トレジャーデータは2018年7月18日、六本木ヒルズにて、「PLAZMA」を開催。「MarTech Stack」をキーワードに、テクノロジーやマーケティングの最新事例が紹介された。当日紹介された事例をもとに、MarTech Stackの可能性を探る。
トレジャーデータは2018年7月18日、六本木ヒルズにて、テクノロジーやマーケティングの最新事例を紹介するイベント、「PLAZMA」を開催。今回で通算3回目の開催となる同イベント。テーマは「MarTech Stack の先行事例が拓くデジタルトランスフォーメーション」だ。
「MarTech Stack(マーテックスタック)」とは、「Marketing Technology Stack」の略で、「マーケティングテクノロジーを集めて、うまく機能するように全体をプランニングすること」を意味する。現在、メールやCRM、サイト解析、広告配信、A/Bテストなど、現在世界中には7000ものマーケティングツールやソリューションが存在する。この言葉が生まれた背景には、こうしたMarTech市場の急激な成長がある。次々と新しいサービスが生まれていくなか、マーケティング先進国であるアメリカではすでに、それらを目的に応じて注意深く選定し、効果的に組み合わせることが重要視されている。
「欧米だけでなく、今後日本のマーケターにとっても、パートナー選びは重要度を増すだろう」。イベント序盤のセッションでこう語るのは、トレジャーデータでマーケティングディレクターを務める堀内健后氏だ。事実、日本国内には「いくつもツールを導入したのに、うまくハンドリングできていない」と、頭を抱えるマーケターも多いという。
多様性とパーソナライズの両立
旅行業界大手のJTB傘下で、出版事業やオンラインメディアを手がける、JTBパブリッシング。同社で、「新るるぶ Web事業推進プロジェクト」のマネージャーを務める田代浩一氏は、「JTBグループの新メディア『るるぶ&more.』誕生の秘話と、これからのメディアコマースの在り方」と題されたセッションに登壇。2018年4月にスタートしたメディア、「るるぶ&more.」における、MarTechを活用した取り組みについて語った。
「るるぶ&more.を立ち上げた目的は、我々の既存メディアではリーチできない顧客を獲得することだった」と同氏。雑誌、「るるぶ」やオンラインメディアの「るるぶ.com」「るるぶトラベル」は、すでに旅行に行きたいユーザーをターゲットに、「旅行先」という「場所(コンテンツ)」を軸に据えている。
一方るるぶ&more.は、20~30代女性という「人」を軸に据えており、非常に幅広いジャンルのコンテンツを提供。その一部は「&mores(アンドモアーズ)」と呼ばれるインフルエンサーたちによって制作されたものだという。旅前や旅後に幅広い情報を提供していくことで、ターゲットを広げるとともに、インフルエンサーを抱え込むことで、継続的なファンを獲得しようとしているのだ。
しかし、さまざまなニーズに対して多様なコンテンツを提供するとなると、メディア内の多くのコンテンツを、多様なニーズの読者に対して、興味感心・コンテキストに沿ってパーソナライズするのは困難になる可能性もある。そこで一役買っているのがMarTechだと同氏は話す。るるぶ&more.では、ブレインパッドが提供するDMP、Rtoaster(アールトースター)を活用することで、ユーザーの嗜好に合わせ、会員登録訴求やコンテンツの高精度なレコメンドを実現した。
「嗜好の多様性を担保しつつ、ターゲットを絞りパーソナライズする。この両立が、いまや可能になった」。
組織全体のデジタルシフトに寄与
MarTech Stackがもたらす影響は、プロダクトやサービスだけでなく、組織にも及ぶ。「MarTechの導入は、業務効率化や施策の幅を広げるだけでなく、組織全体におけるテクノロジー活用を促進した」。こう語るのは、カカクコムの食べログメディア本部 メディア企画部でデータサイエンスチームのマネージャーを務める宮島弘行氏。イベント当日は、「食べログにおけるTREASURE CDP活用」と題したセッションに登壇した。
「ツールそれぞれにはデータが溜まっていたにも関わらず、以前はそれらが分断されていた」と語る同氏。「たとえば、サービスDBのCV(コンバージョン)データとアクセス解析ツールの流入データの取得はできても、それらを付き合わせて、誰でも分析ができる術がなかった」。
そこでTREASURE CDPを導入し、既存データの連携を促進。チーム外のメンバーもデータを活用できる環境を構築した。その結果、「それまで、データの集計や分析を実施するのは、一部のメンバーに限られていた。しかしいまでは、企画担当者も、自らデータ分析を行うようになってきている」という。
パートナー選びの鍵
「コストを面を考えると、マーケティングツールは少ない方がいい。闇雲にツールを導入するのではなく、いま使っているツールのパートナーのなかから、事業を成功に導いてくれる『新たなパートナー』を見つけるのが得策だ」。セッション「Treasure Data によって実現するデータ民主化とMA進化」に登壇した、ビズリーチ(BizReach)のビズリーチ事業本部 カスタマー企画部 プロダクトマネジメントグループでマネージャーを務める冨里晋平氏はこう語る。
同氏が携わる転職サービス、ビズリーチでは、以前からトレジャーデータのテクノロジーパートナーである、マルケト(Marketo)のMAツールを活用し、会員に求人応募を促すメールを配信している。TREASURE CDPの導入によるデータ連携を実施する前は、データをマルケト含め、各種ツールごとに連携する必要があり工数もかかっていたが、TREASURE CDPに集約することで複雑なセグメント配信にも対応できるようになったそうだ。
「TREASURE CDPを導入して、あらためてマルケトの強みを実感した。社内でも、『マルケトを入れておいてよかったね』という声が多く聞かれた」。
Written by Kan Murakami