高級メンズウェアは昨今、大きな成長を見せており、男性の着こなしやスタイルを試す方法に文化的転換が生まれている。メンズウェア市場は今後3年、レディースウェア市場よりも速く成長し、2020年までに330億ドル(約3兆3000億円)規模になると予測されている。その背景にあるのは、ソーシャルメディアの存在だ。
高級メンズウェアは歴史的にレディースウェアの引き立て役だったが、昨今、この業界は大きな成長を見せており、男性の着こなしやスタイルを試す方法に文化的転換が生まれている。
小売業を分析している企業、エディティド(Edited)のデータによると、メンズウェア市場は今後3年はレディースウェア市場よりも速く成長し、純利益はそれぞれ2.3%と2.2%の上昇となる見通しだ。さらに、メンズウェア市場は2020年までに330億ドル(約3兆3000億円)規模になると予測され、2015年から14%の増加となる見込みだという。
ソーシャルメディアの役割
ハバスメディアグループ(Havas Media Group)の一部門、ラックスハブ(LuxHub)のグローバルマネージングディレクター、タミー・スムルダー氏は、市場の拡大は、メンズスタイルについての認知度構築におけるソーシャルメディアの役割によるところが大きいと述べた。ソーシャルフィード上に出現するメンズファッションのインフルエンサーの数が増えるにつれ、ファッションに対する男性消費者の関心が高まってきたのだ。同時に、これまでは女性服だけを手掛けていたデザイナーたちが、メンズコレクションに挑戦しはじめている。そのうちのひとり、ステラ・マッカートニー氏は自身初のメンズスタイルを2016年11月に公開した。
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「デジタルメディアと、スタイリッシュでアイコニックな男性たち(成功した起業家から面白いユーチューバーまで)のイメージが絶え間なく流れていることが、男性ファッションの社会化を後押ししている。ソーシャルメディアと『いつもつながっている』状態が、日常的に男性たちに自身の見た目へもっと目を向けさせているのだ」と、スムルダー氏は語る
インスタグラムでカジュアルスタイルを共有した、GQスタイルのファッションディレクター、モバラジ・ダウォドゥ氏
インフルエンサーネットワーク、コレクティブリー(Collectively)の共同設立者であるアレクサ・トナー氏は、男性ファッション誌が長いあいだスタイルの権威として評価されてきたが、ソーシャルプラットフォームは男性買い物客が新しい革新的な方法でラグジュアリーな服を発見することを可能にしていると述べた。インスタグラムのようなアプリは、有名ファッション誌から得られる情報より、もっと多様な視点を紹介していると彼女は語る。
「GQやエスクァイア(Esquire)といった雑誌を決して買うことのない男性たちは、インスタグラムのスタイルインフルエンサーのまねをすることの方が、はるかに気が楽なのだ」と、トナー氏は述べる。「ファッション誌は、男性スタイルについて非常に柔軟性のない見方を提示しているが、ソーシャルメディア上の情報は多様性に富んでいる。ラグジュアリーなサイトでは、オーダーメードで洋服を仕立てたり、ビンテージウォッチが入手できるし、さらには限定版のストリートウェアだって手に入る」。
「即時性」が普及のポイント
ジバンシー(Givenchy)のメンズマーチャントチーフ、ジョナサン・フェインベルグ氏によると、市場は間違いなく拡大しているが、成長しているのは大部分がビジネス用のトーンダウン(ビジネスフォーマルに対して)した服がメインのカジュアルウェア部門だ。増え続ける需要を満たすために、ほとんどのアパレルアイテムの価格ポイントは過去5年間で大幅に上昇したが、ボンバージャケットやスニーカーなどの商品ではそれが顕著に表れているという(高級メンズウェアの平均価格はカテゴリー全体で232.29ドル(約2万3229円)。過去5年間で64%上昇したと、エディティドのデータは示している)。
「市場が広がる一方で、その広がりはカジュアル側に向かっている。男性の実際の着こなしは、テックスタートアップやニューヨークシティの外にある職場環境で時間を過ごす男性の場合は特に、スニーカー、バックパック、Tシャツ、スエットシャツというものだ」と、フェインベルグ氏は6月末のあるイベントで語った。
トナー氏は、ソーシャルメディアが「いますぐ」カルチャーを定着させることにもひと役買っており、それが高級カジュアルウェアへの道を開く助けをしていると語った。スーツやイブニングウェアは時間もお金もかかる仕立てプロセスが必要なことがよくあるが、ハイエンドカジュアルアパレルは、面倒な手続きなしに素早く手軽に入手できる。
「ソーシャルメディアで功を奏すのは、ハイエンドストリートウェアの世界に非常によく貢献しているビジュアルインパクトと即時性だ。従来のラグジュアリーブランドはもっと控えめだし、辛抱強さも求められる。仕立て屋に行って、そして自分のオーダーメードスーツが出来上がるのを待たなければならないのだから」と、トナー氏はいう。
今後も成長が続く見通し
これから先を見たときに、スムルダー氏は、近年のメンズウェア業界の発展状況を検討すると、今後もこの業界は成長を続けるだろうと述べている。需要が増加するにつれて、広告やインフルエンサーマーケティングへの投資も増加し、認知度もさらに大きくなっていく。
「メンズ市場が本当に拡大しはじめると、メンズブランドは広告にもっと投資しはじめ、百貨店はメンズウェア部門の売り場面積を増やし、メンズウェアブランドの認知度を高める。そして、男性はよりファッショナブルな衣料品を購入することで反応し、ブランドはこのカテゴリーへの投資をさらに増加させている」と彼女は語った。