女性下着メーカーのアドア・ミー(Adore Me)は、伝統的なパフォーマンスマーケティングのソーシャルチャネルから距離を置こうとしている。D2Cブランドであるアドア・ミーは、デジタル広告とストリーミング動画をメディアミックスに追加することで、より広範なマーケティング戦略に向けての大きな一歩を踏み出しているのだ。
最近、女性下着メーカーのアドア・ミー(Adore Me)は、伝統的なパフォーマンスマーケティングのソーシャルチャネルから距離を置こうとしている。ニューヨークに拠点を置くD2Cブランドであるアドア・ミーは、デジタル広告とストリーミング動画をメディアミックスに追加することで、より広範なマーケティング戦略に向けての大きな一歩を踏み出しているのだ。
「明らかに、Facebookからの多角化と、顧客獲得コストの上昇は、すべてのマーケターにとってもっとも重要な項目である」と、アドア・ミーの戦略担当バイスプレジデントであるランジャン・ロイ氏は述べる。「(我々は)よりブランド構築、トップ・オブ・ファネルの観点から考え始めている」。
認知と獲得のバランスを
アドア・ミーはこれまで、ブランド認知度を高めるために、リニアテレビ広告に大きく依存してきた。Facebookやほかのソーシャルメディアプラットフォームは、ブランドの顧客獲得の取り組みにおいて重要な原動力となってきた、とロイ氏は付け加える。しかし、ますます混雑するデジタル広告市場、コストの上昇、データプライバシーの変化を考慮し、アドア・ミーはYouTubeとOTTにおけるデジタル動画広告に再度目を向け、ブランド認知と顧客獲得の両方を目的としたメディアミックスのバランスを取ろうとしている。これはテクノロジーの発達で動画広告のターゲティング、測定能力が改善されたことも寄与している。
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最近では、同社のプロダクトを女性へのギフトとして購入する男性をターゲットにして、家庭での試着サービスの広告キャンペーン展開した。動画広告は、ライフスタイル系のネットワークだけでなく、ニュースやスポーツ系にも及んだ。また、同社によると、女性のターゲットを超えて、男性とヒスパニック系のオーディエンスにリーチを広げ、それぞれにカスタムに制作したクリエイティブを展開している。
「ターゲティングの成果や機会は増えており、また支出の内訳をより深く理解できるようになっている」とロイ氏は言う。「プラットフォームで顧客を獲得したいという欲求と、ブランド構築のバランスをとることは課題となっており、それは我が社でも間違いなく経験してきた」。
アドア・ミーが最近導入した多様なメディアミックスには、まだリニアテレビが含まれている。しかし、同ブランドがエンジン全開で展開するなか、YouTubeに加えて、Hulu(フールー)、ロク(Roku)、トゥービー(Tubi)、ESPNなどの複数のストリーミングサービスを横断するOTT分野がより大きな役割を担っており、購買客が利用しているプラットフォームにブランド側が出向くことで彼らとの接点を広げている、と同氏は付け加えた。
ロイ氏が詳細を明らかにしなかったため、これらの広告費がどのように使われているのかは不明だ。カンター(Kantar)によると、アドア・ミーは2021年前半に650万ドル(約7.4億円)をメディアに費やしている。2020年、同ブランドはメディアに少なくとも500万ドル(約5.7億円)を費やした。カンターはソーシャル上の数字を追跡していないため、これらの数字にはソーシャルメディアは含まれていない。
この傾向は業界全体で続く
アドア・ミーは、ダイレクトレスポンスやパフォーマンスマーケティング戦略だけでなく、より広範なマーケティング戦略を模索している多くのD2Cブランドのひとつだ。昨年、ビビッド・シーツ(Vivid Seats)、エディブル・アレンジメンツ(Edible Arrangements)、シャッターフライ(Shutterfly)はすべて、メディアミックスを多様化するために、デジタル動画を含むブランド認知チャネルに目を向けている。
フルサービスの広告エージェンシーであるランドリー・サービス(Laundry Service)の最高マーケティング責任者マイク・ミコ氏によると、この傾向は業界全体で続くだろうという。
「誰もがiOS 14の変更とCPMの上昇といった問題に飛び付くだろうし、パフォーマンスマーケティングはあらゆる面で圧迫されていることに注意することが重要だと思う」とミコ氏は述べ、デジタル広告の分野もブランドで飽和しつつあると指摘した。「競争はかつてないほど激化しており、マーケターは簡単に手に入る成果だけに頼ることはできない」。
アドア・ミーは、今後もデジタル動画を使ってブランド構築と認知度向上の努力を続けると言っている。「すべてのブランドがこの問題に直面しなければならないだろう。特に、プライバシーへの取り組みのために、細かなターゲティングがそれほどできなくなってきているためだ」とロイ氏は語った。
KIMEKO MCCOY(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)