ターゲットが「ターゲットサークル・リワーズプログラム」という会員プログラムを開始してからほぼ2年が経過し、会員数が1億人に達した。同プログラムが狙っているのは、パーソナライズされた値引きを提供することによって購入される商品を増やし、コンバージョンを推進することである。
ターゲット(Target)が「ターゲットサークル・リワーズプログラム(Target Circle Rewards program)」という会員プログラムを開始してからほぼ2年が経過し、会員数が1億人に達した。
2019年の秋に開始されて以来、サークルの利用者は静かに拡大を続け、ターゲットのEC事業にとって重要なデジタルツールとなっている。同プログラムでは、会員がターゲットのセールをいち早く利用できるほか、各種デジタルクーポンやデジタル割引も提供される。最大の競合であるAmazonやウォルマート(Walmart)に比べると、ターゲットの会員プログラムは有料ではなく、当日配達などの会員限定の特典サービスもない。狙っているのはむしろ、パーソナライズされた値引きを提供することによって購入される商品を増やし、コンバージョンを推進することである。
8月第3週に行われた前四半期の決算発表で、ターゲットはサークル会員が値引きや割引の恩恵を受けていると胸を張った。2020年11月に会員数が8000万人に達した後、現在では1億人を超える規模にまでなったところで、ターゲットはこの会員プログラムをさらに拡充したい構えだ。決算発表では、同プログラムに関する今後の計画が明かされた。
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ターゲットの最高成長責任者(CGO)であるクリスティーナ・ヘニントン氏は、新しく追加される機能について、「消費者に喜んでもらえるような大幅な値引き、よりきめ細かい提案、関連性のある情報の提供を、もっと役立つかたちで行えるようにする」ことを主な目的としていると話した。
競合とは一線を画すプログラム
新しく打ち出すのはターゲットが「Promo FOMO(プロモ・フォモ、Fear Of Missing Out:取り残されることに対する不安)」と呼ぶもの。ヘニントン氏は「来店客から、お買い得を逃してしまうことに対してリアルな不安を持っているという話を聞いた」ことに基づいていると話し、更新版のアプリでは、ショッピングカートに商品を入れると精算前にアプリが「自動的にサークル会員への特典情報を表示する」と説明した。
サークルには、1%のポイント還元や誕生日割引のほか、Apple、ウルタ(Ulta)をはじめとする提携ブランドの値引きなど、いくつかの会員特典がある。
以前はターゲットのカートホイール(Cartwheel)アプリで同様の値引きを提供していたが、ターゲットサークルの導入で段階的に廃止された。カートホイールは、ターゲットが2013年にリリースした、独立型のデジタルクーポンアプリである。何百万ものダウンロードがあったという意味では成功したが、会員プログラムをレッドカード(RedCard)という同社のクレジットカードとうまく連携させるため、サークルリワーズが創設された。
会員費無料のサークルリワーズは、そのアプローチにおいても競合他社のロイヤルティプログラムとは一線を画している。第一に、米国では年会費119ドル(約1万3000円)のAmazonプライムや98ドル(約1万1000円)のウォルマートプラス(Walmart+)のような月額料金や年会費はない。その一方で、サークルでは当日配達やAmazonの動画配信サービスなどの幅広い特典サービスは提供していない。
2021年現在、Amazonのプライム会員は世界中で約2億人に上る。2020年9月に開始された)のウォルマートプラスの会員数は最近800万人に達した。
パーソナライズされた買い物体験
効果を上げているロイヤルティプログラムのほとんどがそうであるように、サークルも店頭のプログラム、アクティビティ、販促と連携している、と話すのはプライスライン(Priceline)やベスト・バイ(Best Buy)などに企業のロイヤルティプログラムのソリューションを提供するエンゲージピープル(Engage People)でCTOを務めるレン・コベロ氏だ。こうした戦略は、ターゲットのブランディング強化へとつながり、会員にはパーソナライズされた買い物体験を提供できるという。「個人に合わせたコミュニケーションで、各人が好むチャネルを通してお買い得情報を提供することにより、会員のターゲットへの愛着を強めることができる」。
同時に、オンラインでも実店舗への来店でも、カスタマイズされた通知でワクワク感と即時感を高めることができるとコベロ氏は話す。「パーソナライズされたお買い得情報によって、買い物客が具体的に購入したいという意図を持って来店することになるため、高いコンバージョンにつながる可能性が高い」。
顧客体験エージェンシー、ヒーロー・デジタル(Hero Digital)の共同創業者であるオーウェン・フリボルド氏は、ターゲットでの買い物が多くの顧客にとって毎週必ず行うことのひとつになってはいるものの、サークルリワーズが「日常的な買い物の際に、Amazonやほかの大型店舗でなく、普通の食料雑貨店でもなく、ターゲットに足を向かわせるためのちょっとした理由」を提供していると話す。
機能拡充がプログラム発展に役立つ
フリボルド氏はさらに、ターゲットのロイヤルティプログラムにとって主に有望な開拓分野となるのは、高額商品やセット販売での顧客内シェアを伸ばすことだと述べた。これには、ベビーレジストリや大学進学に伴う引っ越しなど、買い物が大きく増える機会が含まれる。
フリボルド氏は、今後は会員プログラムのデジタル面での機能拡充がプログラム発展に役立つだろう、と話す。「レジ精算時やオンラインでのショッピングカートに簡単に会員プログラムを利用できる便利さは、[ターゲットを]常にトップオブマインドに位置付け、消費者にとって考えるまでもない選択肢となるだろう」。
[原文:Target’s Circle Rewards program hits 100 million members]
Gabriela Barkho (翻訳:SI Japan、編集:戸田美子)