フレグランスブランドのスニフ(Snif)は、返品による財務的な打撃を軽減するため、返品を最小限に抑え、返品された商品の廃棄を避けることができるサンプル・プログラムを考案した。
「誰も好まないような商品を出せば、最終的に返品によって苦しめられることになる」と、共同創設者で共同CEOを務めるブライアン・エドワーズ氏は述べる。「しかし、我々は自社のフレグランスの品質に十分な自信があり、開封体験の質にも自信を持っている。そのため、商品を顧客の手に届けることさえできれば成功すると確信している」。
もっとも多忙なショッピングシーズンであるこのホリデーが近づくにつれ、一部の新興企業では返品によって利益が食われることを防止するため、無料サンプルが重要な役割を果たすと考えている。セールスフォース(Salesforce)のデータによると、2022年11月から今年1月中旬まで、1週間あたりに注文の少なくとも10%の注文が返品されていた。無料サンプリングプログラムは、開封された商品の処分や、フルサイズ商品の往復配送など、このホリデーに返品が急増することで発生するコストを新興企業が最小限に抑えるのに役立つかもしれない。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
フレグランスブランドのスニフ(Snif)は、返品による財務的な打撃を軽減するため、返品を最小限に抑え、返品された商品の廃棄を避けることができるサンプル・プログラムを考案した。
「誰も好まないような商品を出せば、最終的に返品によって苦しめられることになる」と、共同創設者で共同CEOを務めるブライアン・エドワーズ氏は述べる。「しかし、我々は自社のフレグランスの品質に十分な自信があり、開封体験の質にも自信を持っている。そのため、商品を顧客の手に届けることさえできれば成功すると確信している」。
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もっとも多忙なショッピングシーズンであるこのホリデーが近づくにつれ、一部の新興企業では返品によって利益が食われることを防止するため、無料サンプルが重要な役割を果たすと考えている。セールスフォース(Salesforce)のデータによると、2022年11月から今年1月中旬まで、1週間あたりに注文の少なくとも10%の注文が返品されていた。無料サンプリングプログラムは、開封された商品の処分や、フルサイズ商品の往復配送など、このホリデーに返品が急増することで発生するコストを新興企業が最小限に抑えるのに役立つかもしれない。
「購入前にテストできる」モデル
スニフはトライアルプログラムによって、返品された商品の95%を在庫に戻すことができ、全体的な返品率12.5%を維持している。顧客はプラスチック包装されたフルサイズの30mlのボトルと一緒に、2mlのサンプルを受け取ることができる。開封していなければフルサイズのボトルを無償で返品できるが、買い取りを選択した場合は65ドル(約9620円)を支払う。
「スニフを創設したとき、主な目標のひとつは、高品質でシームレスな香りのショッピング体験を、自宅いながら提供することだった」と、エドワーズ氏は述べている。2020年の創設以来、この「購入前にテストできる」モデルを続けてきたが、何年もかけてモデルに変更を加えてきた。
ほかの新興企業各社も、スニフと同様、返品された商品の全コストを負うことを避けるため、各種のサンプリングプログラムを採用しはじめ、同時に新しい顧客の獲得も進めている。男性向けスキンケアブランドのルーミン(Lumin)は、トライアルプログラムのおかげで3%の返品率を維持している一方、ペットフードブランドのペタルマ(Petaluma)は、サンプルプログラムを取り入れてから返品率が50%も減少した。
新規顧客獲得にも効果的
トライアルプログラムに対するアプローチは企業ごとに異なるものの、発想は同じだ。顧客がフルサイズの商品を購入する前に、少量のサンプルを送るというものだ。
サンプリングは新規顧客獲得に効果的だったと語る新興企業も存在する。コーヒーのサブスクリプション企業ビーンボックス(Bean Box)の共同創設者ライアン・フリッキー氏は、無料のコーヒー試飲用サンプルボックスのおかげで、同社は有料メディアでの顧客獲得コストを下げることができたと語っている。
スニフによると、トライアルプログラムに参加した人々の80%は、最低ひとつの商品を購入した。同社のSKU(在庫管理単位)の最大80%は、買い物客にサンプル提供できるようになっている。D2Cのフレグランスブランドにとって、商品を嗅ぐことなく香りを試してもらうのは困難だと、エドワーズ氏は述べる。同社はすでに、ホリデー用ギフトガイドで、無料サンプルのオプションがある商品を紹介しており、今年はさらに多くの商品をトライアルプログラムに追加する取り組みを進めている。
「誰もが、百貨店でフレグランスを買うことに慣れている。今のところ、コンピューターではフレグランスを嗅いでみることはできない」と、同氏は述べている。また、トライアルプログラムに参加する顧客向けに、プレミアムな開封体験を開発した。高級感のあるパッケージを使用することで、フルサイズの商品を買い求めるよう買い物客に促すものだ。
人々の期待値を管理する
新興企業にとって、返品は利益を大きく圧迫するものだと、グローバルコンサルティング企業のカーニー(Kearney)のパートナーでアメリカリテールリーダー(Americas Retail Leader)のマイケル・ブラウン氏は指摘する。消費者はそのブランドのことをよく知らないため、何を期待すべきかも理解していないと、同氏は述べる。サンプリングプログラムを実施することで、新興企業は少なくとも人々の期待値を管理できるようになる。
「限られた数のサンプルを送ることになる。また、顧客がフルの商品を求めているときと同じ短期間で贈る必要もない」と、同氏は語る。
サンプリングプログラムに適している特定のカテゴリーもある。たとえば化粧品ブランドのコサス(Kosas)では、コンシーラーのサンプルカードを購入すると、さまざまな色味の商品を8ドル(約1180円)で試すことができる。そのあと買い物客は、サンプルカードで使った金額に応じて、サイトで使用できるクレジットを受け取ることができる。
さまざまな業界で導入
ペタルマの共同創設者でCMOを務めるキャロライン・バック氏は、一部のペットは好みが激しいことから、ドッグフードのカテゴリーでもサンプリングプログラムはうまく機能すると考える。
同社は今年2月、4オンス(約113グラム)のサンプルを買い物客に提供しはじめた。買い物客の購入金額が45ドル(約6660円)未満の場合、サンプルの配送に5ドル(約740円)を請求する。ペタルマ社によれば、毎月200個のサンプルを送っており、このプログラムを実装した後の返金率は2%にまで低下したという。
顧客からの要求を受けて、このプログラムの開始を決定したと、バック氏は述べる。「最初は運用を軌道に乗せるためにかなりの労力が必要だし、複雑になることもあるが、我々にとっては疑いなく良いものだった。人々はこのサービスを求めており、我々にとってもそれほど提供が難しいものではない」。
より効果的なプログラムを模索
これに対して男性向けスキンケアブランドのルーミンは、顧客の半数以上がスキンケアの経験がまったくなかったため、サンプリングプログラムにパーソナライゼーションの要素を加えた。買い物客は最初にクイズへの回答を求められ、それによってルーミンは、その顧客が肌についてどのような悩みを抱えているかを把握する。それから、3種類のトラベルサイズの製品からなるスキンケアルーティンを送る。
「それによって、顧客がフルサイズの商品を試してから、結果に失望することを避けられる」と、ルーミンのホールディング企業パンゲアホールディングス(Pangaea Holdings)のCEOイングリッド・ジャッケル氏は述べる。「これは、ルーミンの成長と成功にとって不可欠な要素だった。ルーミンのオーディエンスである男性は、スキンケアルーティンを十分に確立しているとは限らないからだ」。
現在のところ、多くの新興企業はSKUのすべてをサンプリングで提供してはいないとしている。それは、プログラムをもっとも効果的にする方法を各社がまだ模索中であるためだ。ルーミンは、50のSKUのうち10のSKUが使用可能であるという。同社はこれを改善するよう努力していると、ジャッケル氏は語る。今年の第4四半期には、無償トライアルプログラムを拡大し、買い物客がさらに多くの商品をテストできるようにすることを計画している。
「我々が進歩するにつれ、男性たちも多くの商品を無料で試せるようになるだろう」と同氏は述べる。
[原文:Startups are using sampling programs to alleviate the cost of returns]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu