止め命令提訴がJCペニーによって行われたことが、4月末に裁判所に出された書類で明らかになった。JCペニーによると、セフォラとJCペニーの間で結ばれていた16年の期間の契約を、規定よりも早く解除することにJCペニーが同意しない限りは、セフォラはブティック店舗を再オープンしないと述べたとのことだ。と同時に、JCペニーは店舗が(コロナウイルスの影響で)一時閉鎖に追い込まれた際に、JCペニー内のセフォラ(SiJCP)の正社員を一時解雇している。これにセフォラは怒っている。
セフォラが果たしてJCペニーの計画通りに店舗内ブティックを再オープンするかどうかは別にしても、そもそもコロナウイルスよりも前から、デパートメントストアがその活気を失っていたことは疑いようがない。価値ある新規顧客にアクセスするためにデパートメントストア内にブティックをオープンする意義をセフォラのような会社に説得することはどんどんと難しくなっていた。そんななか、コロナウイルスが恒常的にこの関係性に割れ目を生んだ。
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力関係の変化
セフォラがJCペニー店舗内にブティックを展開すると発表した2006年の時点では、JCペニーは全米に約1000店舗を持ち、セフォラは120店舗しか持っていなかった。セフォラが物理的に存在できていなかった場所で顧客にリーチする助けをJCペニーが担った形だ。それ以来、JCペニーの実店舗数は減り続けており、いまでは国内に850店舗以下となっている。その一方で、セフォラは拡大を続けている。いまではセフォラ単体での店舗がアメリカ大陸全体で490以上に増えている。この数にはJCペニーの店舗における650のブティックは含まれていない。
店舗内に別会社のショップをオープンさせるアプローチはJCペニーだけに限らない。メイシーズ(Macy’s)は2009年以来、ルックスオティカ(Luxottica)とパートナー関係を結び、彼らの店舗内でサングラス・ハット(Sunglass Hut)店舗を運営させている。しかし、このような形のパートナーシップは近年、デパート自体の人気が低迷しているなかで人気が失われている。直近の収支報告、2月の第4四半期においてJCペニーは年比較で同一店舗売り上げは7%減少したと報告している。
前述の書類に含まれる、4月26日に送られたeメールでは、セフォラのCEOであるジャンアンドレ・ルジョー氏はJCペニーのCEOであるジル・ソルトー氏に対して、「(JCペニーが破産するにしてもしないにしても)、SiJCPはもはや終わりに直面していることは我々どちらにとっても明らかだ、JCペニーの財務的な苦境は非常に広く知られており、そのためブランドパートナーたちはJCペニーと今後も協働していくことに警戒心を持つだろうし、新しいブランドのローンチは確実に干上がるだろう」と、eメールを送っている。
新しく刺激的なブランドに注目を集める手法として誕生したアプローチが、いまでは古くなった店舗がなんとか意義を確保しようとするためのものになった。JCペニーはセフォラの店舗内ブティックの売り上げの詳細を公開していない。しかし、ソルトー氏は2019年始めの収支報告において「我々のアパレルビジネス同様、ビューティはとても重要だ」と述べた。しかし、店舗内ショップは、ほかの点でも価値を持っている。JCペニーのようなデパートメントストアが単独では獲得できないだろうインフルエンサーパートナーシップや限定パートナーシップに、セフォラのようなパートナーはアクセスできるのだ。たとえば、セフォラでセレーナ・ゴメズがローンチする限定ラインをJCペニーも扱うことができると、直近の報告で語っている。
また昨年には、JCペニーはスタイリングルームと呼ばれる新しいコンセプトもテスト中だと述べている。これは試着室の近くにデジタルのビルボードを設置し、顧客が試したい服のインスピレーションを受けるというものだ。また、セフォラのメイクアップのような服と合わせるプロダクトを展示する、壁に設置する形式のディスプレイもそこに含まれる。
JCペニーは本稿に対してコメントを拒否したが、広報担当者のブルック・ブキャナン氏はCNBCに対して次のような声明を出している。「我々のロケーション内のセフォラの再オープニングを阻止できないように、JCペニーは一時差し止め命令の提訴を行った」。「毎年何百万人もの顧客を相手にするビューティ分野であるSiJCPとともに、継続可能な黒字成長を進めることに我々は尽力する」。
一方で、セフォラの広報担当者は、「JCペニーの主張とは異なり、我々はJCペニー店舗におけるビューティプロダクトを販売する権限、もしくは近い将来におけるSiJCPの運営に影響を与えるような脅かしは行っていない。JCペニーは近年、厳しいポジションに追いやられていることは理解するものの、今回の件は非常に残念なことであり、迅速に解決したいと考える。店舗が再度オープンするなかで、JCペニーとのパートナー関係を継続し、またブランドパートナーと顧客をサポートするための行動をとり続けていく」と述べた。
店舗内ショップは生き残れるのか
再オープンできるビジネスが増えるなかで、店舗内ショップというコンセプトがどのような形になるかはまだ明らかではない。「(もしもセフォラが店舗内ブティックを閉鎖すれば)JCペニーのモデルにとっては大きなダメージとなるだろうと思う」と、カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)のアナリストであるティファニー・ホーガン氏は言う。「セフォラは店に人を連れてくる駆動力となっており、セフォラが店舗としてデパート内に存在したくないとなれば、それは、買い物客にとっても、メッセージとして受け取られるだろう。このような環境では顧客も店のなかで何が起きているか、よく分かっているからだ」。
「デパートメントストアモデルは壊れている」と、ジェーン・ハリー・アンド・アソシエイツ(Jane Hali and Associates)のリテールリサーチ・アナリストであるジェシカ・ラミレズ氏は述べる。「以前であれば、デザイナーやブランドは人の目に触れるためにデパート内に展開したがっていた。しかし、いまではD2Cブランドですら、デパートとパートナーになりたがっていない」。
JCペニーとセフォラの契約がどうなるかは今後次第だが、いくつかの点は明らかだ。もしも、セフォラがJCペニーとのパートナー契約を解消した場合、JCペニーはビューティー部門を再活性させる、ほかの方法を考えなければならなくなる。また、買い物客たちは実店舗に行くことに抵抗を感じるだろうことを考えると、ブランドやリテーラーたちにブランド専用のスペースをデパート内に提供することは、それほど効果的なセールスポイントにはならない可能性が高い。少なくとも、買い物客が店舗に行きたいと感じられるようになるまではその状態が続くだろう。そのため、ウェブサイトへのアクセスなり、パートナー関係におけるコントロールなり、ブランドやリテーラーに提供できる、ほかの何かを見極めないといけない。
「このような状況から脱するために今年の後半、デパートメントストアたちは継続して苦戦を強いられるだろう。そのため適切なブランドたちと繋がっておくことは非常に重要だ。それが店舗内で販売するだけのブランドであってもだ。適切な組み合わせを持っていることは今年を通して重要事項であり続けるだろう」と、ホーガン氏は言う。
Anna Hensel(原文 / 訳:塚本 紺)