フォートナイト(Fortnite)やロブロックス(Roblox)などが、未来のソーシャルネットワークだという話がメディア界で渦巻いている。確かに、エンゲージメントやソーシャライジングはこれらのゲームを動かしている要素だが、むしろフォートナイトやロブロックスは、未来のテーマパークの姿に近いところがある。
フォートナイト(Fortnite)やロブロックス(Roblox)などが、未来のソーシャルネットワークだという話がメディア界で渦巻いている。確かに、エンゲージメントやソーシャライジングはこれらのゲームを動かしている要素だが、ここは単に友達を追加したり、「いいね」やフォロワーを集めたりするだけの場所ではない。事実、フォートナイトやロブロックスは、未来のテーマパークの姿に近いところがある。
メディアアナリストのマシュー・ボール氏は2020年3月に比較調査を行っており、フォートナイトでの記録破りの最新イベントがその結果を裏付けている。
マーベル(Marvel)をテーマにしたフォートナイトのシーズン4は2020年12月第1週に完結したが、その時、フォートナイトのプレイヤーたちは、惑星サイズのラスボス「ギャラクタス(Galactus)」と対決した。その展開はマーベル映画の衝撃的シーンさながらで、一瞬にして飛行機から放り出され、次の瞬間にはアイアンマンなどのスーパーヒーローとチームを組み、世界が破壊される前に、爆弾を積み込んだバスをギャラクタスに突進させなければならなかった。
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イベントの実施中、フォートナイトは、ファンたちが絶対に不可能だと思っていたことを可能にした──それも数多くのことを。1530万人がイベントに同時に参加したことも記録だが、フォートナイトのクリエイターによると、YouTubeやTwitch(ツイッチ)でことの推移を見守った人が340万人もいたという。ちなみに、「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)の最終シリーズの最終話は、HBOチャンネルで1360万人がライブ視聴していた。
フォートナイトの非常に高い数字は重要な点を明らかにしている。これはビデオゲームというよりも、誰が何をしたいと思っているか、誰とともに遊んでいるかにもよるが、無数のエンターテインメント体験とソーシャルでの交流が得られる目的地なのだ。むろん、プレイするだけのゲーマーもいるが、人がプレイするところを見、何十万人にストリーミング配信しながらそれについて語ることで対戦に影響を与えている人もいる。
「フォートナイトは、ビジネスの正しい側面を優先しつつ収益もあげ、すべてがユーザーにより良い体験を提供することにつながるようにしている優良プラットフォームの例だ」と、ソーシャルネットワーキングアプリ、ユーボ(Yubo)の最高経営責任者(CEO)を務めるサシャ・ラジミ氏は話す。
多方面に拡張できる知的財産
ディズニー(Disney)はこれを実に上手くやっている。ディズニーワールド(Disney World)では、ゲートをくぐった人々が、遊びと夢と魔法がそこに本当に存在していると感じる「世界」を現実世界のなかに作り出している。エンターテインメントビジネスにとって優良コンテンツを所有していることは重要だが、オーディエンスのエンゲージメントもまた不可欠だ。
マーケティング調査会社キッズノウベスト(KidsKnowBest)の最高戦略責任者、ピーター・ロビンソン氏は次のように語る。「我々はよく、コミッショナーについて話す。コミッショナーは、どのコンテンツをオーディエンスに届けるかを決定する。フォートナイトやロブロックスではオーディエンスがコミッショナーだ。プレイするためには『バトルロイヤル(Battle Royale)』が、ソーシャルやお祭り騒ぎのためには『パーティアイランド(Party Island)』があり、ユーザー生成コンテンツのためには『クリエイティブモード(Creative Mode)』があって、ここには収益化モデルがある。対戦を視聴するだけの受け身の体験もある。映画を作って、その映画で主演し、映画を見てもらうことで報酬も得られる」。
大局的には、大きなファンコミュニティは、フォートナイトのようなゲームにまつわる会話を誘導し、インフルエンサーやクリエイターが対話をリードしている。ディズニーのファンベースと同様に、こうしたビデオゲームの人気に貢献する大人や青少年のファンからなる巨大な多世代コミュニティが存在するのだ。
メディアコンサルタント企業ツーニル(Two Nil)のマネージングディレクター、アンドレ・アルタチョ氏は、「フォートナイトはゲーミングや広告を超え、ゲーム、キャラクター、スキン、その他の要素を活用して、複数のビジネス機会に拡張できる知的財産を構築した」と述べている。
居場所のあるゲーム空間
ロブロックスのCEO兼プレジデント、デビッド・バズーキ氏は、2020年11月、ロブロックスの株式上場の計画を発表したあと、同社の成長プランの概要説明のなかでこのビジョンを強調した。バズーキ氏はドキュメントのなかで、「現在ロブロックスは、3Dでシミュレートされたバーチャル環境(メタバースとも呼ばれる)において、人々が交流できる、共有型のオンライン体験を提供している」と書いている。
フォートナイトやロブロックスのように、コアとなるゲームプレイの外での体験や交流、発見の場を備えたバーチャル世界を開発するものが増えれば増えるほど、その内部に居場所を見つけられる、見つけるべきだと感じるマーケターも増えるだろう。
「そこで長時間を過ごしているから、人々がそうしたゲーム空間を世界のように扱っている、と言っているわけではない。そこは重要な点ではない」と、制作スタジオのユニット9(UNIT9)でクリエイティブディレクターを務めるケイト・リンハム氏はいう。「重要なのは、そこが、現実世界のように多様性や柔軟性を持ち、複数の体験をサポートできる空間のように感じられることだ」。
ユニット9が9月に、アド・カウンシル(Ad Council)の「シー・キャン・ステム(She Can STEM)」キャンペーン向けにマインクラフト(Minecraft)内でカナダ人歌手ルースBをフィーチャーしたバーチャルコンサートを制作したときに、リンハム氏はこの力学を間近に見たという。リンハム氏は、ルースBのライブストリームをYouTubeで複製するのではなく、ゲームがもたらす双方向性を最大限に利用した。パフォーマンスの2時間前には、3つのバーチャル環境で商品ドロップがあり、ファン向けのイースターエッグも詰め込まれていた。実際にパフォーマンスの時間になると、彼らが向かうべき座席もファンゾーンも用意されていなかった。代わりに、10曲を歌いながらステージ間を移動するルースBの後を追うように言われたのだ。
「バーチャル空間で重力の制限や群衆管理から解放され、より遊びやすくなった」と、リンハム氏はいう。
上手く統合された広告
ビデオゲーム内の広告は以前から存在していたが、ゲーマーは本物ではないマーケティングに敏感に反応することで知られている。ゲーム「フォールアウト76(Fallout 76)」で人気ストリーマーのニンジャ(Ninja)が行ったライブストリームに大人向けSFアニメのキャラクター、リックとモーティが登場した例を見てみよう。視聴者は、キャラクターとニンジャがミスマッチだと苦情を言い、このようなあからさまなブランドとのパートナーシップを前面に出したニンジャを非難した。一方で、フォートナイトで成功している多くのケースにおいては、ブランドがゲーム設定に上手く統合されている。
プロダクトプレイスメントおよびインフルエンサーエージェンシーのBENでクライアントサービスならびに戦略担当シニアバイスプレジデントを務めるキャメロン・パートリッジ氏はこう話す。「こうしたブランドとのパートナーシップは、フォートナイトのプレイヤーベースが真の価値とみなすもの、すなわち広告を見せられていると感じないまま、自分がなりたいキャラクターになってゲームをプレイする機会を提供している。ブランドとのパートナーシップはプレイヤーの体験に追加できるが、ゲームとブランドのあいだには自然な整合性がなければならない。そうしなければ、反発に遭う可能性がある」
『ジョン・ウィック(John Wick)』のような映画やナーフ(Nerf)のような玩具ブランドは、慎重な方法でゲーム内のキャラクターや武器に姿を変え、エンターテインメントプロパティをより目立つようにするだけでなく、ブランドとフォートナイトのあいだで共有されるエコシステムを構築している。このアプローチとディズニーが行っていることには類似点がある。映画とタイアップしたパーク内のエリア、映画をテーマにしたスナックや乗り物、ブランドグッズが、ゲストのための全体的な世界を作り出すのに役立っている。こうした要素の一つひとつがパークのより広いテーマと合致しているため、訪れる人々は広告を見せられているとは感じず、むしろお気に入りの映画やショーに没入していく。
注目を奪い合う競争
独立系のデジタルクリエイティブエージェンシー、ウェイスト(Waste)のマネージングパートナー、バイザー・スタトビチ氏は次のように語る。「Netflixやディズニーをはじめとする多くの企業がフォートナイトを脅威とみなしているのは、彼らが皆、注目を集めようと競い合っているからだ。ゲームとは縁のないエンターテインメント企業やメディア企業は、少なくともその世界を理解し、そのなかに意味のある場所を切り開くか、あるいは買収によってその一部にさえなる可能性がますます高くなっている」。
[原文:‘The audience is the commissioner’: Decoding the Fortnite effect for marketers]
SEB JOSEPH(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:)