音楽愛を示す、スカルキャンディの「コンテンツ」戦略:新興ヘッドフォンメーカーの考え方

ヘッドフォンメーカーのスカルキャンディ(Skullcandy)は、アーティストへの愛をアピールしたいと考えており、たとえそこに相互関係がなくても気にかけない。たとえば、ラッパーのスミノ氏は8月13日、ブルックリンで「ナウ・フィール・ディス(Now Feel This)」コンサートシリーズと題した、スカルキャンディによる全29回のショーツアーの最新回でパフォーマンスを披露したが、これがその一例となる。なぜなら、スミノ氏は「ワイルド・アイリッシュ・ローズ(Wild Irish Roses)」のミュージッククリップでは、AppleのBeatsのヘッドフォンを着用しているからだ。

これはスカルキャンディにとって、何ら問題ではない。スカルキャンディはヘッドフォン市場でApple(Beats)やボーズ(Bose)、ソニー(Sony)に後塵を拝しているため、コンテンツマーケティングに取り組んでブランドの認知度をより高めようとしてきた。同社は最近、考え方を変えた。アーティストやアスリートと独占契約を結ぶことに多額の資金を投入するのではなく、マーケティング資金をコンテンツ制作に投資し、上述したような一連のコンサートやポッドキャストの利用者をファンに変えたいと、同ブランドは考えはじめたのだ。

「音楽を感じられるものにしたいというモットーを打ち立てたとき、生活に音楽を取り入れる方法がわかりはじめた。私たちはすでに成功を収めている大物アーティストを起用するブランドではない。アーティストに自社のヘッドフォンを着用する約束をしてもらうわけでもない。(Spotifyの)ディスカバー・ウィークリー(Discover Weekly)に登場するようなアーティストとタッグを組む」と、スカルキャンディの主任マーケティング担当者であるジェシカ・クロードニッキ氏は語った。

「純粋に音楽を楽しんで」

ナウ・フィール・ディスコンサートは、スカルキャンディの顧客やコンサートに登場するアーティストのファンをロサンゼルスやサンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドン、フィラデルフィアで開催される少人数制のショーに招待するものだ。スカルキャンディはまた、ファーストチューブメディア(First Tube Media)とも提携してこのショーをFacebookやTwitter、YouTube上でストリーム配信している。同社はコンテンツのプロモーションのためにアーティストと半年から1年の契約を結んでいるという。

スカルキャンディのイベントでパフォーマンスを行うスミノ氏 / Getty Images for Skullcandy

スカルキャンディのイベントでパフォーマンスを行うスミノ氏 / Getty Images for Skullcandy

 

クロードニッキ氏によると、このストリーム配信はプラットフォーム上で配信され、「それなりの評価」を獲得したが、これまでのストリーミング配信では有料広告を組み入れたうえで、20万から30万回の視聴数であったという。スカルキャンディはまた、このショーを同社のWebサイトの新規ページ上に統合しており、短編動画のストリーミング配信を削減している。動画ではスカルキャンディのロゴは隅に表示されているものの、製品の紹介はされていない。

「私たちは(アーティスト)にヘッドフォンを進呈している。彼らが使用したければ使用してもらうが、必ず使用してもらうわけではない。現在の消費者に関して言うと、若い消費者は豊富な知識を持っており、プロのインフルエンサーに関して詳しく知っている。私たちが商業的なエンティティであることは自明で、もちろんヘッドフォンを販売したい。しかし、純粋に音楽を楽しんでほしいとも思っている」と、クロードニッキ氏は言う。

ブランドのDNAに刻まれたもの

もちろん、スカルキャンディは事後に参加者や視聴者にターゲットを絞りなおして商業広告を打つこともでき、また、実際そうしている。スカルキャンディはマーケティング予算の大半をデジタル広告に消費する。Appleやボーズとは異なり、TV広告や印刷媒体への広告は打たない。

過去10年間、スカルキャンディはF1にはじまり、航空機からのジャンピングをする個人に至るまで、スポンサーとして多額の資金を投資してきた。しかし、去年の10月にクロードニッキ氏が加わってからは、投資を狭めることが戦略の一環となってきた。現在では、マーケティング費用の約85%は音楽に、15%はアクションスポーツに充てられていると、クロードニッキ氏は言う。

「私たちはオーディオブランドであり、音楽に関わるメーカーだ。アクションスポーツは、私たち個々人のDNAに深く刻まれている」と、クロードニッキ氏は言う。

実際に、スカルキャンディの創業者リック・オールデン氏は、当時現役のスノーボーダーであった。そして、リフトに乗っているときに、このアイデアを思い付いたらしい。ユタ州パークシティにある同社のオフィスはハーフパイプに加え、スキーやマウンテンバイクを置くスペースを備えた音楽室を備えているのが特徴だ。

低価格で高品質なプロダクト

スカルキャンディはボードスポーツ界の幾人かのアスリート、特にサーファーのコナー・コフィン氏やスケートボーダーのトレバー・コールデン氏、スノーボーダーのイェロ・エッタラ氏などのスポンサーとなっている。同ブランドはバスケットボール界のスター、カイリー・アービング氏とも協働している。これら幾人かのアスリートは「You Feel Me?」と呼ばれるスカルキャンディの新しいポッドキャストにおいてゲストとして登場したことがある。


スカルキャンディ エピソード8 ホスト@ItsIntuitionがラッパー/パフォーマーと会話。@Topazlones. Jonesがランチルームサイファー、そして、父親のファンクミュージックの足跡を追ってきたこと、ニューヨークのヒップホップシーンについて語る。Bioにあるポッドキャストへのリンクをクリックしよう。

スカルキャンディは、これまで、明るい色が多い同社の有線イヤホンが安価であることから、ティーンやヘッドフォンを空港で携帯したくない旅行者の人気を集めてきた。また、スキーやスノーボード用のヘルメットに装着できる高性能のオーディオ製品もリリースしている。最近、スカルキャンディはほかの製品より低価格であることを武器にしてより高品質なヘッドフォンの市場に進出したいと考えている。

8月13日のスミノ氏のコンサートでは、スカルキャンディの最新のヘッドフォンがお披露目された。それが、Crusher 360(クラッシャー360)とVenue(ベニュー)だ。後者は高速充電式の、Bluetoothオーバーイヤー型ヘッドフォンであり、たとえばBeats Solo(ビーツソロ)と競合関係にある。しかし、類似製品のBeats Soloが300ドル(約3万3000円)なのに対し、スカルキャンディのVenueは180ドル(約2万円)だ。スカルキャンディブランドの製品は派手な色合いが一般的だが、Venueはそれらとは一線を画しており、いまのところ、スカルキャンディのVenueは黒と白の2色しか発売されていない。

「私たちのブランドの強みは快適に歩きながら使えることに変わりはないが、品質もこれまでになく高いものにする。私たちは自社ブランドを大衆的なブランドだと考えている。私たちの製品をもっと手軽に利用してほしい」と、クロードニッキ氏は語った。

Kerry Flynn(原文 / 訳:Conyac