飲料ブランドのスプライト(Sprite)は、8月11日のヒップホップ音楽50周年を祝いつつ、Z世代とミレニアル世代にアピールするためにメディア分配を多様化している。 スプライトは6月初旬に30秒のCMを開始した。ヒップホ […]
飲料ブランドのスプライト(Sprite)は、8月11日のヒップホップ音楽50周年を祝いつつ、Z世代とミレニアル世代にアピールするためにメディア分配を多様化している。
スプライトは6月初旬に30秒のCMを開始した。ヒップホップアーティストのナズ、ラキム、ラトー、グロリラが出演するこのCMは、CTVとリニアTVで放映するとともに、インスタグラム、X(旧Twitter)、TikTokでは15秒バージョンも配信。また、同キャンペーンはコンテンツ戦略の差別化のために、インスタグラムのリール(Reels)でも出演者をフィーチャーしている。さらに、TikTokではスライドショーを公開し、これは6月末の次点で230万回以上の視聴と2万3000件以上の「いいね」を獲得した。
一部の広告主がまだX(旧Twitter)をどう扱うかを見極めているなか、スプライト(および親会社のコカ・コーラ[Coca-Cola])は、このプラットフォームにまだ価値を見出していた。スプライトは6月26日のBET音楽アワード(BET Music Awards)のあいだにX(旧Twitter)でオーガニック投稿をすると同時に、Z世代のヒップホップアーティストがヒップホップに興味を持つようになったきっかけについて語る同イベント内のシリーズにおいて、スポンサーシップの役割も担った。
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スプライトのクリエイティブ戦略ディレクターであるA.P.チェイニー氏は、「私たちは消費者がいる(プラットフォーム)に真剣に取り組み、彼らの行動に基づいてコンテンツを作成している。常に消費者がどのようにメディアを消費しているかをチェックしており、(メディアが消費されている場所)こそが本質的に私たちが存在したい場所だ」と述べている。
一般的となったQRコードの活用
消費者を自社のWebサイトに誘導するため、スプライトはQRコードを使用している。これは、ラッパーのバッド・バニーと行っている夏の広告キャンペーンでペプシ(Pepsi)も使用した戦術である。そして、「サマー・オブ・ドロップス(Summer of Drops)」という企画でQRコードを用いてヒップホップの50周年を祝い、独占的なコンテンツ、商品、イベント体験を提供している。
スプライトの包装にあるQRコードを通じて、同社はイベントや商品ドロップへのアクセスを提供する。商品にはナズのサイン入りのポラロイドや、ラキム、グロリラ、ラトーからのサインの入った映画撮影用のカチンコなどが含まれる。
「消費者が使用方法を知っていて、すぐに使ってインターフェースに入ってもらうことができ、ドロップ商品を見られるようにしたかった。それが(QRコード)を使っている理由だ」とチェイニー氏は述べる。同氏は、QRコードがより多くの人にとってアクセス可能になってきていることも指摘した。同ブランドは今年初めからパッケージを使った消費者エンゲージメントの新しい方法を探求してきており、本キャンペーンの開始前にも技術をテストしていた。なお、同社はコードをスキャンした人数を明らかにしていない。
祝われるヒップホップ音楽50周年
チェイニー氏は具体的な数字を共有することを拒否したため、スプライトがマーケティングにどのくらいの費用をかけているかは不明である。しかし、ヴィヴィックス(Vivvix)によると、同ブランドは2023年、これまでに広告に2400万ドル(約34億円)以上を費やしているという。
ヒップホップ音楽の50周年は、Googleなどのほかのブランドによっても祝われており、ニューヨーク、ロサンゼルス、フロリダ、シカゴなどの都市での屋外広告が行われている。とくにガバナーズ・ボール(Governors Ball)やローリング・ラウド・マイアミ(Rolling Loud Miami)など、ヒップホップを中心としたフェスティバル周辺では顕著だ。
さらに、ポッドキャストプラットフォームのオーダシー(Audacy)は、ヒップホップが時代とともに人々にどのような影響を与えてきたかを示す音声を広告やオーガニック投稿としてソーシャルメディアでストリーミングしている。
Web3ソフトウェア会社ワンオブ(OneOf)のマーケティング部門シニアバイスプレジデントであり、クリエイティブディレクターでもあるクリストファー・シーリー氏は、「音楽のように情熱を引き立てる芸術形式はほかに少ない。ヒップホップは50年以上にわたって世界の文化と商業を牽引してきた」と述べる。
また、「スプライトがキャンペーンで先端的なデジタルツールとリアルな体験を組み合わせていることは賢明であり、さらにラキムとナズという、同社と長い関係を持つジャンルを代表するようなアーティストを活用することは、さらに賢明といえる」と、スプライトの戦略を褒め称えた。
Julian Cannon(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)