米小売ターゲット、テック買収で「顧客データ」活用を強化

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米小売大手ターゲット(Target)は、自社のスタートアップ・アクセラレーター・プログラムを利用して、社内のデータ分析を向上させようとしている。

ターゲットは5月上旬、2019年に同社が実施している、ふたつのアクセラレーター・プログラムに参加するスタートアップ18社を発表した。

テックスターズ(Techstars)に認定された「メトロ・ターゲット・リテール・アクセラレーター(Metro Target Retail Accelerator)」は、4年目にしてはじめて、ドイツの量販小売業者、メトロAG(Metro AG)と提携して、世界的なスタートアップの参加を募るもの。もう一方のターゲット・インキュベーター(Target Incubator)は、2019年から開始されるものだ。「世界にとって良い目的」を推進するスタートアップを支援する予定だという。

ターゲットは、こうしたスタートアップから学んだ教訓を生かして、オンラインと店舗内の顧客データの接続や、リアルタイムの製品レコメンデーション、パーソナライズ化のような弱点の解決策になる新しいツールやテクノロジーを導入する計画だ。これは、こうした業務をベンダーにアウトソーシングするよりも良い代案と言える。ベンダーの利用は小売業者にとって、顧客から切り離されたり、セキュリティ上のリスクがもたらされたり、コントロールを失ったりする危険性があるからだ。

ふたつのプログラムの目的

今回のふたつのアクセラレータープログラムは、ターゲットが影響力を保つものになる。参加するスタートアップにとって、ひとつ目のアクセラレーターは、ターゲットとメトロAGからの12万ドル(約1300万円)の投資、8週間のプログラム、ターゲットの幹部に対するデモ・デー(Demo Day)の売り込みを伴う。ターゲット・インキュベーターの方は、1万ドル(約110万円)の給付金と、ターゲット敷地内にある作業スペースを提供する。

選ばれたスタートアップは、アクセラレーター・プログラムに続いて、ターゲット店舗内で自社技術を試験運用するが、正式な提携は保証されていない。

今回選ばれたスタートアップ各社は、チャットボットやAI、在庫やマーチャンダイジングの管理および分析、ラストマイル・デリバリー、モバイル決済、顧客に関する洞察、リターゲティングなど、解決すべきさまざまな小売上の問題を対象にしている。こうしたソリューションはすべて、顧客が店舗を訪れる頻度や、オンラインで買い物する頻度、顧客によるターゲット・アプリの利用方法、商品の販売ペース、顧客の検索対象の洞察などの必要とされる顧客データとともに機能する。

ターゲットの声明には、以下のように書かれている。「スタートアップとの協働により、ターゲットには、品揃えや顧客体験を強化するのに役立つ可能性がある外部イノベーションのテストを検討する機会が与えられる。スタートアップのほうは、指導や専門知識、プログラミングなど、ターゲットのリソースの多くを利用しながら、自社の規模を拡大して量販にリーチする方法を最終的に学ぶことができる」。

「(ターゲットは)アクセラレーターを用い、品揃えや顧客体験をさらに向上させられる幅広い製品、サービス、テクノロジーにアクセスする」と、同社の広報担当者は付け加えた。

顧客データを競争上の強みに

もっと具体的に言えば、ターゲットは、アクセラレーター・プログラムが終わったあと、選んだスタートアップと提携して協働することで、自社の社内データ技術を向上させることができる。ターゲットのデータ分析チームはすべてインハウスだ。つまり同社は、ファーストパーティの顧客データを外部のベンダーと共有していない。連携するためにデータへのアクセスを必要とする外部のベンダーを除いて、CRM企業のように自社のファーストパーティ顧客データを共有することはないのだ。

ターゲットは、顧客の進化するニーズや行動を中心とした新たな小売ソリューション構築を、自社のみで行っている。そこで利用されているのが、ラストマイル・デリバリー業者のシップト(Shipt)のような企業の買収やアクセラレーター・プログラムを通じたパートナー各社だ。

ターゲットのある従業員は、背景についてこう語る。「当社は顧客データを守っている。つまり、顧客データの共有が必要とされる場合には、外部ベンダーと提携しない。セキュリティは、当社のデータ戦略で重要な役割を果たしているが、自社だけで仕事をしなければならないことは困難な場合もある。だから、アクセラレーターのスタートアップ各社がそうした役割を果たすことを期待している」。

小売各社は最近、単にサービスプロバイダーとしてテック企業を雇うよりも、テック企業のなかでもっと大きな権益をもちたいと考える傾向が強くなっている。ほかに大勢の顧客を抱えるベンダーにアウトソーシングするのではなく、自社内部にテックソリューションがあるのは、競争上の強みになる。

アウトソーシングより企業買収

ウォルマート(Walmart)、ノードストローム(Nordstrom)、クローガー(Kroger)、マクドナルド(McDonald’s)などの企業は、3年ほど前からテック企業を買収している。インハウスでの部門構築や、アウトソーシングより、買収のほうが価値があるとする独自の戦略を示唆する動きだ。

こうした買収において提供されるテックサービスでは、顧客データが中心的な役割を果たす。ウォルマートは2019年、製品レコメンデーション用に顧客レビューのマイニングを行うAIソリューション企業を買収した。マクドナルドはマーケティング分析プラットフォームのダイナミック・イールド(Dynamic Yield)を買収。ノードストロームは2018年秋、従業員が買い物客に直接結びつくことができる、ふたつの顧客サービスメッセージングシステムを買収した。

ターゲットは2017年にシップトを買収。加えて同年に、即日配達管理プラットフォームのグランド・ジャンクション(Grand Junction)を買収した。

顧客データプラットフォーム、レッドポイント・グローバル(RedPoint Global)のマーケティング担当バイスプレジデント、ブライアン・クリアリー氏は、「このような種類の買収は、あらゆる形態や種類、規模の小売業者が、テクノロジーを競争上の強みとして活用し、顧客体験におけるギャップを埋めようとしていることを強化するものだ」と、指摘する。

「だが、買収の舞台裏で、多くの実験が行われている。小売各社は、投資したい技術であるかを評価するために、スタートアップ・ラボを開設しつつある。こうしたラボの任務は、小売業者がパーソナライズ化のような新分野で活動するのを手助けすることだ。そうした業務分野を構築するか買収するかは大きな問題ではない」。

プログラムの今後の展開

ターゲットのアクセラレーター・プログラムでは、リテールテックのスタートアップを同社に引き寄せ、新技術を実現させてから、正式に提携するかどうかを判断する。2018年には、夏のアクセラレーター・プログラムを通過した9社中の6社が、ターゲット店舗において技術を試験運用した。

そのなかには、オンラインで適切な洋服サイズを顧客が見つけられるよう手助けするユーザー生成コンテンツプラットフォーム、ソジー(Sozie)や、ターゲット店舗で買い物中の顧客に対してリアルタイムの回答を送信するAIレスポンスプラットフォーム、サティスファイ・ラブズ(Satisfi Labs)などが含まれている。

ターゲットの従業員によると、アクセラレーター・プログラムとその後の試験運用でターゲットが協働するスタートアップは、新しいタイプの技術をデータ戦略に組み込んだり、新しいタイプの顧客をターゲティングしたりするのに役立つという。

「すべての自社データを引き続き保有しながら、新規顧客を獲得したり、ギャップがある部分を完結させたりできる」と、この従業員は語った。

Hilary Milnes(原文 / 訳:ガリレオ)