「未来のブランディング」を実現するための 3つのヒント:SIW2019セッションサマリー

未来のブランディングには、新しい価値観が欠かせない。

2019年9月11日から22日に渡って、SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2019(ソーシャル・イノベーション・ウィーク2019:以下、SIW)が開催された。SIWは、渋谷・原宿・表参道エリアのさまざま拠点で多様なプログラムが開催される、都市回遊型イベント。今年のテーマは「NEW RULES. 〜新しい価値観〜」だ。

その新しい価値観というテーマをもとに、テクノロジーや教育、地域振興など、さまざまなカテゴリーの多様な未来を考える今年のSIW。そのなかで、「未来のブランディング」について触れられた、3つのセッションのサマリーを紹介する。

未来の感覚や価値観に備える

セッション「社会の可能性を拓く、未来志向のブランディング」では、元博報堂のエグゼクティブクリエイティブディレクターで、2018年より渋谷区フューチャーデザイナーを務める佐藤夏生氏が登壇。同氏は近年、「市場を広げ、より多くのシェアを得て、より多く売るためのブランディングから脱却し、よりよい生活や社会を実現する未来を作るブランディングに取り組むブランドが増えている」と指摘する。

そのため佐藤氏は、「まだ言語化されていない、可視化されていない未来の感覚や価値観に形を与え、社会に実装していく必要がある。アイデアやクリエイティブもそのような視座が求められるだろう」と説明。そのうえで、自身の事務所に所属する若手スタッフとの、ユニークなエピソードを披露した。

「子供のころに購入した自転車を、修理し続けながらいまだに乗り続けるスタッフがいる。修理費用で自転車が1台買えるほどだが、彼は『壊れていないのだから買う必要がない』と乗り続けている。新製品が出たら購入して来た自分には理解できない感覚だ。いまだに言語化もできていないが、このような自分にはないまったく新しい感覚・価値観こそが、未来のブランディングを思考するうえでの切り札になると信じている」。

目指すはコンテンツの多層化

セッション「エンターテイメントの多様性と多層性」では、すでに14年の歴史を有する「東京ガールズコレクション」の元チーフプロデューサーや吉本興業の執行役員を経験してきた、株式会社anの代表取締役、永谷亜矢子氏が登壇。ユーザーの趣味嗜好が細分化し、エンターテイメントのコンテンツやインフラがますます多様化するなか、いかにマーケットニーズに合うコンテンツを創出するべきかを語った。

永谷氏はコンテンツ多様化の象徴として、女性のファッションを例にあげる。「かつて、女性のファッションでは、トレンドを抑えていないとマウント(同性に対して優位に立つという意味)できなかった。しかし、いまは他人と被らないのが美徳となっている。『ちゃんと私は、私で選んでいます!感』が重要で、いかにみんなとかぶらないか、いかに個性的かがマウントになるのだ」。そんななかコンテンツ提供者が目指すべきは、多層化だという。

「そもそも、(そのコンテンツに)本質はちゃんとあるか? を見極める必要がある。そのうえで、ターゲット層だけでなく、ライト層、コア層、リアル体験層、デジタル体験層などなど、コンテンツの多層化を目指すべきだ」と、永谷氏。「誰のための、何のためのコンテンツか? 関わる人、参加する人たちを幸せにできるか? を考えることが重要だ」。

「競争」から「市場創造」へ

セッション「『競争』の戦略から『変化』の戦略へ。GO三浦が語るブレイクスルーの方法論」に登壇したのは、GOの代表取締役 PR/CreativeDirectorを務める三浦崇宏氏だ。このセッションで同氏は、5G・AI・ブロックチェーンなど、新たなテクノロジーが次々に出現するなか、我々の社会は急速な変化の真っ只中にあることを指摘した。「サッカーをプレイしていると思ったら、いつの間にかアメフトの試合に変わっている。でも、誰もルールの変更があったことは教えてくれない。ルールが変わったことに気付き、枠組みから一番最初に飛び出した人間が生き残る。そんな世の中になりつつある」。

続けて同氏は、このような変化の激しい社会では、当然マーケティングのあり方も再考されるべきだと語る。これまでのマーケティングは、競争で勝ち抜くことを目的としてきた。だが、これからは「新たなマーケットを、いかに早く見つけられるか」、いかに市場を創造できるかを重要視するべきだという。そこで、新たなマーケットを見つけるためのキーワードとして、同氏が挙げるのが「新しい生活習慣」だ。テクノロジーの進歩は、これまでにない、さまざまな習慣を生み出してきた。そこに着目しマーケティングを行うことが、新たなマーケットの創造に繋がるという。

「セルフィー(自撮り)という言葉・行為が普及したのは、スマートフォンというテクノロジーの出現によるものだ。『自撮り棒』が売れたのは、そこに目を付けたからにほかならない」と、三浦氏。「デジタルとかアナログ関係なく、テクノロジーによる生活習慣の変化によって、人間の新しい生活習慣が生まれる。それをビジネスチャンスにできるかが重要だ」。

※ DIGIDAY[日本版]は、SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2019のメディアパートナーです。

Written by 村上莞、分島翔平、長田真
Photo from Facebookpage of SOCIAL INNOVATION WEEK