まとめ:Google&Facebookとの「ニュース対価」戦争、各国の状況

各国のパブリッシャーはこの10年、無料プラットフォームがパブリッシャーコンテンツ配信で得た利益の払い戻しを求めて、Googleと、さらに最近ではFacebookとバトルを続けてきた。コロナ禍によって誘発された景気後退のさなかで、パブリッシャーの売上の追求がますます逼迫したものとなり、彼らのちょっとした小競り合いは徐々にヒートアップしている。

衝突の内容は地域によってさまざまだが、繰り返し起きる類似点がいくつかある。規制当局は、共有されたコンテンツでパブリッシャーが報いを受けられるよう、独占的なテックプラットフォーム上での「条件を平等にする」ことを望んでいる。だが、批評家やプラットフォーム側は、規制当局はインターネットをベースとしたビジネスモデルを理解しておらず、充分に適応できていないと証言している。

デュオポリー(複占)をなすFacebookとGoogleはさらに、資金提供やFacebook Watch(ウォッチ)のようなコンテンツライセンシングプログラム、キャリッジ料を通じてニュース業界をいかに支援しているかを指摘し、ニュースからの収入は決して多くはなく、パブリッシャーにとって収益化につながるトラフィックを提供し続けていると主張する。

ニュースへの無料アクセスやジャーナリズムへの資金提供といった民主主義のイデオロギーが、口論のなかで飛び交っている。今回の記事では、世界各国の規制当局やパブリッシャーが、これらのプラットフォームにどうやって対価を支払わせようとしているかの例を紹介していこう。

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強固なアプローチをとるオーストラリア

オーストラリアの議員ならびに反トラスト監視機関であるオーストラリア競争・消費者委員会(Australian Competition and Consumer Commission:以下、ACCC)は9月はじめ、オーストラリアのFacebookおよびインスタグラム上でのニュース共有を停止するというFacebookの脅しは──まさにパンデミックのときに──「タイミングが悪く、見当違いの行為」との声明を出した。

ACCCは2020年7月、ニュースメディア交渉法(News Media Bargaining Code)の草案を提出した。この法案が通れば、パブリッシャーのコンテンツがサービス上で扱われた場合、各プラットフォームはパブリッシャーへの対価の支払いの交渉を行うことが義務づけられるようになる。各プラットフォームはさらに、ニュースの表示位置に影響するかも知れないアルゴリズムの変更を行う際には、パブリッシャーに対して28日前に事前警告をしなければならなくなる。またテック企業に対しては、ニュースコンテンツとやりとりをしたユーザーについて彼らが集めるデータの提供が義務づけられる。

Facebookの脅し

Facebookは、この法案が通れば、「不本意ながら」ニュース共有を停止することになると公言した。同社は、2020年1月~5月のあいだに、Facebookのニュースフィードからオーストラリアのニュースウェブサイトに向けて23億クリックを送り、2億豪ドル(約153億円)相当の価値があるトラフィックをパブリッシャーにもたらしたと述べている。

揺れるGoogle

DIGIDAYが2020年8月に報じたように、Googleもまた、(「オージーたちのGoogleの使用が危機にさらされている」という)ポップアップ広告を出したり、公開書簡を出したり、怪しげな情報を流したりして、この法案をめぐって監視機関や議員たちを攻撃したが、議員たちからの猛反発をくう羽目に陥った。

Googleの広報担当者は次のように述べている。「この法案は現在の形では使い物にならない。我々は現在、我々のサービスを危険にさらさず、ニュースメディア企業と建設的なパートナーシップ構築を継続できる、実行可能な結果を達成する取り組みにフォーカスしている」。

法案を批判する人々

メディアアナリストのベン・トンプソン氏は、メディア界の大物、ルパート・マードック氏がオーストラリアの報道機関のほとんどを所有しており、FacebookとGoogleの最大の批評家だと指摘する。

オーストラリアだけでなく、ブルームバーグ(Bloomberg)の意見記事も、パブリッシャーのビジネスモデルは、GoogleとFacebookによって乱されたが破壊はされていないとし、その収益に責任を負うべきだと論じた。同様に、プラットフォーム側は、ニュースからの収入は限定的だと何年も主張し続けてきた(Facebookのニュースフィードに占める「ニュース」の割合は約4%、Googleは、オーストラリア国内での検索のうち、現在の出来事に何らかの関係があるものは1%に過ぎないとしている)。

EUで初めて行動を起こしたフランス

フランス競争委員会の委員長を務めるイザベル・ドシルバ氏は9月はじめ、テキストのスニペットを表示するためにパブリッシャーに報酬を支払うべきかどうかに関するGoogleとの過去3カ月にわたる交渉は「失敗」に終わったと述べた。覚悟したほうがいい。スニペットについては、欧州のパブリッシャーからたびたび苦情が寄せられていた。

フランスでは2019年9月、Googleはパブリッシャーに対してテキストのスニペットの表示代金を払う必要があるとの決定を下した。これによりフランスは、著作権法改革を全面的に見直し2019年3月に投票・可決された汎EU法を実際に発効させたEU初の国となった。この改革では新たに著作「隣接」権が導入され、ニュースアグリゲーターやメディア監視サービスを通じてコンテンツが入手可能になった場合に、ニュースパブリッシャーが自身の投資を取り戻すことができるようになった。

翌4月、フランス競争委員会はGoogleに、パブリッシャーと交渉することを命じた。検索エンジンの巨人がGoogleニュースの結果表示ページを再デザインし、スニペットを編集してヘッドラインとURLだけを表示するようにしようとしていたからだ。競争委員会はGoogleのこの動きに反撃し、これは反競争的であり(Googleは欧州の検索市場の90%を占めている)、「報道セクターに直ちに、しかも深刻なダメージを与える」ものだと判断した。Googleは交渉期間中、スニペットを復活させなければならなくなった。

Googleの反応

Googleの広報担当者はこう述べている。「フランス競争委員会の決定を受け、我々はフランスで、この3カ月間、同国のパブリッシャー協会やニュースエージェンシーと30回以上会い、著作隣接権やその他を網羅する複数の提案をしてきた」。

今後の動きは

フランス競争委員会は9月10日に公聴会を開き、4月に要求されたとおりにGoogleが「誠意を持って」交渉に応じたかどうかを査定するとしている。ドシルバ氏によると、その後1カ月以内に速やかに判断が下されるという。

本国米国でも反トラスト調査

これらのテックプラットフォームによる米国内での市場独占に直面した議員たちのあいだでも議論が熱を帯び、今後の規制の基になりそうだ。

およそ2000のパブリッシャーが集まった業界団体、ニュース・メディア・アライアンス(News Media Alliance:以下、NMA)はいま、「ジャーナリズムの競争と保護に関する法律(Journalism Competition and Preservation Act)」を提案している。この法案は、より良い条件を求めて新聞社がオンラインプラットフォームと集団交渉できるようにするものだ。NMAの代表責任者(CEO)、デビッド・チャバーン氏は、オーストラリア政府の強固なアプローチについて声高にコメントしており、米下院がこの提案を支持してくれることを期待している。

ニュースにお金を払うことへのFacebookの反応

Facebookの広報担当者は次のように述べている。「我々はジャーナリズムにお金を払うべきだし、パブリッシャーが長期にわたって成功を納める手助けをするためにもっと多くのことをなすべきだという点に同意している。ニュースパブリッシャーと協力して長期にわたって持続可能なビジネスモデルを作る能力が鍵となる」。

Facebookは先ごろ、Facebook ニュース・イニシアチブを拡張し、サブスクリプションツールやファクトチェックプロジェクトなど、ジャーナリズムを支援するために自社が行っている数々の取り組みを挙げた

Facebookのグローバルニュースパートナーシップ担当バイスプレジデントであるキャンベル・ブラウン氏は投稿において、「消費者の習慣やニュースのインベントリー(在庫)は国ごとに違う。だから我々はそれぞれの国のニュースパートナーと緊密に連携して体験を適合させ、パブリッシャーのビジネスモデルに敬意を払いつつ、人々に貴重な体験を提供する方法をテストしていくつもりだ」と書いた。

戦いに疲れ果てたドイツ

ドイツのパブリッシャーや規制当局は、巨大なテクノロジー企業との戦いにおいて弱腰ではない。シュピーゲル・グループ(Spiegel Group)のようなドイツのパブリッシャーは、Googleのニュースライセンシングプログラムの一部として支払いを受けている。このプログラムは、規制当局がより強い圧力をかけている地域で始められたが、懐疑的な目で見られている。

Googleに対しては、ニュース製品内でのスニペット表示は著作権法違反に当たり、さらにGoogleがスニペットを削除した後でパブリッシャーのトラフィックが激減したことによる市場独占をめぐり、複数の訴訟が起こされている。

今後の焦点は、EU著作権法改革法のドイツ国内版が成立するかどうかだ。

パブリッシャーの反応

「アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)は、FacebookやGoogleなどの企業との協力を積極的に検証しているが、パブリッシャーの権利を効果的に行使することが困難または不可能にならない範囲に限定している。この点に関して、EU著作権指令(EU Copyright Directive)の効果的な実行に向けて懸命な取り組みを続けていく」と、ある広報担当者は話した。

早くから対応を始めたベルギー

2007年、ベルギーのパブリッシャーは、Googleにコンテンツを「盗まれ」て当惑していた。Googleは(検索エンジンを通じて)ベルギーの新聞から許可なく記事へのリンクを発行しており、著作権法に違反したコンテンツの表示を理由に、Googleはパブリッシャーに対して1日2万5000ユーロ(約314万円)の罰金支払いを命じられた。規制当局からの長年の圧力や罰金の脅威に直面したGoogleは、パブリッシャーがオンラインニュースを収益につなげる手助けをすることに同意し、後にGoogleニュース・イニシアチブになるものを作った。

いまだにGoogleニュースがないスペイン

スペインでは2014年に、ニュースアグリゲーターで再利用されたニュースのスニペットの代金をGoogleに支払わせる法律ができた。これに対してGoogleが取った対応は、製品をバッサリと始末することだった。つまり、このサービスは現在のスペインでは運用されていない。その結果、小規模なパブリッシャーは苦境に立たされ、ローカルニュースへのトラフィックは急激に減少した。

[原文:State of play: Where the battle with Google and Facebook to pay for news is hottest

Lucinda Southern(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:長田真)