ターゲット(Target)社が、現在展開している複数のモバイルアプリをひとつにまとめようとしている。これまで同社は、うんざりするほど多くのアプリを実装してきたが、今回の統合によってモバイルショッピング、ロイヤルティプログラム、1カ所での支払いといった機能をあわせ持つアプリが誕生する。
ターゲット(Target)社が、現在展開している複数のモバイルアプリをひとつにまとめようとしている。これまで同社は、うんざりするほど多くのアプリを実装してきたが、今回の統合によってモバイルショッピング、ロイヤルティプログラム、1カ所での支払いといった機能をあわせ持つアプリが誕生する。
過去10年間に渡り、同社は消費者向けに多数のアプリを提供してきた。10年前に提供を開始したアプリの「ターゲット」、薬局アプリの「ヘルスフル(Healthful)」、結婚と出産育児アプリの「レジストリー(Registry)」、割引情報アプリの「カーホイール(Cartwheel)」、そして2018年にリリースされた同社のコネクテッドな照明システム用コンパニオンアプリ「ターゲットコネクテッド(Target Connected)」などだ。
現時点で、上記の消費者向けアプリのうちプラットフォームが稼働しているのは「ターゲット」と「ターゲットコネクテッド」、そして「レジストリー」の3つだ。ショッピング体験をなるべくメインのアプリである「ターゲット」に統合しつつ、残りのふたつは同社の中核をなす小売事業以外の特殊用途向けのアプリとなっている。「カーホイール」は2017年にメインアプリである「ターゲット」に統合され、「ヘルスフル」はサービスを停止した。
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小売企業各社のアプリ動向
アプリの統合を進めていくなかで、単一目的のプラットフォーム展開から脱却している小売企業はターゲットだけではない。ウォルマート(Walmart)は社内従業員向けに多数のワークフローアプリを展開しているが、消費者向けアプリはふたつに絞られている。一般的な買い物用アプリと、eコマースの日用品購入用アプリだ。ターゲットからはオンレコでのコメントは得られなかった。
小売企業向けアプリを開発しているデジタルエージェンシーのT3で戦略およびイノベーション部門でバイスプレジデントを務めるジェイムズ・ラニヨン氏は「『スーパーアプリ』を作ろうという動きは多い」と指摘し、「WeChat(微信)がもっとも良い例だろう。ビジネスにおける個人のすべてをひとつのアプリにまとめたものだ」と語る。
モバイルアプリは大規模店舗にとってもはや必須となっているが、維持には多くのリソースが必要になるうえに、もしもユーザー体験が悪ければカスタマーが離れていくおそれがある。小売分野では、実行能力や社内における問題からアプリの統合を進めていない企業も存在する。大規模小売店は、中核となるモバイルアプリにロイヤルティや支払い、配達、商品受け取りなど、さまざまな機能を盛りこんでいる。これはロイヤルカスタマーを囲い込むための戦略の一環だ。一方、複数のアプリを展開すると顧客層が分割されてしまうおそれがある。
アプリ統合の目的とは
デジタルエージェンシーであるワーク・アンド・コー(Work & Co.)の共同創設者ジーン・リーベル氏は、「カーホイール」と「ターゲット」の統合は、売上を伸ばすために行われたと指摘し、次のように予測する。
「ターゲットのアプリが統合されれば、オンラインショッピングの便利さに気づくカスタマーは増える。それによってロイヤルティプログラムに参加する人も増えるだろう。それによってショッピングの頻度や買物額の増加につながる」。
テッククランチ(TechCrunch)によると、割引アプリの「カーホイール」はメインアプリの「ターゲット」に統合された時点で、「ターゲット」以上に人気のアプリであり、人気ショッピングアプリの「TOP10」入りも果たし(メインアプリは「TOP20」)、4000万ダウンロードを達成していた。
この統合の目的はロイヤルティと割引、デジタルカタログを単一プラットフォームに統合して販売量を増やすことだ。
シームレスな体験が狙い
リーベル氏は、ほかにもショッピングと割引、ロイヤルティプログラムをひとつにまとめるメリットとして、モバイルでのシームレスな支払いの実現を指摘する。ターゲットは2017年にバーコード読み取り式のモバイル決済ツールである、「ウオレット(Wallet)」の提供を開始したが、これもメインアプリのTargetで使用される。
「統合もせずに店舗内でのモバイル決済をサポートするのは得策ではない。カスタマーが(プラットフォームごとに)複数回バーコードスキャンをしなければならなくなる場合がある」と、リーベル氏は指摘する。だが、統合にともなう困難もある。アプリ見つけてもらえるかという問題で、この問題に苦しむブランドは多い。
小売企業のクライアントも抱えているデータ分析企業ヤグアラのCEO、ジョナサン・スモーリー氏もまた、アプリ統合は潜在顧客を顧客にするために行われるものだと指摘する。同氏はターゲットが考えるべき点は現時点で、ターゲットのみを利用するほどのロイヤルカスタマーではないカスタマーや、ポストメイツ(Postmates)のような複数企業のプラットフォームで商品について詳しく調べるカスタマーの注意を引くことだとし、次のように述べた。
「今回の統合で、ほかのチャネルを利用しているカスタマーにどのような影響があるのか、とりわけミレニアル世代のカスタマーが増えるのかという点は興味深い。単一のアプリに統合すれば、(小売企業が)データを保有できるようになる。だが、アプリの統合によって、パーチェスファネルの最初の段階にあるユーザーが切り離されてしまわないように注意すべきだ」。
Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)