マッチングアプリ「ティンダー(Tinder)」は、常に素晴らしい出会いを保証しているわけではない。だが、同じようなインターフェイスのeコマースアプリなら、自分に合った商品を見つけられる可能性は高いだろう。
商品を気に入ったら右にスワイプし、パスするなら左にスワイプする。スワイプ操作でイエスかノーかを答えるシンプルなインターフェイス設計が、ファッショングッズから食料品まで、さまざまな商品を販売するモバイルアプリで次々と採用されているのだ。
たとえば、スワイプ操作をするだけで、「スタイレクト(Stylect)」では「ジミー・チュウ(Jimmy Choo)」の靴を買ったり、「ブリンク・スタイル(Blynk Style)」では自分好みにカスタマイズされたコーディネートセットを買ったり、「ニブリー(Nibbly)」ではレストランを予約したりできる。いまや新しいブラウスを買う行為が、デートの相手を探すのと同じようにできてしまうのだ。
マッチングアプリ「ティンダー(Tinder)」は、常に素晴らしい出会いを保証しているわけではない。だが、同じようなインターフェイスのeコマースアプリなら、自分に合った商品を見つけられる可能性は高いだろう。
商品を気に入ったら右にスワイプし、パスするなら左にスワイプする。スワイプ操作でイエスかノーかを答えるシンプルなインターフェイス設計が、ファッショングッズから食料品まで、さまざまな商品を販売するモバイルアプリで次々と採用されているのだ。
たとえば、スワイプ操作をするだけで、「スタイレクト(Stylect)」では「ジミー・チュウ(Jimmy Choo)」の靴を買ったり、「ブリンク・スタイル(Blynk Style)」では自分好みにカスタマイズされたコーディネートセットを買ったり、「ニブリー(Nibbly)」ではレストランを予約したりできる。いまや新しいブラウスを買う行為が、デートの相手を探すのと同じようにできてしまうのだ。
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CVRを3倍から5倍に高められる
ビジュー・コマース(Bijou Commerce)のマネージングディレクターを務めるベス・ウォンド氏は、「ティンダー」の優れたUXに触発され、2015年にeコマース向けの「ティンダー」風インターフェイスの開発に着手。その後、1年間に約300のファッション企業が打診してきて、このインターフェイスを採用した。そこまで大きな反響を得た理由は何よりも、リアル店舗と同じような体験をモバイル上で買い物客に提案できたことにあるという。
「店舗で商品を見て回るときは、ラックに吊り下げられている服を次々と手に取りながら、好きか嫌いかを判断する。『ティンダー』のスワイプ操作も、うまく最適化することで、こうしたショッピング体験をモバイルにもたらすことができる」と、ウォンド氏は語る。
また、「ティンダー」風のインターフェイスは、一度にひとつの画像しか表示しないので、ブラウジング体験がシンプルになる。そのため、買い物客が1回の訪問でより多くの商品を見てくれる可能性が高まる。これに対し、ほとんどの小売業者のアプリでは、ひとつの画面に4種類から12種類程度の商品を提示してユーザーが選べるようにしているが、この形ではひとつひとつの商品を目立たせるのが難しい。
「シンプルでわかりやすいスワイプ操作を、うまく最適化した決済プロセスと組み合わせれば、標準的なモバイルサイトのベンチマークと比べてコンバージョン率を3倍から5倍に高めることができる」と、ウォンド氏は説明する。
単なる「アリナシ判定」以上の意味
ファッション系ショッピングアプリを手がける企業グラブル(Grabble)の共同創設者であるダニエル・マレー氏は、社内でHTML5を使って「タンブラー(Tumblr)」や「ツイッター」を模したインターフェイスの試作品を開発。その後、「ティンダー」のそれが自身のeコマースビジネスに最適なソリューションだと判断した。
「『ティンダー』のインターフェイスは、ユーザーが画面を楽しめる要素をもっとも備えており、(顧客ロイヤリティーの面で)もっとも良い結果が得られた。我々にとって至極当然の選択だ。シンプルさという点で、文句なしに勝者だった」と、マレー氏は振り返る。
グラブルのアプリは1日あたり150万回以上のスワイプ数を獲得しており、オーディエンスの3%をコンバージョンできているという。ほとんどのオンライン小売業者では、その割合が2%だと、マレー氏は語る。
しかも、このスワイプ数は、ユーザーがどの商品を好んでいるか、または好んでいないか(ほとんどの商品がこちらになるが)について貴重なデータをグラブルに提供してくれる。そのため、同社はよりターゲットを絞れるのだ。多くのデータを匿名化したうえで、グラブルの広告クライアントと共有し、アプリ上で記事広告を展開していると、マレー氏は、米DIGIDAYに対して語った。
商品検索には向いていない
eコマース向け「ティンダー」UIは、ウォンド氏やマレー氏のような起業家たちからは賢い投資だと考えられているが、モバイルアプリの製作を手がける企業フューエルド(Fueled)のディレクター、ライアン・メツナー氏は納得していない。
アプリ開発者でもあるメツナー氏は、これほど多くのeコマース企業が、自社のビジネスにフィットするかどうか考えもせずに「ティンダー」の流れに便乗する理由がわからないという。気に入った人の写真を右にスワイプすると、その人も自分を気に入ってくれていたことがわかるのは、個人的には楽しい体験だ。だが、商品は自分を好きになってはくれない。
「これはひどい流行だ。ショッピングはデートとは違う。商品はユーザーに話しかけることができないのだから」とメツナー氏は続ける。「その部分が欠けているから、こうしたアプリは気に入った商品を見つけられること以外の実用性がさらに必要になる」。
そのうえ、アプリ上で商品画面をスワイプする操作は、商品を1点ずつ見ながら探すには手軽な方法だが、目的の商品を検索するのには向いていない。モバイルショッピングで一番大切なのは、ベッドのなかにいるとき、飛行機に乗っているとき、電車を待っているときなど、スキマ時間に買い物できるようにすることだ。したがって小売業者は、ユーザーが効率の良いやり方で商品を検索できるようにしなければならない。
別の手法としてメツナー氏が挙げるのが、まとまったデザインと実用的な機能をもつ「アソス」というアプリだ。小売業者が見習うべきモデルだと同氏がいう「アソス」の検索ツールは、買い物客が商品を種類、サイズ、ブランド、価格、色別にフィルタリングして探すことができる。また、その店の服や靴、アクセサリーを身につけたモデルがキャットウォークをする様子をアプリ内で見ることも可能だ。
ほかにも新しい方法はある
eコマース向け「ティンダー」UIがモバイルユーザーインターフェイスの標準として広まるかどうかはわからないが、小売業者が利用できるデザインは、ほかにもたくさんあると語るのは、サピエントニトロ(SapientNitro)で顧客体験担当バイスプレジデント兼グローバルモバイル事業担当責任者を務めるデビッド・ヒューイット氏だ。たとえば、「iPhone 6s」と「iPhone 6s Plus」の新しい「3D Touch(3Dタッチ)」機能では、画面に加える圧力の加減でアプリを操作できる。これは、詳細の項目を簡単に表示するための、洗練された新しいジェスチャー操作だ。
また、さらに関連してヒューイット氏が挙げたのが、タッチ操作に適したカルーセル広告(スワイプして広告をめくれる広告)。これはFacebookやインスタグラムが提供しているもので、小売業者はソーシャルニュースフィード内にひとつの静的な広告ではなく、複数の商品画像を提示できるようになる。ショッピングを面白く、シンプルで、楽しめるものにしたいのであれば、eコマース企業はより多くの可能性を探り、さまざまなモバイルインターフェイスで実験をしてみるべきなのだ。
「我々は『ティンダー』に頼りすぎて、スワイプ式のインターフィエスしか採用しないというわけでは、まったくない。我々のポジションをベストに保ち、いつでも顧客が最高のショッピングを体験できるものであれば、何にでも取り組むつもりだ」と、グラブルのマレー氏も述べている。「今後もスワイプ操作を絶対に手放さないというつもりはないが、いまはこれがとてもうまくいっているのだ」。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Thinkstock / Getty Images