「宇宙世紀」のあの人たちに学ぶ、ブレないマーケティング:「BACKSTAGE 2018」レポート

見える、見えるぞ! 私にも、マーケティングが見える!

体験型マーケティングのカンファレンス「BACKSTAGE 2018」が2018年8月29日、虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された。そのなかで、少しばかり風変わりなセッションが、クー・マーケティング・カンパニー代表取締役で『なぜ「戦略」で差がつくのか。』の著者である音部大輔氏とDIGIDAY[日本版]事業統括・田中準也が登壇した、「ヒントは宇宙世紀にあり! 二手、三手先を読みながら考える、イベント・マーケティング」だ。

その内容は、言わずもがな、タイトルで示すとおりとなっている。念のため説明しておくと、某国民的ロボットアニメに登場する個性豊かなキャラクターたちの格言とも言える名台詞から、マーケティング戦略のあり方を読み解くという内容だ。両者ともその作品の大ファンであることから、実現した企画だという。

「ここに登場する数々のセリフは、ファンであれば一度はミーティングやブレストで使ってしまったことがあると思う」と、田中は説明する。「これらは、ひとつの作品という枠に留まらない示唆に富んでいる」。

本記事では、このセッションの内容を、音部氏の言葉を中心に展開していく。なお、添えている写真については、あくまでイメージだ。内容とは関係ない。

 

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「戦いとは、常に二手三手先を読んで行うものだ」

ー シャア・アズナブル

「マーケティング戦略にも通じる思考だが、その通りと思いつつも、そうそう簡単にできるものではない。不測の事態は起きるものだし、そもそも競合が自分たちの予想通りに動くことはまずないだろう。しかし、この台詞はニュータイプのみに許されたものでもない。この一手の次にどのような二手、三手が来るべきか考えるのではなく、達成すべき目的に準じて三手先から考えればいい。そしてその手前で二手先を、さらに手前で一手目を考える。ゴールから遡って最初の一手を策定するため、三手に収めず五手、十手先を考えれば、対応範囲はさらに広くなるだろう」。

 

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「美しいもの(戦略)が嫌いな人がいて?」

ー ララァ・スン

「とはいえ、やはり戦略は漫然と思考するのではなく、美しく立案したいもの。美しいとは、資源の投下効率が高いことだ。より具体的に手を捉えるなら、マーケティング活動全体を把握できる設計図『パーセプションフロー・モデル』を用いることで、多岐にわたる一連の活動や関係を可視化することが可能になる。これにより、それぞれの施策の手前あるいは事後に、どのような活動があるのか理解でき、目標に向けてブレることなく進む、相互に一貫性のある、より効果的・効率的な活動を計画・実行可能になる」。

 

「こういうとき、慌てたほうが負けなのよね」

ー ハヤト

「計画を進めて行く途中、競合が不測の行動をとった場合はどうすべきか。いたずらに競合の動きに即応する必要はない。競合のイベントや取り組みを真似することは一見、環境の変化に対応しているように見える。自らの活動量を上げ忙しくなることで、自分たちが安心できる効果もある。しかし、目的達成という観点からは、必ずしも実効性の高いものではないかもしれない。慌てずに見極めるべきは、競合の活動が自分たちの目的あるいは資源にどのような影響を与えるのか。同じカテゴリーにいる競合の活動でも、必ずしも自分たちの資源にダメージを与えたり、目的を阻害したりするとは限らない」。

「そうそう当たるもんじゃない」

ー シャア・アズナブル

「経験的には、ブランド劣化の約7割は自分たちに起因するもので、競合の圧力ではない。自分に向けて撃たれたわけでもない弾に、無用に動揺する必要はない。競合の活動が自分たちへの『直撃コース』であれば、相手の投資がこちらにも有利に働く可能性がないか考えてみる。自分たちが属するカテゴリーのメディア露出などが増えるのであれば、場合によって歓迎すべきことだとも考えられる。ダメージを受けるとしても、どの資源や目的にダメージを受けるのか予測できていれば、効果的な対処法を取れるだろう」。

 

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「圧倒的じゃないか、我が軍は」

ー ギレン・ザビ

「競合が思わずこう言いたくなるほど優位で、自分たちが強いレベルの圧力を受けそうなときは、虚をつくべき。つまり、競合が重視していない消費者やベネフィットに注目する、競合の圧力を受けにくいチャネルやカテゴリーでの目的達成に主目的を切り替えるなど、巨大な敵の相対的に弱い面を狙って資源を集中する。ビグザムを相手にしたスレッガー中尉のGファイターは、比較的対空防御の薄いビグザムの基底部を狙い、あそこまで近接できた。ドズル・ザビのように、『やらせはせんぞ!』とばかりに正面から向かうのは、オススメできない。虚を突く間もなく、守勢に回らざるをえないほど圧力が強いのであれば、既存ユーザー向けの施策を優先する。拠点の確保はときに重要な策であり、全体で圧倒されていても有利な局面を見出すことができれば、戦局を変えることも不可能ではない」。

 

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「ジオン(競合)に兵なし」

ー レビル将軍

「前述とは逆に競合が脆弱で、自分たちがこう言ってしまうような状況の場合は、資源量にものを言わせて目的達成を押し進める、ドズルの『戦いは数だよ、兄貴』を実証すればいい。彼我の資源比に差があれば、不測の事態の対処にも余裕が持てるはずだ。どのような状況を迎えるにせよ、あらかじめマーケティングの全体像をひとつの設計図で用意しておくことは、計画の全体最適を測る上で重要になる。さもないと、各コミュニケーションやイベント、プロモーションなどが、それぞれ個別最適に向かっていかないとも限らないからだ。経験的には、多くの企業が設計図なしでマーケティングに臨んでいるが、設計図を実装することでマーケティング予算の投下効率をおよそ20%から、場合によっては数倍にまで上げられる」。

「モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを教えてやる」

ー シャア・アズナブル

「『モビルスーツの性能』をマーケター用に言い換えるなら、『マーケティング予算』や『イベント予算』『製品性能』『イベント動員数』など、『見た目の資源総量』となる。質と量は対比されることが多いが、『高品質なので低品質の半分量で機能する』事象がある場合、高品質であることが低品質に対して倍量の係数として機能している。つまり、ポイントとなるのは量。『見た目の資源量』に対して、『実際に使える資源量』をいかに増やすかが重要だ。生産速度の遅い製造ラインは、単位時間あたりの生産個数が減るので、製品の製造単価が高めになってしまい、一見優越性の高い資源とは思えない。一方で、頻繁な商品改良や仕様変更に対応しやすい、という利点もある」。

 

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「自分の力で勝ったのではないぞ。そのモビルスーツの性能のおかげだということを忘れるな」

ー ランバ・ラル

「『強いということは資源量が多いこと』だと理解できれば、この台詞も理解しやすくなる。『勝った』とは、実質的な投下資源量が多かったということ。その中でも、モビルスーツの性能が目に見えて大きかった。だからそれ以外の要素が多少小さめであっても勝てたのだと理解できる。多くの場合、『見た目の資源量』は時間、お金、人員、技術や設備など限定的な要素であり、その量を自由にコントロールはできない。だが、視点を変え見た目には現れにくいものを見出すことで、『実際に使える資源量』を大きくすることができる。大局的な視点を持つことは、優れた戦略を策定するのにとても重要なスキルになるだろう。そうなれば、こう言えるようになるかもしれない」。

「ドズル中将もコンスコンも目の前の敵しか見ておらん。その点キシリア殿は違う。戦争全体の行く末を見通しておられる」(シャア・アズナブル)。

君よ、つかめ。マーケティングの極意を

数々の名言から、マーケティングの極意をつかむ糸口が見えただろうか。ある意味で「身近」な、そして人によっては強い思い入れのある題材がテーマとなっていたこともあり、セッション会場は大いに盛り上がりを見せた。ニュータイプへと覚醒したマーケターも、いたかもしれない。

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君は、このデジタルマーケティングの中を生き延びることができるか。

※ DIGIDAY[日本版]は、Backstage2018のメディアスポンサーです。

Written by 分島翔平
Photo by Shutterstock