テック業界出身の経営幹部が、小売企業の最高経営責任者(C-suite)の席を占めるようになってきている。
チョコレートとキャンディーを製造する多国籍企業ハーシー(Hershey)は9月末、Amazonに長年の経験を持つディーパック・バティア氏を、初の最高テクノロジー責任者に指名した。ハーシーがこの発表を行う1週間ほど前に、スプラウツファーマーズマーケット(Sprouts Farmers Market)も初のCTOとしてジム・バーレンバーグ氏を指名した。またカナダグース(Canada Goose)は4月、マット・ブロンダー氏を新しい役職の最高デジタル責任者に任命した。ブロンダー氏は同社の消費者向けデジタルプラットフォームを担当する。
小売企業がますます高度なテクノロジーを使い、デジタル化していることは紛れもない事実だ。IBMとコンシューマーグッズフォーラムからの今年のレポートによると、特に自動化、アナリティクス、AIなどの進歩に伴うテクノロジーへの支出を34%増加させる予定だという。新しい小売テクノロジーが急速に出現しつつある状況で、小売企業の運営のためには上級テック幹部がますます不可欠になりつつある。
「小売業において、テクノロジーはサプライチェーンの管理、在庫の計画、ブランドや小売企業が消費者とオンラインでどのように対話するかなど、あらゆる場所で使用されており、店舗にまで広がりつつある」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)で小売とeコマースのシニアアナリストを務めるスカイ・キャナバス氏は語る。「テック分野の役員幹部がいなければ、特にオンラインや店舗などのチャネル間にわたって、どのテクノロジーを使用するか、そしてどのように使用するのが最良かについて、調整の欠如が問題になるだろう」。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
テック業界出身の経営幹部が、小売企業の最高経営責任者(C-suite)の席を占めるようになってきている。
チョコレートとキャンディーを製造する多国籍企業ハーシー(Hershey)は9月末、Amazonに長年の経験を持つディーパック・バティア氏を、初の最高テクノロジー責任者に指名した。ハーシーがこの発表を行う1週間ほど前に、スプラウツファーマーズマーケット(Sprouts Farmers Market)も初のCTOとしてジム・バーレンバーグ氏を指名した。またカナダグース(Canada Goose)は4月、マット・ブロンダー氏を新しい役職の最高デジタル責任者に任命した。ブロンダー氏は同社の消費者向けデジタルプラットフォームを担当する。
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小売企業がますます高度なテクノロジーを使い、デジタル化していることは紛れもない事実だ。IBMとコンシューマーグッズフォーラムからの今年のレポートによると、特に自動化、アナリティクス、AIなどの進歩に伴うテクノロジーへの支出を34%増加させる予定だという。新しい小売テクノロジーが急速に出現しつつある状況で、小売企業の運営のためには上級テック幹部がますます不可欠になりつつある。
「小売業において、テクノロジーはサプライチェーンの管理、在庫の計画、ブランドや小売企業が消費者とオンラインでどのように対話するかなど、あらゆる場所で使用されており、店舗にまで広がりつつある」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)で小売とeコマースのシニアアナリストを務めるスカイ・キャナバス氏は語る。「テック分野の役員幹部がいなければ、特にオンラインや店舗などのチャネル間にわたって、どのテクノロジーを使用するか、そしてどのように使用するのが最良かについて、調整の欠如が問題になるだろう」。
規模拡大にはテクノロジーが重要な役割を担う
どの小売企業も、企業のニーズに応じて、それぞれ違う方法で経営役員を編成している。CTOとCDOなどの役割には多少の違いがあるものの、一般的にこれらの技術に特化した役職に就く幹部は、小売企業のテクノロジーへの取り組みを調整し、指揮を執る責任を負っている。たとえば、スプラウツファーマーズマーケットは、新しいCTOが「スプラウツのテクノロジー全般の戦略的方向性と管理」を監督すると述べている。食料品店である同社は、電子棚ラベルも含む新しいテクノロジーを店舗でテストしている。
「ビジネスを実際に成長させ、規模を拡大するには、テクノロジーが重要な役割を担う。最終的に、CTOを置くことは、小売企業でのコスト削減と収益増大に役立つだろう」と、キャナバス氏は述べている。
実際に、経営役員のなかにテック幹部を配置することで、小売企業は事業規模を拡大し、コスト削減の機会を見出すことができる。ハーシーは、CTOを指名することで、アナリティクスとオートメーションの活用を進めたいと述べている。新しいCTOはAmazonのような会社でサプライチェーンの計画、最適化、自動化に関わった経験がある。ザ・ハーシー・カンパニー(The Hershey Company)のプレジデント兼CEOであるミシェル・バック氏はプレスリリースで、「インフラを強化するとともに、成長しつつあるサプライチェーンと事業部門の全体を拡張するため、人材とデジタル能力に投資している」と述べている。
高度な技術革新を必要とする小売トレンド
この3年間で、高度な技術革新を必要とする多くのトレンドが小売業界に出現した。そのひとつはオムニチャネルのショッピングで、人々がアプリ、ウェブサイト、実店舗など複数の販売チャネルにわたって買い物をするものだ。
このトレンドにより、顧客がどこで買い物をするかにかかわらず、ショッピング体験をシームレスにする必要性が高まった。カナダグースでは、最高デジタル責任者の役割として、デジタルイノベーションの陣頭指揮を執り、さまざまなチャネルを通じたデジタル・ロードマップを策定するチームを管理している。ノードストローム(Nordstrom)やサックスフィフスアベニュー(Saks Fifth Avenue)など大手の小売企業とのパートナーシップはあるものの、カナダグースの第1四半期における収益の大半はD2C(ダイレクト販売)によるもので、合計売上額の8480万カナダドル(6240万ドル、約93億6000万円)のうち、D2Cは5580万カナダドル(4110万ドル、約61億7000万円)を占めている。9月にマットレスファーム(Mattress Firm)初のCDOに任命されたジョージ・ハンソン氏は、MattressFirm.com、Sleep.com、実店舗のすべてにわたる円滑な顧客体験の実現を担当する。
経営役員の職に就くテック系幹部求めて、多くの小売企業はカスタマージャーニーを十分に理解している候補者を探していると、トークデスク(Talkdesk)で小売および消費者向け商品担当のバイスプレジデントとジェネラルマネージャーを務めているシャノン・フラナガン氏は述べる。
「今では、あらゆるタッチポイントにおけるカスタマージャーニーを理解していることが前提条件となっている。これらの人々が組織内で昇格したり、外部から雇用されたりする理由でもある。同時に、ビジネスへの極めて鋭い洞察力も必要になる。これもまた、過去にはそれほど必要とされていなかったものだ」と、フラナガン氏は述べている。
CTOの存在はますます重要に
一部の小売企業は経営役員レベルのテック職位を任命しはじめたばかりだが、この役割に新しい人員を指名している業者もある。このような小売企業は、カスタマーアナリティクスの経験を持ち、いくつものショッピングチャネルや、生成AIのような新しいツールを管理する人材を求めている可能性があると、キャナバス氏は語る。ノードストロームとフィグス(Figs)は、新しい最高テクノロジー責任者を最近指名した小売企業の例だ。ノードストロームの新しい最高テクノロジーおよび情報責任者のジェイソン・モリス氏は以前ウォルマート(Walmart)に勤務しており、グローバルなエンタープライズテクノロジーへの取り組みを主導して、小売ビジネスのテック開発を担当していた。
テックに特化したリーダーシップの役割が加わることは、最終的にはビジネスの効率的に役立つと、キャナバス氏は語る。「すべての大手小売企業やブランドがCTOを置くだろうことは、議論の余地がない。特にブランドが消費者との関係を深めようとするなら、ビジネスの非常に多くのレベルにこの役割が必要だ」。
[原文: Tech executives are the latest retail C-suite gold rush]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Hershey