スターバックス(Starbucks)は6月第2週、今後18カ月に渡ってアメリカにおいて、ドライブスルーとカーブサイドピックアップ(店舗受け取り)、両方のオプションを含む「利便性を重視したフォーマットを増やす(increase convenience-led formats)」計画を発表した。
スターバックス(Starbucks)は、ピックアップ販売に適したレイアウトに店舗を改築する計画を進めている。
この大手コーヒーショップチェーンは6月第2週、今後18カ月に渡ってアメリカにおいて、ドライブスルーとカーブサイドピックアップ(店舗受け取り)、両方のオプションを含む「利便性を重視したフォーマットを増やす(increase convenience-led formats)」計画を発表した。これによって、北米のロケーションのうち400店舗を閉鎖し、2020年中に合計で新規の300店舗が増えることになる。これは、新形式の持ち帰り専用店舗であるスターバックス・ピックアップ(Starbucks Pickup)の店舗数の増加にも適用され、すべての店舗がアプリに統合される。
スターバックスにとっては、これは決定的な方針転換となる。何十年にも渡ってスターバックスは、ノマドワーキングを行う場所、人々と時間を過ごす場所として、ポジショニングを図ってきた。しかし、現在では店舗の多くが、ソーシャルディスタンシングの遵守が難しい席レイアウトとなっているのだ。ラウンジ部分を閉鎖したことで、パンデミック中のスターバックスの収益は大きな影響を受けた。この4月に出された第2四半期に関する報告では、同店舗売り上げは10%減少したと述べられている。
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「移動中の人のための体験」
スターバックスはピックアップのみの店舗を1年以上前から実験的に運営してきたが、いまではこれらの店舗を「移動中の人のための体験」を円滑にするための機能としてポジショニングを行っている。それには、ウーバーイーツ(Uber Eats)の対応をさらに増やすこと、またいくつかの店舗のレイアウトを物理的にリノベーションすることが含まれるという。今後行われるリモデリングではモバイル注文の店舗対応を大量に捌くための専用のカウンターを追加することが予定されている。顧客と宅配業者のあいだでの混雑を解消することが期待される。一方で、人と人との交流を制限するための店舗内体験への投資も増やしてきた。
パンデミック前の段階で、すでにモバイル注文やデジタルリワードプログラムへの投資は成果を見せていた。2月には、2015年に最初に導入された、モバイルオーダー・アンド・ペイ・プログラム(Mobile Order & Pay program)において、顧客の利用度に増加が見られているという。今年の第1四半期の収支報告では、アメリカの取引の約17%をモバイル注文が占めており、これは前年比で16%の増加となっている。アメリカにおけるアクティブメンバーの1890万人にリーチしているとのことだ。ピーク時間には、約5400店舗が取引の20%以上をモバイル注文経由で得ていることが発表された。
新しいピックアップ対応のロケーションは、すでにデジタル注文ピックアップを統合している店舗よりも、さらに一歩進んだ形となるようだ。店舗における着席ができないだけでなく、顧客はスターバックスのアプリかウーバーイーツのアプリ経由でしか注文できないようになる。モバイル支払いを拡大するというスターバックスのフォーカスを、さらに支払いプロセスが進めた形だ。
ほかのチェーンたちにも影響
デロイト(Deloitte)による物理リテールの変化に関する最新のリサーチによると、店舗内での食事が減ったことでリテールロケーションが「小規模なフルフィルメントセンターとピックアップ拠点」となったことを示している。
スターバックスがピックアップ機能に本格的に取り組むことで、ほかのチェーンたちも刺激を受け、新しい消費者行動に適応しようとする可能性がある。接触をしないためのデジタル技術の開発への刺激となるかもしれない。今年前半では、セブンイレブン(7-Eleven)がレジなし店舗フォーマットを試験的に開始したことで、シームレス・チェックアウトにさらに勢いが生まれた。
3月、アメリカでコロナウイルスのパンデミックがちょうど勃発したときに、Amazonはキャッシュレス・チェックアウト技術をほかのリテーラーたちにも販売しはじめると発表した。この技術はOTGが所有する、主に空港内にあるレストラン群によって素早くパンデミック中に導入された。3月中旬には「ただ歩いて出るだけ(Just Walk Out)」レジなし決済をニューアーク空港のチボ・エクスプレス・グルメ・マーケットを皮切りに開始した。今年中に対応店舗は増える予定だ。350カ所のホスピタリティ関連のロケーションを抱えるOTGは、米国内の空港におけるチェーン拡大のためのパートナー関係をスターバックスと結んでいる。
早く動くほど成果が出る
このような再編トレンドは業界全体で今後も加速するだろうと、インダストリアス(The Industrious)のプレジデントを務めるアンディ・オースティン氏は言う。インダストリアスはAT&Tやウォルマート(Walmart)のようなリテーラーをクライアントに抱え、彼らの実店舗をよりデジタル上でのやり取りに対応するように変える取り組みをしているエージェンシーだ。ウイルスが消え去るまでは、テイクアウトの注文にフォーカスするレストランの存在はなくならないだろう。今後数カ月に渡り、「レジャー感覚、もしくはエンターテイメント活動として」のリテールは消費者も行わないはずだ、と彼は語る。映画館やフードコートといった大型の大勢で同時に体験するアクティビティは特にだ。
スターバックスは、「羨ましくなるほどの実店舗ポートフォリオ」を抱えていると、彼は付け加える。その結果として、ピックアップに早い時期からフォーカスを据えたことの成果が出てくるだろう。その時期を通じて、顧客に新しいレイアウトに慣れてもらうことの助けにもなったと、オースティン氏は言う。「スターバックスへ訪れたときに、顧客はデジタルのマッスルメモリー(筋肉の働きを遺伝子が覚えていること)を持っている状態だ」と、彼は述べた。
Gabriela Barkho(原文 / 訳:塚本 紺)