ターゲット の即日配送、「高収益性」でデジタル販売に貢献

ウォルマート(Walmart)やAmazonがオンライン注文品の顧客へのワンデー配送で競い合うなか、ターゲット(Target)が実店舗志向の即日配送戦略で収益を上げている。

5月22日に開催されたターゲットの2019年第1四半期の業績発表の場で、最高執行責任者(CEO)のジョン・マリガン氏は、ターゲットの第1四半期のオンライン販売収益の80%は実店舗から生まれたものだと、投資家らに語った。ターゲットは、顧客がオンラインで購入し、同日にその注文品を実店舗から受け取る場合に、3つの選択肢を用意している。その選択肢とは、実店舗での受け取り、自動車から降りずに路上で注文品を受け取るサービス、そしてターゲットが2017年に買収した、ラストワンマイル(物流最終拠点からエンドユーザーへの最終配送)を担う配送会社であるシップト(Shipt)を利用した宅配サービスだ。同社によると、この2019年第1四半期において、オンライン販売収益は42%増加し、その半分で実店舗によるフルフィルメントが大きく寄与したということだ。2018年には、ターゲットは50億ドル(約5500億円)のオンライン販売収益を上げた(昨年のそれらの注文の3分の2は、ターゲットの店舗によるフルフィルメント)。同社は、2019年はオンライン販売収益が60億ドル(約6600億円)になると見込んでいる。

「過去3年間の戦略の真髄」

配送オプションへの投資、具体的には、インベントリ追跡を適切に行う新技術や、注文に対するフルフィルメントを行うための場所を作るための店舗改装、店舗スタッフやシップトの配送ドライバーに対する新たな給与システムへの投資が、ターゲットの最終損益に食い込み、利幅を押し下げていたが、ターゲットはそれを回復してきている。マリガン氏は、同社の3つの即日配送オプションすべてが現在収益を生んでおり、フルフィルメントセンターから顧客宅まで商品を配送する通常のオンライン注文より、利幅が大きいと、マリガン氏は言う。

「これが、過去3年間の戦略の真髄だった。顧客の半径3マイル以内に1000店舗以上を展開しているという事実をもってすれば、ターゲットがAmazonプライム(Amazon on Prime)に対抗できない理由はない」と、ターゲットの元生産管理ディレクターで、サプライチェーンサービス企業であるヤントリックス(Yantriks)で生産管理担当のバイスプレジデントを務めるオマー・アキラ氏は言う。Amazonは迅速なサービスを提供できているが、自分たちもそうできるという点で、皆の意見が一致した。リテールにおいては、ブランド、価格、品揃えが重要だと考えられてきたが、ターゲットは、フルフィルメントこそが、「三脚の第4の足」ともいうべきブレークスルーポイントだ、と考えたのだ。

CEOのブライアン・コーネル氏によれば、勝者と敗者、というふたつに分裂したこの状況下で、これはリテール業界における生き残りをかけた競争のようだ、という。

「私たちは勝者と敗者に二分化されるところを見てきた。私たちの業績がそれを物語っている。私たちは実店舗とデジタルなど、あらゆるカテゴリにおける市場シェアを増やしており、販売高は上昇し続けている」と、コーネル氏は投資家に話した。「これは、実店舗を利用したり、自社ブランドに対する顧客の反応やカスタマーエクスペリエンスを生かした結果だ。ビジネスに投資し、オムニチャネル環境に適応する企業が勝者となり、シェアを譲ってしまっている企業は、新しい環境のなかで進化できていない、ということだ」。

ターゲットのやりかた

ターゲットのやりかたはこうだ。負債となり得るもの、つまり、1800店という多大な実店舗のネットワークを、オンラインで競争力のある収益性の高い資産へと転換し、同時に、Amazon流に、事業により多くの収益作用因を投入し、最終収益を底上げさせたのだ。より多くの資金を今後伸びそうな事業に投資する計画にもとづき、現在もサードパーティマーケットプレイスであるターゲットプラス(Target +)を構築中であり、同社の広告ビジネスの名前をラウンデル(Roundel)に変更した。ターゲットは、シップトの買収をしたことで、これがほかのリテーラーのラストワンマイル配送への取り組み(ペトコ[Petco]やCVSをはじめとするリテーラーがシップトを利用している)から収益を上げる好機だととらえるようになった。こうして、より高い利幅を得るため、昨年、より独自性の強い専門ブランドを立ち上げた。

主任マーチャンダイズ担当幹部であるマーク・トリットン氏は、ターゲットがメンズグルーミングブランドであるグッドフェロー&Co.(Goodfellow & Co.)やナチュラルクリーニングブランドであるエバースプリング(Everspring)などのプライベートレーベルブランドを立ち上げたことで、同社は店舗改装(ターゲットは来年末までに1000店舗の改装を予定中)やフルフィルメントに関する領域への投資に関連したコストを相殺できるようになったという。

概して、2019年第1四半期のターゲットの収益は予想以上で、4.8%上がり、同社の四半期の販売高は8カ月連続の上昇を記録した。実店舗の来店者数も4.3%増えた。コーネル氏は、これは、オンラインで注文して実店舗で受け取る顧客が増え、そのあとも店舗にとどまりショッピングする顧客が増えたことが理由だとした。

ウォルマートとの共通点

ターゲット、そしてウォルマートは、Amazonに対抗するため、バックエンドの物流や多軸展開ビジネスを行う基礎部分に多額の投資を行っている。

「ターゲットとウォルマートは両社とも、自社の顧客について知っている情報を活用してAmazonに対抗しようとしている」と、ベロシティコマースグループ(Velocity Commerce Group)で主任デジタルコマース幹部を務めるジョー・スカーツ氏は言う。「この考え方は、バックエンドを効率化すれば、フロントエンドのカスタマーエクスペリエンスを向上できるというものだ。しかし、物流への投資が少ない競合企業は、一度遅れをとってしまったら、どのようにして遅れを取り戻せばよいだろうか? ターゲットやウォルマートが優位な位置にあるのは、物流に多額の投資をしてきたからだ」。

ウォルマートは今月初旬、35ドル(約3850円)を超える額の注文に対しては無料の翌日配送オプションを適用すると発表した。これは、AmazonがAmazonプライム(Prime)の配送に要する日数を2日から1日に短縮するにあたって8億ドル(約880億円)を投資したという発表のすぐ後だった。このような高額な投資は、ターゲットがこれまでに行ったことのない規模のものだが、同社はこれに対抗することになるだろう。しかし、コーネル氏は、実店舗から配送する方式のフルフィルメントにより、現在はオンライン注文品の50%以上は翌日に届くと、投資家に話している。

「我々は顧客との関係を深め、利便性や使い勝手を通して顧客とより密な関係を築こうとしている」と、CFO(最高財務責任者)のキャシー・スミス氏は言う。「顧客に話を聞き、利便性やスピードがいかに重要かを理解している。だから、数年前に実店舗をフルフィルメント戦略の中心に据えたのだ」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:Conyac