人気ストリートウェアブランドのシュプリーム(Supreme)が、パットマクグラスラブス(Pat McGrath Labs)とのコラボレーションで、ビューティ分野に参入することになった。近年増えているビューティとストリートウェアのあいだでの繋がりの例がひとつ増えた形だ。
人気ストリートウェアブランドのシュプリーム(Supreme)が、パットマクグラスラブス(Pat McGrath Labs)とのコラボレーションで、ビューティ分野に参入することになった。近年増えているビューティとストリートウェアのあいだでの繋がりの例がひとつ増えた形だ。
8月17日に発表された内容によると、パットマクグラスラブスはシュプリームのブランドカラーとして知られた赤色「シュプリーム・レッド」だけの口紅をローンチする。この色をパットマクグラスラブスによる特別な製造法でリップにした。これによって、シュプリームの26年におよぶ歴史のなかで、初めてビューティプロダクトをローンチしたことになる。パットマクグラスのインスタグラムによると、この口紅はシュプリームのウェブサイト上において、2020年の秋冬のいずれかにおいて、ドロップスタイル(シーズンごとにではなく不定期に製品を発売する方法)でローンチされるようだ。ローンチの日付はまだ発表されておらず、パットマクグラスのウェブサイトではアップデート告知を受け取る申し込みができる。
シュプリームも、パットマクグラスラブズもどちらもそれぞれ、10億ドル(約1062億円)の価値が推計されているが、マクグラスはこの企業価値を4年という圧倒的に短い期間で達成した。業界を代表するメイクアップアーティストとしてキャリアを成功させたあと、彼女はブランドを2016年にローンチ。2019年、タイム誌(Time)のもっとも影響力のある100人に選ばれた。
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ストリートウェアとのパートナーシップに対する、ビューティ業界の興味関心は、近年ますます大きくなっている。ルイヴィトン(Louis Vuitton)からオレオ(Oreo)といった老舗のブランドたちがシュプリームと関わることで、ブランドの影響力を得ようと急いだ。しかし、パットマクグラスラブズのケースでは、両社にパートナーシップの恩恵があると言える。
「ブランドとしての誠実さ、そしてカルチャー面での信頼も大きい企業とのパートナーを組んでいる点で、シュプリームにとっても良い」と、アップショット・エージェンシー(Upshot Agency)のマーケット・インテリジェンス部門バイスプレジデントであるリズ・アヴィレス氏は言う。
やり方を学ぶビューティブランドたち
ストリートウェアとビューティのコラボレーション自体がまったく新しい現象、というわけではない。昨年からその動きは台頭しつつある。マック・コスメティクス(MAC Cosmetics)はこの種のコラボレーションを2005年のアベイシングエイプ(A Bathing Ape)コレクションで開拓した。エスティーローダー(Estée Lauder)とマリン アンド ゴッツ(Malin + Goetz)はともに、2019年にキス(Kith)とのコラボレーションをローンチしている。一方で、メゾン・キツネ(Maison Kitsuné)もまた、ビューティコラボレーションをローンチしてきたことで知られている。2017年の韓国ビューティブランド3CEとのコラボレーション、2019年のシュウ ウエムラ(Shu Uemura)とのコラボレーションなどだ。
ストリートウェアブランドとのパートナーシップを行うことで、老舗のビューティブランドたちはより若い購買層におけるブランド認知を高めることができ、限定販売のセールスモデルから生み出される希少価値を持つことができる。
ビューティブランドたちはここ数年、ストリートウェアブランドたちのやり方から学んできた。ブランデッドマーチャンダイズや限定商品のドロップモデルを活用する、といった具合だ。またストリートウェア分野をプロモーションに活用する方法も増えている。KNCビューティ(KNC Beauty)は昨年のコンプレックスコン(ComplexCon)でホットピンク色のブースを出展した。
「創造的な破壊を行うコラボレーションこそがエスティローダーの戦略の重要な要素となっている。新しい世代の消費者に予想しなかった方法でリーチしたいと考えている」と、エスティーローダー カンパニーズ(The Estée Lauder Companies)のグループプレジデントであり、エスティーローダーとエアリン(Aerin)のグローバルブランドプレジデントであるステファニー・デ・ラ・ファヴェリー氏は言う。「(キスのファウンダーであるロニー・フィーグ氏と)パートナーを結ぶことで、我々エスティローダーのファウンダーのストーリーを、新しいレンズを通してこの世代に語るチャンスをもらった」。
限定性がパートナシップ成功のカギ
キスとマリン アンド ゴッツのコラボレーションは「多くの意味で新しい顧客をもたらした」とマリン アンド ゴッツ共同ファウンダーのアンドリュー・ゴッツ氏は言う。キスのパートナーシップのおかげでマリン アンド ゴッツはブランドとして「非常に若く、ミレニアルで、デジタルに精通した、意識の高い顧客」にリーチすることができたとのことだ。
ブランドとして確立された大手とストリートウェアがコラボレーションを行うことで、消費者の「新しさを求める気持ち」にアピールすることができると、アヴィレス氏は言う。「ブランドにとっての課題は、昨今はカルチャーが非常に素早く変わっていくことだ。我々全員が体験している、常につながった状態がその一因だ。常に新しいものを全員が探している」と語った。
「キスの場合は特に、我々よりももっと限られたフォロワーとビジネスモデルを持っていた」とマリン アンド ゴッツ共同ファウンダーのマシュー・マリン氏は言う。マリン アンド ゴッツとキスのコラボレーションが2019年9月にローンチした6つのプロダクトは、ふたつのブランドによって限定的に販売されたが、マリン アンド ゴッツのオンラインストアでは数百しか在庫を持たず、キスが在庫の大部分を抱えた。このコレクションは売り切れになったキャンドルを除いて、まだキスのオンラインで入手可能だ。売り切れのキャンドルもストリートウェアの再販サイト、グレイルド(Grailed)で販売されることがある。
「成功するパートナーシップには必ず強い限定性がある。いつでも何でも欲しいものは手に入る世界において、限定であることが特別さを生み出すのだ」と、ゴッツ氏は説明する。
関係の結び方も目的によって変わる
ストリートウェアパートナーシップの関係性、そして双方のあいだで結ばれる経済的な契約内容は、ブランドがどれほど「クール」になるために、ストリートウェアのブランドに頼ることになるか、にかかっている。
「ブランドを刷新して『若者にとっても重要視されるようなブランドにしたい』と考えた結果、ストリートウェアのパートナーを探しているのであれば、ストリートウェアのパートナーの方が優位な力を持っているだろう。これらの関係性には平等なものもあれば、片方に偏っているものもある」と、アヴィレス氏は語った。
[原文:Supreme’s Pat McGrath collab heightens beauty’s streetwear ties]
LIZ FLORA(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)