いま、スイムウェアブランドの競争が激しくなっている。スイムウェアは2020年には160億ドル(約1.7兆円)の市場であり、2025年には210億ドル(約2.7兆円)に成長するとアナリストは予想している。鍵となるセールスポイントは何か?
パンデミック下でスイムウェアブランドのなかには他のカテゴリーへの進出を急ぐブランドもあった。誰も旅行に行かないのに、水着が何の役に立つというのか? 実際にはパンデミック中もスイムウェアは売れ続けていたのだが、ソリッド&ストライプ(Solid & Striped)やアンディ(Andie)といったスイムウェアブランドは、先行きが不透明な状況で品揃えの多様化を図るべくアンダーウェアやアスリージャーの分野へとすばやく進出している。
しかし現在、新型コロナウイルスに関する規制が緩和され、北半球が夏になるにつれて奇妙な逆転現象が起きている。ミーアンディーズ(MeUndies)、アダムセルマン(Adam Selman)、コサベラ(Cosabella)、カップ(Cuup)、エヴァーレーン(Everlane)といったアンダーウェアやアスレチックのブランドがこの3カ月でスイムウェアを発売したのだ。アダムセルマンやコサベラなどいくつかのブランドは、ここ半年のあいだにスイムウェアの開発を始めたばかりである。
スイムウェアは2020年には160億ドル(約1.7兆円)の市場であり、2025年には210億ドル(約2.7兆円)に成長するとアナリストは予想している。このカテゴリーに新規参入する多くのブランドのおかげで、「リベンジ旅行」のトレンドに乗る準備ができている人にしてみれば、スイムウェアに関してはこれまで以上に多くの選択肢がある状態だ。
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競争が激化する水着ブランド
こうした状況でスイムウェアブランドの競争が激しくなっていると語るのは、5月にスイムウェアを発売したミーアンディーズのCMOジェレミー・ローウェンスタイン氏だ。
「水着は季節性の高いカテゴリーで、さらに人はワンシーズンに水着をせいぜい1着か2着しか買わないという傾向がある。このようにかなり売上が限られているなかで数多くのブランドが競合している」。
一方でスイムウェアのメリットはかなり利益が大きいという点だ。ミーアンディーズではウィメンズのワンピース水着の販売価格が約80ドル(約8850円)なのに対して、下着は約16ドル(約1770円)など、スイムウェアのほうが価格が高いが、ソリッド&ストライプCEOサラ・ランドマン(Sarah Landman)氏によれば、生産コストはアクティブウェアとほぼ同じだという。
アンダーウェアの製造経験もスイムウェアにはかなりうまく応用が効くと語る経営者も多い。たとえばコサベラでは、ブラジャーのサイズ展開を拡張し大きいカップをサポートするというノウハウを新しいスイムコレクションに応用している。同ブランドは2008年から2015年までスイムウェアを販売していたが、卸売りのみの販売だったこととコサベラがD2Cに移行しつつあったことからそのラインは廃止された。現在、コサベラのスイムウェアの再ローンチは7月初頭を予定している。
「大きめサイズのスイムウェアにニッチがあった」とコサベラのCEO グイド・キャンペロ氏は言う。「よいブラジャーのようなサポート力がありながらもスポーツブラのようには見えないというデザインはそう多くない。我々はそこにニッチがあると判断して、自分たちの力が活かせると感じた。このカテゴリーを開発するうえで、最初の大きなひと押しとしては大きめのサイズをサポートすること、それからほかのサイズへ展開してマーケティングを開始する予定だ。プチサイズも同様に用意する」。
差別化したセールスポイントがカギ
このカテゴリーには圧倒的に多くの新規および既存のブランドが存在するため、ブランドは計画もなしにただローンチするわけにはいかないとキャンペロ氏は言う。コサベラではサイズ展開が他社との差別化を図ったセールスポイントとなるだろう。一方で創業者の名を冠したブランドであるアダムセルマンの特徴となるのは他のブランドよりも大胆でセクシーなスタイルだ。セルマンはスイムウェアラインをD2Cのみで販売している。
「昔からあるトライアングルビキニはやりたくなかった。みんながやっているからだ。誰もつくっていないGストリングをやりたいと思った。Tバックをやっているブランドはいくつかあるが、完全なGストリングを本当につくっているブランドはない。いまのところそれが最大のヒット商品になっている。商品の多い分野なので、とにかく自分たちが目立つようにしたい」(セルマン氏)
ミーアンディーズのセールスポイントは、その持続可能なストーリーにある。すべてのスイムスーツは再生ペットボトルやリサイクルされた漁網で作られている。同ブランドでは30万人のサブスクリプションメンバーに向けてスイムウェアのマーケティングを行っているが、ローウェンスタイン氏いわく、シーズン中はメンバー以外への販売も徐々に増やしていくとのこと。
コサベラは昨年のD2Cの売上高が50%を超えたばかりだ。2021年度はD2Cがすでに55%に達しており、来年は60%になると予想される。全体としてコサベラの売上は2020年の間に30%伸びている。
アダムセルマンはミーアンディーズやカップと同様にスイムウェアは完全にD2Cで販売する予定だ。ミーアンディーズは2020年11月に4000万ドル(約44億2100万円)の資金調達を行っている。
「季節が変わるのが早いので、水着はD2Cが一番合っている」とキャンペロ氏は言う。「このカテゴリーには多くのD2Cブランドがあふれているが、そのすべてに勝つことはできない。しかし自分たちがうまくやれるとわかっていることならできるのだ」。
[原文:Swimwear is becoming fashion’s most crowded category]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)