COVID-19のパンデミックを受け、日本の高級スキンケア・ブランド「SK-II」が、同社初のグローバルフィルムスタジオの開設を計画している。同ブランドの本社があるシンガポールに設立されるこのフィルムスタジオは、女性のエンパワーメントに特化した映像とデジタル作品を制作する予定だ。
COVID-19のパンデミックを受け、日本の高級スキンケア・ブランド「SK-II」は、ブランド初のフィルムスタジオ「SK-II STUDIO」を始動した。
同ブランドの本社があるシンガポールに設立されるこのフィルムスタジオは、映画製作者、アニメーター、ミュージシャン、コンテンツクリエイターたちを集め、女性のエンパワーメントに特化した映像とデジタル作品を制作。2021年には8作品が公開される予定で、是枝裕和氏が監督を務めた最初の作品は『センターレーン(The Center Lane)』と名付けられた。この作品は3月29日に、SK-II.comとYouTubeで公開され、オリンピアンである池江璃花子選手が白血病と闘ったのちに競泳へ復帰したストーリーを紹介しながら、運命と人生の選択といったテーマを探っている。
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SK-IIのサンディープ・セス最高経営責任者は、「より社会的責任を持ったブランドとして、私たちはどのようにしてCOVID-19から復活し、人生・生活のすべての面において我々の目的を実現していくのか」と問いかけた。「パンデミックのあいだ、誰もが苦しんでいたが、女性たちは特にその矢面に立たされた。(たとえば)子どもと一緒に在宅勤務をしているあいだ、自宅での教育と仕事の責任を両立させなくてはならなかったからだ」と述べた。
さらなるコミットメントが必要
SK-IIが女性のエンパワーメントに力を入れるのは、YSLビューティー(USL Beauty)など、ほかのブランドが社会的企業責任の使命をあらためて検討し直しているのと流れを同じくしている。少なくとも2014年以来、SK-IIは女性のエンパワーメントと女性が直面する社会的圧力に関する取り組みを支援してきた。2016年には結婚市場に焦点を当てた短編映画を、2019年にはその他の映画やドキュメンタリー・シリーズを公開し、2020年6月には中国婦女発展基金会(CWDF)と協力して28万ドル(約3084万円)相当の個人用保護具や人工呼吸器を、最初のパンデミックの中心地であった中国湖北省に寄付した。しかしセス氏によると、COVID-19を通して、こうした分野におけるブランドのさらなるコミットメントが必要であることがさらに明示されたという。
「社内および代理店パートナーと協力して、SK-II STUDIOを立ち上げることで、全面的なコミットメントを示したいと考えている。私たちはこれをブランドが掲げる使命の中核部分として公式化し、継続的に実現したいと考えている」と、セス氏は述べた。
セス氏は、売上高やスタジオへの投資額は明らかにしなかったが、スタジオはSK-IIが過去10年間に実施した最大の取り組みだと述べた。SK-IIは、今回の映画のプロモーションの一環として、「#ChangeDestiny(運命を変える)」という名の基金を設立した。この基金は、女性のための団体・組織を支援するため、映画の再生回数1回につき、1ドル(上限50万ドル[約5507万円])を寄付する。1月に行われたP&Gの最新の収支報告では、COO兼CFOのジョン・モーラー氏がSK-IIについて言及した。同氏は、日本の百貨店にはまだ美容コンサルタントが不足していると述べたが、このことはSK-IIの事業にとって大きな影響を与えている。
ブランドバリューを生み出すには
SK-IIのグローバル・シニア・ブランドディレクターであるヨウギン・チャン氏によると、SK-IIは映画の配信をサポートするために、ウェブサイト上に新しいオンラインストアを構築しているという。オンラインストアは5月にオープンする予定で、東京をモデルにしており(SK-IIは2020年の東京オリンピックのスポンサーだ)、さまざまなセクションや映画が、東京の各地区に対応している。これらの映画はYouTubeでも視聴できるようになる。7月に始まるオリンピックに向けて、その前からこの映画シリーズを宣伝する予定だ。
「私たちはすべての市場で、ブランドがただの製品という存在を超えた何かを意味するとき、特に私たちが掲げるような『運命を変える』という目的意識を持つと、ブランドバリューを生み出すことを見てきた」とチャンは言った。「だからこそ、私たちはこれを私たちのブランド、コミュニティをさらに強化する方法と考えており、このSK-IIスタジオはそれをさらに具体的なものにするだろう」。
[原文:SK-II launches global studio division]
EMMA SANDLER(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)