スタイリングサービスの スティッチフィックス (Stitch Fix)は、より多くの場面で同社のビジネスを利用してもらえるよう、新しいセレブやインフルエンサーを起用している。同社は1月12日、テニス界のスターであるビーナス・ウィリアムズ氏を起用したマーケティングキャンペーンを開始した。
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スタイリングサービスのスティッチフィックス(Stitch Fix)は、より多くの場面で同社のビジネスを利用してもらえるよう、新しいセレブやインフルエンサーを起用している。
最新の活動として、同社は1月12日、テニス界のスターであるビーナス・ウィリアムズ氏を起用したマーケティングキャンペーンを開始した。キャンペーンの一環として、ウィリアムズ氏はスティッチフィックスの各種ソーシャルメディアチャンネルで、「ジム恐怖症を克服する」ためのヒントを紹介している。スティッチフィックスのスポークスパーソンによれば、今春には、ウィリアムズ氏のアクティブウェアブランドであるエレベン(EleVen)の商品を、同社のアラカルトのショッピングサービスであるフリースタイル(Freestyle)で購入できるようになる。
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「フリースタイル」で新顧客層にリーチ
スティッチフィックスが規模を拡大するにつれ、同社はブランドのマーケティングキャンペーンに、ウィリアムズ氏のような著名人を起用することができるようになった。たとえば同社は昨年秋、男性向けスポーツジャケットの独占販売ラインをプロモーションするため、3人のNFLプレイヤーと提携した。しかしスティッチフィックスはここ数年、メンズやプラスサイズを中心としたスタイリングサービスから、2021年9月に立ち上げたフリースタイルに至るまで、新しいサービスのプロモーションを、常にインフルエンサー主導のキャンペーンに頼ってきた。
スティッチフィックスが、自分専用のストアでパーソナライズされたお勧め商品を購入できるフリースタイルを立ち上げたのは、衣服の入った箱を定期的に受け取る契約を希望するような顧客だけではなく、より多くの顧客を対象にするという目標を掲げているからだ。スティッチフィックスは、長く存続するにつれ、新しいサブスクリプション会員の獲得がより困難になってきていた。そうしたなか、同社はフリースタイルによって収益を増やす方法を得られることになった。
小売アナリストは、こうしたマーケティングキャンペーンにおける同社の目標は、顧客が新しいワークアウト用レギンスや、パーティー用のドレスを購入するとき、最優先でスティッチフィックスを検討するよう仕向けることだと述べている。
小売コンサルティング企業のエー・ライン・パートナーズ(A Line Partners)の創設者であるガブリエラ・サンタニエロ氏は、「フリースタイルとは、まさにオンラインショッピングだ」と述べている。同氏は、同社が直面している課題は、衣料品に関するすべてのニーズを、ほかの大手小売業者や百貨店ではなく、スティッチフィックスで満たすように顧客を説得することだと語っている。
新たな収益源としての可能性
12月に行われた、スティッチフィックスの会計年度第1四半期の決算発表で、同社は収益が前年比で19%増加し、5億8100万ドル(約668億円)に達したと報告した。しかし同社は、クライアント数の純増は期待を下回ったとも報告している。
最高財務責任者を務めるダン・ジェッダ氏は、同社がフリースタイルを立ち上げて以来、「新しいクライアントの獲得とオンボーディングの方法に関して繰り返し取り組んで」おり、これがコンバージョンに影響を与えたと、決算説明会で説明した。同社は、この四半期にフリースタイルからどれだけの収益が得られたかを明らかにしていない。
スティッチフィックスのCEOを務めるエリザベス・スポールディング氏は12月、フリースタイルを展開する一方で、「マーケティングの支出を抑えたい」と発言していた。しかしジェッダ氏は、スティッチフィックスは今年、フリースタイルの新たなマーケティングチャネルとして、Google Product広告やインフルエンサーマーケティングなどに注力すると述べている。スポールディング氏によると、同社は「インフルエンサーが厳選したキュレーションアイテム」のテストも開始したという。
スティッチフィックスが9月にフリースタイルを立ち上げたとき、同社はこのサービスを「自社のスタイリングサービスを通じて収集した、人々のスタイルの好みとサイズに関するデータポイントすべてに基づき、従来型のeコマースサイトよりもパーソナライズされたもの」と位置づけていた。「当社は、顧客にぴったりとフィットするサイズと、顧客のパーソナルなスタイルに合う衣服を顧客に提示する」と、スポールディング氏は以前ファストカンパニー(Fast Company)に語った。
ただし、フリースタイルの立ち上げは、スティッチフィックスの数千人ものフルタイムとパートタイムのスタイリストとのあいだに緊張も引き起こした。彼らは、サブスクリプション会員に送る衣服を選択するため、同社が長年信頼を置いてきた人々だ。フリースタイルを立ち上げたのは、スティッチフィックスがスタイリストに対して一日のなかで働ける時間帯を制限したことに反発し、数百人のスタイリストが一斉に退職した約2カ月後のことだった。
スティッチフィックスのスタイリスト用のレディット(Reddit)グループでは、インスタグラム広告でフリースタイルだけをプロモーションしているときがあることを指摘し、今後同社がフリースタイルへの依存度を下げるかを疑問視するスタイリストもいる。
プロモーションのインパクトと課題
またスティッチフィックスは長年にわたり、同社のスタイリングサービスをさらに多く使用することを望む、さまざまなタイプの買い物客をターゲットにするため、インフルエンサーたちと協力してきた。2017年には、プラスサイズの買い物客に特化したセレクションを開始し、ここ数年はプラスサイズのインフルエンサーであるケイティ・ストリノ氏と協力して限定版コレクションをリリースした。昨年秋には、NFLプレイヤーのカイル・ピッツ氏、マーキーズ・グッドウィン氏、フレッド・ワーナー氏と共同で、スポーツジャケットの限定コレクションをリリースした。2016年には、男性向けスタイリング・サービスを開始した。
ジェーン・ハリ・アンド・アソシエイツ(Jane Hali & Associates)で小売調査アナリストを務めるジェシカ・ラミレズ氏は、今後数カ月におけるスティッチフィックスの課題は、同社がリーチしたいと考える買い物客、特に同社の通常の顧客層以外の人々に、これらのキャンペーンを確実に覚えてもらうことだと語る。同氏は、インフルエンサー主導のキャンペーンの中には、「限定的」だと感じられるものもあるという。
「たとえば、プラスサイズ向けの衣服があることは知っている」とラミレズ氏は付け加えた。「私は、アナリストとして常にそれを見ているが、それは1回限りのタッチポイントのように感じられる」。
[原文:Stitch Fix is leaning on celebrities like Venus Williams as it tries to expand its customer base]
Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Stitch Fix