「インスタグラム目的で、メディアチームを作った」:ソウルサイクルのコンテンツマーケティング

独自のインドアサイクリング体験を提供し、熱狂的な支持者を得ているソウルサイクル(SoulCycle)。90カ所のサイクリングスタジオを保有する同社のコンテンツ部門が、ここ半年で拡大を続けている。この部門ではふたりの採用者が20人チームを作り上げ、さまざまな体験やコンテンツを提供。とりわけ力を入れているのが、インスタグラム(Instagram)だ。

最近発表した「サウンド・バイ・ソウルサイクル(Sound by SoulCycle)」で、ソウルサイクルはコンサートツアーを行った。最初のコンサートは、ニューヨークのハーレム地区で10月11日に開催。このコンサートではアーティストたちがサイクリングを行う50人のライダーと、それ以外の300人の参加者の前でパフォーマンスを行い、ボーズ(Bose)とケテルワン(Ketel One)がスポンサーを務めた。さらに、ソウルサイクルのメディアチームは同イベントを撮影し、インスタグラムで34万4000人のフォロワーに向けてシェアしたのだ。

ソウルサイクルで最高営業責任者を務めるグレッグ・ギットリッチ氏は、米DIGIDAYの「動画マーケティングサミット(Video Marketing Summit)」でコンサートについて次のように語っている。「現場にいなかった多くの人たちにリーチできるように、インスタグラム用に撮影を行った。ラスベガスで行う次のコンサートでは、より多くのオーディエンスを対象とするだけではなく、ラスベガスのスタジオのマーケティングとしても活用していく」。

新たな収入源の開拓

ギットリッチ氏はソウルサイクルのコンテンツビジネスは、従来のコンテンツマーケティングの枠に収まらないと語る。同社のチームは、同社の消費者に対して新たな体験と可能性を提供するだけではなく、あらたな収益源を生み出そうとしているという。コンサートツアーをはじめ、同チームが提供している体験では、スポンサーの募集も行っている。さらにApple Musicなどのプラットフォームに向けて、専用コンテンツを提供しており、そうしたプラットフォームに有料コンテンツも追加していくことで、エクササイズのクラス以外の収益源の確保を予定している。


ギットリッチ氏は以前、マッシャブル(Mashable)の最高営業責任者を務めていたが、エクササイズ分野にとどまらないブランドとしての強さにひかれてソウルサイクルに加わったという。同氏はソウルサイクルが愛される理由として以下の5点をあげている。まず体験自体が楽しいこと、そして音楽、インストラクター、会員同士の一体感、そしてエクササイズだ。(ソウルサイクルのブランドは、世界中で高級フィットネスジムを展開しているエキノックス[Equinox]が保有している)

ソウルサイクルがコンサートを行うのは今回がはじめてではない。以前、Spotify(スポティファイ)を活用してサウスバイサウスウエスト(South by Southwest)でライブDJによる一連のイベントを開催している。いま同社は、どの分野で、どのようにして体験を共有すべきかを社内で集中的に検討しているのだ。チームが6人で構成されていた最初のころは、短尺動画を試していたとギットリッチ氏は振り返る。現在、ソウルサイクルはインスタグラム上でのシリーズ化されたコンテンツやプログラムを生み出している。同チームが制作しているシリーズは6個ほどだ。そのうちのひとつ、「レジスタンス(Resistance)」は、ソウルサイクルのサイクリングマシンに乗ったミュージシャンや俳優へのインタビューを行い、質問ごとにマシンの負荷が増えていくという趣向だ。

エクササイズ業界において、大小問わずさまざまなエクササイズスタジオがソウルサイクルのライバルとして存在している。なかでも強力なライバルとなっているのがペロトン(Peloton)だ。自宅でのトレーニング用サイクリングマシンを販売する同社は、ライブ配信および動画形式のエクササイズクラスを行うサブスクリプションサービスを提供している。ヘッドホンメーカーのスカルキャンディ(Skullcandy)もコンサートを行っているように、メディアへの投資はソウルサイクルの存在を顕在顧客や潜在顧客に対して知らしめる効果がある。ほかにも、ブランドの広告塔でもあるインストラクターへの投資も怠っていない。今年はじめ、ソウルサイクルはWMEを顧問に迎えて管理エージェンシーを立ち上げた。

「コミュニティ形成に有効」

シアトルを拠点とするソーシャルメディアディレクターで、たまにソウルサイクルを利用するというジョン・コルッチ氏は今回のコンサートについて「サウンド・バイ・ソウルサウンド(Sound by SoulCycle)のようなプログラムは、ブランドの拡大とコミュニティ形成において有効だと思う。個人的にはコンサートを見たわけでもなく、コンサートのおかげでエクササイズクラスにすごく参加したくなったわけでもないが、ソウルサイクルの音楽はどれも良いものだし、コンサートもきっと楽しいものになったはずだ」と語る。

ソウルサイクルはApple Musicと提携しており、専用のプレイリストを作成してオリジナル音源を提供している。これはインストラクターにとっても
モチベーションになるように配慮してのことだ。同社は来年にはさらに音楽分野への進出を強める計画を立てている。

ギットリッチ氏は「ポッドキャスト用の音楽提供をするかもしれない。短いものからはじめてね。チームの初期段階では、ポッドキャストでの制作と配信は取り組みやすいし、テストとしても申し分ない」と明かす。

「賢いブランドだと思う」

ニューヨークのエージェンシーに勤めるコーリー・カインドバーグ氏もまたソウルサイクルの利用者だ。同氏は、ソウルサイクルが音楽関連のコンテンツに力を入れていることで興味を持ったという。同氏はソウルサイクルのエクササイズに参加するときに音楽を重視したわけではないとしつつも、次のように述べた。

「音楽のおかげでソウルサイクルのファンになったというわけではないが、ブランドへの見方は変わった。賢いブランドだと思ったよ。インストラクターに流れている音楽の曲名を訊ねて、それから何週間もその曲を聴きつづけたりした。基本的には、音楽はソウルサイクルのビジネスで大きな部分を占めている。その展開規模もエクササイズ自体にとどまらない」。

だがカインドバーグ氏は、メディア部門のおかげでより頻繁に有料のエクササイズを利用しようとは思わないとも語っている。

ソウルサイクルの今後

これまでの成功について、ギットリッチ氏はさらに3カ月から半年ほどかけて、なにがうまく行っているのかを正確に見極めたいとしている。現時点で、ソウルサイクルはオーディエンスを3種類に分類している。まだソウルサイクルを利用したことがないオーディエンス、利用したことはあるが現在はスタジオ付近に住んでいないオーディエンス、そしてロイヤルカスタマーの3種類だ。

ギットリッチ氏はソウルサイクルの今後について次のように語っている。「現在は90カ所に展開しているが、来年はこれを大きく増やしていく。インスタグラムやメール、コンサートでソウルサイクルを体験できるようにしてオーディエンスと関係を構築することは、ブランドだけでなく収益の観点からも大きな意義がある。コンサートにしかいかない人、Apple Musicでしか聴かない人もいるだろうが、ソウルサイクルを強く欲しているオーディエンスも確かに存在しているのだ」。

Kerry Flynn(原文 / 訳:SI Japan)