ビューティインキュベーターのスーパーオーディナリー(SuperOrdinary)創業者でCEOのジュリアン・レイス氏。中国のビューティ市場に話題性の高い米国の美容ブランドを中国のEC経由で持ち込んだ。どうすれば中国市場への参入を成功させられるのかという悩みを多くの人が持っている。成功する中国進出のノウハウとは?
自分は主流から外れたキャリアパスを歩んでいる、と話すビューティインキュベーターのスーパーオーディナリー(SuperOrdinary)創業者でCEOのジュリアン・レイス氏。彼は従来の金融業界出身だが、そのときの経験がeコマースのビューティ市場の可能性を理解するきっかけとなったという。
「eコマース1.0はまだ始まったばかりだった」と当時を振り返ったレイス氏は、2013年にシンガポールで金融関係の仕事をしていた際、レーザーフェイシャルを扱うスキンランドリー(Skin Laundry)の成長を支援することに成功した。しかし中国のビューティ市場における彼のイノベーションはそれで終わりではなかった。
「レーンクロフォード(Lane Crawford)のような大型店など、多くの高級店のカウンターが中国人観光客に占有されていることに気づいた。彼らは大量の製品を購入して中国に持ち帰っていた」と言うレイス氏は「この問題をもっと効率的な方法で解決する」ことを自分の使命だと決意する。
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レイス氏は中国には多くのマーケティングエージェンシーや貿易パートナーが存在することを知っていたが、流通やマーケティング、インフルエンサーとの関係など「すべてをひとつ屋根の下にまとめた完全なサービスを提供している会社はなかった」と指摘する。
このギャップを埋めるべく、レイス氏はスーパーオーディナリーを設立、ファーマシー(Farmacy)やドランクエレファント(Drunk Elephant)といった話題性の高い米国の美容ブランドをECサイトのTモール(天猫)経由で中国に持ち込んだ。会社としては昨年だけで9000万ドル(約98.6億円)の売上を達成しているが、まだまだ成長の余地があるとレイス氏は断言する。
レイス氏いわく、スーパーオーディナリーはこの分野で「ブランドの腕となり、目となり、耳となる」という役割を担っている。「我々が行ったことは、ブランドのDNAを確実に理解し、それが現地の市場で通用するかどうかを確認するために、協力しているすべてのブランドひとつひとつにフォーカスすることだった」。
そしていま、レイス氏はそのノウハウを米国とAmazonという別の巨大市場とプラットフォームに適用しようとしている。
以下に対談のハイライトをわかりやすく編集する。
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消費者が求めているものをリバースエンジニアリングする
「私の戦略は、流通の専門性を高め、我々が事業を展開しているそれぞれの現地市場に合わせてすべてのブランドをローカライズすることだ。間違いなくもっとも重要なのは、消費者とつながり、その消費者が誰なのかを真に理解すること。それはまた同じブランドやほかのブランドの類似商品を消費者に再販するために、その消費者から得たデータを利用することでもある。そのような専門知識をいったん身につけたあとは、こうしたチャネルを活用して消費者が何を求めているのかを知り、それをリバースエンジニアリングして、その消費者の要望に応えるブランドを見つけてくることが非常に重要となる」。
「そこで我々は少数のブランドへの投資に手を出すことにした。手を出すと言ったのは、我々にとって本当にまったく新しい試みだからだ。我々は世の中にあるものとは異なるブランド、しかし自分たちが価値を生み出せるブランドや、付加価値を与えられると考えるブランドを探している」。
中国市場の表と裏
「どうすれば中国市場への参入を成功させられるのか、誰もが頭を悩ませている。多くの人がその決断を迫られるだろうし、当然ながら協働できるパートナーもたくさん存在する。私のアドバイスとしては、慎重に検討すること。なぜなら事業を進めるのにかなり高くつくからだ。問題は、中国に進出して成功しなかった場合、その失敗をすぐに立て直すのは非常にむずかしいという点だ」。
「現在の中国市場はオープンになってきていて、製品を販売するチャネルがどんどん増えてきているため、とてもエキサイティングだ。最近見られる変化のひとつに、消費者が中国内で製品を購入するようになったことがある。以前は、消費者は海外で購入した製品を持ち帰っていた。しかしいまはそうした免税店のチャネルがすべて導入されていて、国内旅行が多い最近の旅行者にしてみれば商品を探すのがとても楽しみな状況になっている」。
従来のビューティビジネスモデルから一歩踏み出す
「従来の美容企業のビジネスモデルは、ビューティブランドを立ち上げ、オンラインで関係を築き、D2Cチャネルを構築して、それからオーストラリアのメッカ(Mecca)や米国のセフォラ(Sephora)かアルタ(Ulta)といった大型コスメ専門店、そしてアジアや東南アジアへと進出するというものだった。我々はそれとは逆のことをしている。それに別の視点でとらえてもいる。たとえばインドの消費者があるチャネルで購入しているとするなら、我々はそのチャネルでスーパーオーディナリーが確実にオペレーションするようにする。あるいはベトナムの消費者が別のチャネルで購入しているなら、我々はそのチャネルで確実にオペレーションしたい。スーパーオーディナリーは、これらのアクセスできない市場にビューティブランドがアクセスできるようにすることを目的としている。いったん強力な専門知識を開発し、そうしたことができるようになれば、それらの投資をいくつか行ってブランドを購入し、美容製品売り場に数多くの商品を並べることができるだろう」。
[ 原文:SuperOrdinary CEO Julian Reis on being exactly where the customer is]
NITYA RAO(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)