米大手量販店ターゲット(Target)は、オンラインで「カゴ落ち」しているカスタマーの問題に対処するため、そうしたカスタマーに特別割引コードを送り、実店舗へと誘導する試みを行っている。この機能は従来通り、オンラインでの購入が対象となっているのみならず、実店舗での商品受け取りも可能となっているという。
米大手量販店ターゲット(Target)は、オンラインで「カゴ落ち」しているカスタマーの問題に対処するため、そうしたカスタマーに特別割引コードを送り、実店舗へと誘導する試みを行っている。
同社の代表によると、カスタマーがカートに入れている商品のうち、セール対象となっている商品がある場合にメールで通知する機能を導入したという。それ以外にも商品を特別価格で販売する場合もある。この機能は従来通り、オンラインでの購入が対象となっているのみならず、実店舗での商品受け取りも可能となっている。データによると、実店舗の平均購入価格はオンラインでの平均購入価格よりはるかに高い。
オンラインにおけるショッピングカート内の商品の放置は、昔から小売企業の頭を悩ませてきた。オクタンAI(Octane AI)のCEOを務めるマット・シュリヒト氏によると、オンラインのショッピングカートのうち、70%以上が放置されているという。同社は1000以上のクライアントに対して消費者とのチャットを行うボットを提供しており、カゴ落ち率の低下に成功している。2016年末には、カゴ落ちによる収益減は、180億ドル(約2兆円)にも達すると推測されている。従来の対策では、オンラインの問題はオンラインで解決するというものだった。買物客がウェブサイトへ戻ってくるようにメールで通知するといった方法だ。だが、実店舗での販売における成功をオンラインで再現するのは容易ではないと、シュリヒト氏は指摘し、次のように語る。
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「実店舗であれば、商品を手にとって、カートに入れるのは実にたやすい。さらに質問があれば、店員に訊ねることができるから、購入に結びつく可能性は高くなる。カスタマーに対して、実店舗と同じようなレベルでオンラインでも気にかけてもらうには、どうすれば良いかを考えるべきだろう」。
ターゲットが狙うプラン
ターゲット社は具体的にどのようなオファーを行い、オンラインでカートを放置している客に実店舗で購入してもらっているのかについて明かさなかった。だが、同社と提携しているコンサルタントによると、実店舗ではオンラインよりもカスタマーの支払額が多いというデータがあり、同社はそうした傾向を活かそうとしているようだ。ターゲット社の実店舗は「1商品だけ買いに行ったつもりが、気がついたらほかの商品を20個も買っていた」というほど魅力的な売り方で有名だ。
カスタマーデータの入手も同社のこの戦略を後押ししている。前述のコンサルタントによると、ターゲット社のカートは住所と紐付けられているため、同社も1800以上ある店舗のうちから、近所にあり、かつ商品の在庫が残っている店舗を勧められるようになっているという。
「ショッピングしようとは思っているが、支払いまでは行っていない客がいるとする。そうした客に対して『そのシャツならすぐ近所のこの店で売っています。その店で購入するなら10ドル値引きできます』と伝える。つまり、ターゲット社は実店舗に行ってもらうためのインセンティブを払い、客にその店でほかにも買い物をしてもらうというわけだ」と、このコンサルタントは明かす。
これはオンラインと実店舗のあいだの溝をなくし、両者が混じり合ったクロスチャンネルのビジネスモデルを作ることで収益を最大化しようとする取り組みだ。物流において考慮すべき面もある。小売企業は、オンライン販売の商品を全国の倉庫や実店舗から調達しており、各店舗での在庫はオンラインで表示される在庫と一致しない場合もある。だが客に実店舗に来るように呼びかける場合は、店舗に実際に在庫があることを確認する必要がある。
客を知ることが最優先
カートを放置している客に対し、自動生成のメッセージであっても構わないので、その客の買い物履歴に合わせて低額で購入できる商品を新たに勧めることが売上につながると、シュリヒト氏は指摘する。
前述のコンサルタントは小売業者について、「客について知り、住所と好みについて知ることで、よりその客に合った商品を勧めることができる」と指摘している。
Michael Bodley(原文 / 訳:SI Japan)