スーパーフードや健康的な成分の製品は超富裕層やセレブ向けのものだと思い続けている人たちはいまだに多いが、現在新世代のブランドの多くがD2Cをローンチし、ウェルネス分野をもっと若々しく、より手頃な価格で、もっと身近で楽しいものとして提供することを目指している。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
2016年6月、グープ(Goop)の女教皇、グウィネス・パルトロー氏が、あるスムージーのレシピを公開した。それに対してネット上では、チンキ剤、強壮剤、パウダーなど素材の金額について興味津々、デイリーメール紙によると合計金額は223ドル(約2.5万円)になったという。また、中国の薬草であるツルドクダミのように、一般的な消費者には知られていない成分も含まれていた。
6年前、摂取できる製品は増えており、体の中から肌の状態を改善する目的のものがいろいろ登場し始めていた。また、コラーゲンなどの成分が普及して、「スーパーフード」は独立系のヘルスストアだけではなく、大型スーパーなどにも進出するようになる。しかし、そのような製品は超富裕層やセレブ向けのものだと思い続けている人たちはいまだに多い。
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手軽なウェルネス製品をターゲットで展開するサンウィンク
現在、新世代のブランドの多くがD2Cをローンチし、ウェルネス分野をもっと若々しく、より手頃な価格で、もっと身近で楽しいものとして提供することを目指している。ターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)のような大手小売業者に選ばれつつあることによって、そのようなブランドの成功は証明されている。サンウィンク(Sunwink)はそんなブランドの最新例だ。同ブランドはドリンク剤(ボトル入り飲料)と粉末製品を展開している。粉末製品のうち3点が、2021年12月26日、ターゲットのオンラインストアと実店舗でローンチした。ダイジェスチョン・レモネード(Digestion Lemonade)、ビューティ・フルーツパンチ(Beauty Fruit Punch)、カカオ・クラリティ(Cacao Clarity)で、それぞれ26.99ドル(約3100円)。同ブランドは、ココカインド(Cocokind)やレイウェルネス(Rae Wellness)といったほかのブランドによる摂取タイプのビューティ・ウェルネス製品とともに販売されている。サンウィンクの共同創業者、ジョーダン・シェンク氏によると、このローンチはターゲットからインスタグラムでダイレクトメッセージを受け取ったことから誕生したということである。
同じく共同創業者のイライザ・ガネッシュ氏は、ウェルネス製品の利用度は当然価格に依存すると述べている。「だが、ブランドが何を表しているか、ブランドがウェルネスについてどう語っているかという点も重要だ」。また、同氏は、サンウィンクはウェルネスと完璧主義を同一視していないと強調する。「大部分の人たちには朝に3時間の日課を取り入れる余裕などない」。
サンウィンクは、ターゲットでのローンチに先立ち粉末製品の価格を34ドル(約3900円)から引き下げた。2018年にローンチした同ブランドは、これまでは自社eコマースサイトとAmazonで販売していた。
わかりやすい製品名がポイント
ウェルネス関連の製品名のような単純なものが、より身近に感じてもらえるのに役立っている。たとえば、チコリの根、アムラ、タンポポなどを配合した「ダイジェスチョン・レモネード」について考えてみよう。この製品名がターゲットの関心を引いた理由のひとつだったとシェンク氏は述べている。「ヘルシーなものを食生活に取り入れてもらいたいなら、もっと親近感や学びを提供する必要がある。(顧客に対して)わかりやすいものにしなければ。レモネードとフルーツパンチの味は誰でも知っている」と同氏。ターゲットはこの点についてのコメントを辞退した。
ターゲットでローンチしたケア・オブとゴールドの動き
最近ターゲットのウェルネス部門に加わったのは、サンウィンクだけではない。D2Cサプリメントブランドのケア・オブ(Care/Of)は、2021年3月にターゲットでデビュー。ターゲットでは、妊婦向けビタミンの18.99ドル(約2200円)を除いて、製品は14.99ドル(約1700円)である。同ブランドのD2Cの販売価格は大幅に高く、大部分が40〜55ドル(約4600〜6300円)である。また、スーパーフードベースの製品やラテミックスを提供するゴールド(Golde)は、2021年1月にターゲットでローンチ。販売価格は15〜42ドル(約1700〜4800円)だ。
ゴールドの共同創業者、トリニティ・ムーゾン・ウォフォード氏は、「ゴールドはウェルネスを誰にでも手に届くものにする使命を持って2017年に創業した」と述べている。「つまり、皆に見つけてもらいやすい場所で提供するということ。近所の大手小売店で取り扱われるということは、この使命において大きな一歩だ」。ゴールドがターゲットでローンチした製品は、水に混ぜるだけでよい携帯用小袋入りの粉末製品3点からなる「スーパーエイド(Super Ades)」コレクション(6袋入り、14.99ドル、約1700円)。
ムゾン・ウォフォード氏いわく、「我々の優先事項は、我々のコミュニティにとってもっともトレンディなメリットは何かを理解することだった。そして、シンプルで使いやすい製品を作り、皆から求められていたメリットを提供した」。サンウィンクと同様に、ゴールドは、多くの製品に成分ではなくメリットに基づいた名前をつけた。たとえば、デブロート・エイド(Debloat Ade)、スキンハイドレーション・エイド(Skin Hydration Ade)、デストレス・エイド(Destress Ade)などだ。しかし、シュルームシールド(Shroom Shield)パウダー(現在はターゲットでも入手可能)のように、依然として成分ベースの製品名がつけられているものも同ライン内に存在する。
顧客からの豊富なデータを活用するケア・オブ
一方、ケア・オブのウェブサイトにはちょっとした質問を用意している。これは、新規の購入客にパーソナライズされたビタミンパックを「処方」するために、健康に関連する目標、居住地、年齢について尋ねるものだ。こうして、ケア・オブは2016年のローンチ以来、豊富なデータを蓄積しており、これは初めての小売ラインに対しての優先順位を決めるのに役立った。ビタミン製品の中には、睡眠、集中力、エネルギーの向上を狙ったものがある。同社CEOのクレイグ・エルバート氏は、ウェルネス製品を一般大衆に販売する際、認識できる成分が重要だと強調している。たとえば、同社のエネルギー製品の特長は緑茶抽出物である。「緑茶は一般の消費者になじみがあるので、(そのような製品に)共感して信頼を感じてくれる。しかし、身近な成分と目新しいものを組み合わせるようにもしている。この製品には、アダプトゲンのハーブであるロディオラや、イエルバマテも配合されている」。
人々の意識の変化とウェルネス製品の入手可能性
ウェルネス製品を拡大している大型小売店はターゲットだけではない。ウォルマートは、2021年6月、ニュージーランドのサプリメントブランド、ヘルス・バイ・ハビット(Health By Habit)をローンチ。サプリの価格は8.88ドル(約1010円)。品揃えは、エネルギーや睡眠の向上、ストレス解消を謳ったメリットベースの製品から、ビタミンCやウコンなどの成分にフォーカスした製品まで、多岐にわたる。ニュージーランドの大手玩具メーカーの子会社である同ブランドは垂直統合されており、自社パッケージをすべて製造している。同社の製品・運用責任者であるリーアム・ウィテカー氏にとって、ウェルネス製品が入手しやすくなることは、「世界の誰にとってもすぐに入手できる情報がどれだけあるかということの副産物」なのだという。同氏は、ニューエイジの消費者にとって健康の範囲はもっと拡大しており、身体的なものだけではなくメンタル面の健康への関心が高まっていると言う。「人々の意識は薬に頼る解決策から自分自身の問題へと移っており、ナチュラルでライフスタイルに基づいた解決策が求められている」とウィテカー氏。そして、解決策は地元で見つけられるようになっているのだ。
[原文:The brands making ‘wellness’ more accessible]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)