チャーリー・コール氏が、高級バッグブランドのトゥミに最高デジタル責任者として加わった2016年1月、最優先課題はCRMおよびアナリティクスのプラットフォームを修正することだった。しかし、このプロジェクトを8カ月間にわたって遂行する過程で、同氏のチームはコア消費者の中高年以外にリーチしていないことに気づいた。
チャーリー・コール氏が、高級バッグブランドのトゥミに最高デジタル責任者として加わった2016年1月、最優先課題は同社の顧客関係管理およびアナリティクスのプラットフォームを修正することだった。このプロジェクトを8カ月間に渡って遂行する過程で、コール氏のチームは、トゥミのターゲティングはコア消費者である中年の高所得者層に限定されており、それ以外の層にリーチしていないことに気がついた。
「このカンファレンスの参加者は全員、トゥミの潜在購買者だ」と、コール氏は4月18日、サウスカロライナ州チャールストンで開催されたDIGIDAYブランドサミット(Digiday Brand Summit)の聴衆に向けて語った。同サミットは、さまざまなブランドが参加する米DIGIDAY主催のカンファレンス。「つまり、我々がエクスペディア(Expedia)やホテルズ・ドットコム(Hotels.com)の広告枠しか買わないなら、愚かなことだ。当社はプログラマティックを活用してできる限り、多くの人にリーチしたい。とりわけ、34歳以下の若い層をターゲット層に入れたいと思う」。
トゥミは、プログラマティックバイイングをメディアエージェンシーに外注することも、社内で構築することも可能だったが、コール氏が6カ月前に選んだのは後者。自分のチームの方が社外の代理店よりも責任と愛着を感じると考えた。
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「大手のメディアエージェンシーを使うことは、個人的に懸念がある。ブランドの評判を傷つけないよう、私はゆっくり注意深く進めたいのに、エージェンシーはできるだけ早くメディアをスケールしたがるからだ」と、コール氏は明かす。「当社のブランドを目にする買い物客、タイミング、理由について、我々は細心の注意を払うべきだ」。
プログラマティックは小さく開始
プログラマティック分野の新参者であるトゥミは、小売大手のターゲット(Target)や、eコマースプラットフォームのチケットマスター(Ticketmaster)に比べると小規模である。ターゲットはアフィリエイト向けのプログラマティックキャンペーンを展開。また、チケットマスターは自前のトレーダーを確保している。一方、トゥミの戦略は「小さくはじめて適正化していく」というものだ。時間のかかるプロセスであり、1万ドル(約110万円)というごく小さな予算でプログラマティックを実装させてくれるパートナーを見つけるのに苦労した。
「通常、メディアマス(Mediamath)のような、この分野の大手に話を持ちかけると、予算の必要最低額が膨大になる。というのも、彼らは予算が無限にある消費財ブランド大手と仕事をしているからだ」と、コール氏は指摘する。「私はいつもパートナーにこう説明する。『いいかい、我々だって果てしなくスケールすることはできる。ただ、追加投資を正当化することが必要なだけだ』」。
トゥミはプログラマティックの最初のテストを、ソーシャルテック企業のソーシャルコード(SocialCode)と実施。現在はニューエンジェン(New Engen)というベンダーと協業し、Google傘下ダブルクリック(DoubleClick)の検索広告とFacebook上でのプログラマティックを運用している。データ管理プラットフォーム(DMP)とデマンドサイドプラットフォーム(DSP)についてはまだ模索中だ。
「すべての大手DMPに話をしたが、どこも決まって追加のサービスを売りたがる」と、コール氏はぼやく。「真のパートナーを見つけられることが望ましい。『ほかにもこんなものがあります』ではなく、『この問題の解決をお手伝いします』といってくれるような」。
課題は部署をまたいで共有
コール氏が考える、社内にプログラマティック機能を構築する際の最大の課題は何か。それは、CEO、クリエイティブディレクター、営業のトップといった、ブランドのステークホルダーに、マーケティングチームの取り組みを逐次知らせることだ。そうすれば、誰もプログラマティックを過剰に恐れなくなるという。
「思うに、企業文化に関わることだろう。自分の会社に対していきなり、『我々の業務の一部を機械にやらせよう』と提案すれば、クリエイティブディレクターは『これから何が起きるか、すべてを把握する必要がある』と主張するかもしれない」と、コール氏は指摘する。「社内で根回しをして、プログラマティックへの不安をなくす必要がある」。
コール氏は今年、DMPのパートナーを参加させ、プログラマティックを支援するマーケターも2人増員する計画だ。
「私は、独自のDMPやDSPを構築するつもりはないが、当社の消費者については、ほかの誰よりも把握できる状況にいたい」と、コール氏は語る。「メディアバイイングを社内で実施すると、データが手に入り、自社の消費者に対する理解もはるかに深まるだろう」。
Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)
Image from Getty Images