12月14日金曜日、ニューヨークのミートパッキング地区にオープンした規模2万3000平方フィート(約2137平方メートル)の「没入型コーヒー体験施設」、スターバックス・リザーブ・ロースタリー(Starbucks’ Reserve Roastery)は、コーヒーショップというよりもまるでブティックホテルだ。
12月14日金曜日、ニューヨークのミートパッキング地区にオープンした規模2万3000平方フィート(約2137平方メートル)の「没入型コーヒー体験施設」、スターバックス・リザーブ・ロースタリー(Starbucks’ Reserve Roastery)は、コーヒーショップというよりもまるでブティックホテルだ。
280人のスタッフを抱えるこの店舗は、スターバックスの通常店では提供されていない7つの抽出方法でドリンクを提供するふたつのコーヒーバーカウンターが特徴だ。コーヒーや紅茶から着想を得たカクテルで「ミクソロジー体験」を目玉にするバーにリザーブブランドの商品、そしてスターバックスが支援するイタリアのベーカリーブランド、プリンチベーカリー(Princi bakery)が併設されている。
進化するスタバ
こちらの店舗は2014年、シアトルの1号店オープンに続く4番目のスターバックス・リザーブ・ロースタリーだ。ほかの店舗は上海とミラノですでに展開されている2店で、2019年にはシカゴと東京でプレミアムショップ立ち上げの計画がある。業界ウォッチャーたちによると、市場のハイエンド顧客をターゲットにしつつ、スターバックスでの経験を向上させることが目的だという。ラテが6ドル(約600円)、カクテルの値段は20ドル(約2000円)以上。スターバックス・リザーブ・ロースタリーの店舗は、ライフスタイルブランドとしてのリザーブブランドへの投資、そしてほかの店舗に展開できる可能性がある新商品の試験場への投資という、同社による実験的な販売活動の象徴だ。
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スターバックスのCEOであるケビン・ジョンソン氏は12月13日木曜日、「スターバックス・リザーブ・ロースタリーは、最高峰のコーヒー体験によるブランド価値増幅の一例だ」と、同社のインベスターデイで述べている。また、同店舗はスターバックスのオンライン・オフライン戦略に基づき、従来の支払いカウンターと並んで、スタッフがiPadを手に顧客の支払いを処理する。
リザーブ・ロースタリーの各店舗は、変わっていく消費者行動を受容し、新しいコンセプトや商品をテストする手段であり、コーヒーの範囲をはるかに超えた衣服、パッケージ商品、さらには待ち合わせの指定場所にまで及ぶ、プレミアムライフスタイルブランドへの進化を続けている。
新しい市場を開拓
「コーヒー事業は進化し、ハイエンド・コーヒー市場が新しい市場として誕生しており、スターバックスはこの市場を狙っている。その市場の消費者は、より洗練されていて、どんなに高い値段でも喜んで支払う」と、ヴィヴァルディ(Vivaldi)のCEO兼創設者、エーリッヒ・ヨアヒムシュタラー氏はいう。高級市場をめざすことは難しく、多くのブランドがこれに失敗しているが、スターバックスは商才に長けているため成功する可能性が高いと同氏はつけ加えた。
また、リザーブのブランドコンセプトにより、1日の混雑する時間帯をこれまでとは違う時間帯に広げようとしている。ニューヨークのリザーブ店舗は、平日は午後11時まで、金曜と土曜は深夜12時まで営業している。
「こうすることで、スターバックスは新しいコーヒー商品のすべてをテストする場所を確保している。どの商品が喜ばれるのかテストし、検証できる。もうひとつのポイントは、従来の店舗は忙しい朝とランチタイム、または、待ち合わせの場所であるのに対して、リザーブ・ロースタリーによって、ハッピーアワーや、お酒を飲んだり、ディナーに出かけたりする会社員に働きかける機会をうかがうことができる」と、デジタルマーケティングコンサルタントのジャッジ・グラハム氏は述べている。
有意義なブランド投資
最近、スターバックスはプレミアム顧客に向けたサービス拡大に投資している。これを実現するため、同社は2年前にセイレーン・リテール・グループ(Siren Retail Group)というプレミアム商品を担当する社内チームを立ち上げた。このチームがリザーブ・ロースタリーの店舗、スターバックス本社があるシアトルのスターバックス・リザーブ・ストア、限られたスターバックスの通常店舗で展開されているリザーブ・バー、そしてプリンチブランド単独のベーカリーを監督している。
これは、有意義なブランド投資だ。課題は、それらの店舗がおのおのに収益を生み出すことを確実にすることだ。
「問題は、この試みによって収益が増えるのか、それともブランド愛を試しているだけなのかということだ。高品質イタリア食材マーケットのイータリー(Eataly)の体験になぞらえたい。その試みでは、店内のレストランで食べて、ワイングラスを片手に店内を歩いて、そして満足のいく小売体験を残すことができる」と、マークル(Merkle)のバイスプレジデントであるジェニー・フラカベント氏はいう。
インタラクティブな体制
大規模な投資にもかかわらず、それらのプレミアム店舗から得られるものは、顧客からのブランドロイヤルティおよび商品テストから同社が得る洞察になる可能性が高いと、グラハム氏は述べる。従来型の大規模小売店は、顧客の滞在時間を最大化する環境と、繰り返し購入する消費行動を生み出したスターバックスの経験から教訓を得ることができる。
「ターゲット(Target)やベストバイ(Best Buy)のような小売業者は、依然として昔ながらの小売店という雰囲気を醸し出しており、インタラクティブではない。スターバックスは、ライフスタイルブランドをめざしてムード作りや、環境整備をしている」と、グラハム氏は締めくくった。